225話 父娘。
お待たせしました。
本日もよろしくお願いいたします。
「じゃ、じゃあ、ふたりとも今日王都に越してきたんですか?」
「ええ。そのとおりです。ノエルさま。ちょうど冒険者を引退して、リライゼンの街の一号店をまかせられる人材ができたもので」
対面のソファーに座るサーシィさん、いまはじめて知ったけど、フルネームはサーシィ・サーザードというらしい、が、ことりと湯気が立つカップをテーブルにおいた。
「立てつづけに魔王を二体討伐した光と闇の勇者パーティーのおかげで、冒険者界隈がかつてないほどに盛り上がったいま。そして、大きな節目となる千年を迎える建国祭をひかえ、王都そのものも盛り上がったいま」
眼鏡の奥のサーシィさんの赤い瞳がきらりと光る。
「この絶好の商機を逃す手はない、とこうしてはるばるやってきたというわけです。……まあ、フェアの護衛も兼ねてですが」
すっ、と動いた目線にうながされ、フェアさんに目を向ける。
「えっと、さっきサーシィがいってたけど、王都でもたぶんそうなんだけど、いまリライゼンでも冒険者の登録数がすっごく増えてるの……!」
その結果、対応する冒険者ギルド職員も新規に増加。さらに、各地のギルドの人材の平準化と人事交流と称して、希望に応じて配置転換できるようになったらしい。
「それで、サーシィが王都に越すっていうし。ノエルくんたち〈輝く月〉のこともずっと気になってたし。やっぱり私も一度いってみたかったし。思いきって希望することにしたの……!」
「おいおい、フェア? 俺のことは、なーんにもなしか?」
「――ついでに、ひとり娘をずーっとほったらかして、王都でお金稼ぎにばかり精をだしてる父親に文句のひとつでもいってやろうかな、って」
「って、おい!?」
つん、とすました表情でそっぽを向くフェアさんのとなりで、あごの下に手をおいたまま、ガクッとうなだれるフーディー。
って、父親……?
(フーディー・セルンだ) (私の名前はフェア・セルン!)
そうか……! 同じ名字だ……!
「あー、ノエル・レイス。なんで初対面の俺がここにいるかっていうと、そういうわけだ。なんの因果か、ひさしぶりに会ったフェアと、おまけにサーシィのやつがあの闇の勇者パーティー〈輝く月〉の面々と交流があるって聞いたからな。こりゃあ逃す手はねえ、とこうして顔をつないでもらったってわけだ」
「――つまり、娘を思いっきりダシにしたサイテーな父親ってことだよね?」
「って、おい!? なにいつまでも拗ねてやがる!? お前だって、もうとっくにいい大人だろーが!?」
じとっとした目でにらむフェアさんと、あわてふためくフーディー。
僕たちの前では、強くてやさしくて、しっかりとしたところしか見せないフェアさんのそんな子どもっぽいやりとりは、とても新鮮で――なんだかとても、いいなって思った。
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ということで、セルン父娘についてでした。母親はすでになく、父子家庭です。王都ではいっしょに住みはしませんが、きっとフェアはなんだかんだ理由をつけてはちょくちょく父親の様子を見にいくと思います。
次回「師弟」
では、また書き上げ次第。
これからもどうかよろしくお願いいたします。





