217話 白銀騎士。
すみません。
難産なキャラがいて、ちょっと時間がかかりました。
本日もよろしくお願いいたします。
「あ……! みんな……! ノエルさんも……!」
「やあ。久方ぶりだね。闇の勇者。そして――」
まるで鏡のように磨き抜かれた王城の通路。そこに僕たち〈輝く月〉を待つふたつの人影があった。
ひとりは、耳に少しかかる程度に短く切った薄緑の髪に翡翠色の瞳で軽装の騎士装束に身をつつんだ少女、僕たちの友だちの星弓士ステア。
そして、もうひとりは――
カシャン。
ステアよりもさらに短く切った同じ色の髪に同じ色の瞳の、白銀の鎧に身をつつんだ女性が独特の金属音を響かせながら、となりあうロココとディシーに近づき――おもむろにひざをついた。
「んゅ?」
「わぴゃっ!?」
そして、それぞれの手を左右にとって、その甲にうやうやしく口づける。
「逢いたかったよ……! ロココ、ディシー……! 元気そうでなによりだ……! 私の可愛い妹分たち……!」
「うん。ロココもあいたかった」
「び、びっくりした〜! もう! シルヴァナさんったら、いきなりなんだもん!」
「はは。いやだったかい?」
「そ、そんなことないけど……」
「おねえちゃん!? 年下の可愛い女の子とみたら、だれかれかまわずそういうことするのはやめてって、いつもいつもいつもー!」
「はは。ステア。怒ったのかい? 大丈夫。妹分たちはもちろん可愛いけど、私の最愛は変わらず実妹さ」
「っ! だから、そうじゃなくてー!」
――このまるで貴公子然とした振る舞いをしているのが、ステアの姉、重ねていうけど姉の白銀騎士シルヴァナ。ふたりの父ゴルドーが隊長をつとめる王国騎士団の副団長。
団長ゴルドーに次ぐ、一説には超えるとされるその実力、まさしく麗人と呼ぶにふさわしい中性的な優れた容姿、そして、貴公子然とした振る舞いから、二〇代前半というこの若き副団長の団における人望、人気はとても高い。
特にシルヴァナからみな妹分のように可愛いがられているという年下の女性騎士からは絶大だ。
……ただ、騎士団内の男性騎士に独り身が多いのは、もしかしなくても、この副団長のせいだったりしない? と、まことしやかにささやかれていたりもするらしい。
「に、にいさま……? あ、あの方は……? えっと、女性、なんですよね……?」
「ネヤ……!?」
「おや……? ああ……! これは私としたことが……!」
カシャン。
いつのまにか、僕のコートのそでをぎゅっとつかんでうしろに隠れていたネヤ。そのぼそぼそとしたつぶやきを耳ざとくとらえ、切れ長な目を細めたシルヴァナが一歩一歩近づいてくる。
「こんなにも美しく愛らしい妹分の存在に気がつくのが遅れるなんて……! そうか……! 君がニーベリージュのいっていた〈輝く月〉の新しい……!」
「え、あ……?」
そして、目の前でひざまづくと、ぱちくりと目を瞬かせてうろたえるネヤの右手を両手できゅっとつかみとった。
「はじめまして。私はシルヴァナ・ゴルディール。どうぞよろしく。遠慮せず、なんでも頼ってくれ。今日からは君も私の妹分の一員だ。姉として、騎士として、いまここにその誓いを立てよう」
「あっ……きゃっ!? に、にいさま……!?」
そして、その白い手の甲に口づけかけたその寸前――僕はネヤを引きはがし、うしろにかばうと、こう宣言した。
「僕の“妹”に勝手になにしようとしてるのさ? 白銀騎士シルヴァナ・ゴルディール」
カシャン。
独特な金属質な物音とともに、シルヴァナがゆらりと立ち上がる。
「……それはいささか過保護というものじゃないかな? 闇の勇者ノエル・レイス」
そして、薄く笑うその翡翠色の瞳と僕のあいだで視線が交差した――一触即発の気配をただよわせて。
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ということで、ほぼ名前だけでていたステアの姉、白銀騎士シルヴァナが本格登場です。一触即発の空気のまま、激突となってしまうのか? それとも……?
ちなみにネヤはノエルに独占欲まるだしでかばわれて、ドキドキしています。
ここからは余談で、シルヴァナ誕生経緯について。
非常に難産なキャラでした。実直な騎士だとニーベリージュとかぶるので、いろいろとこねくり回した結果、最終的にこうなりました。自分と関わりのある年下の女の子を分け隔てなく妹分として愛でることを信条とする極まったシスコン姉騎士です。
没案としては、お嬢さま、無口、常にフルフェイスな恥ずかしがり屋、いっそのことお兄ちゃんに、などでした。
次回、「苦手」
また書き上げ次第、よろしくお願いいたします。





