214話 この瞬間を待っていました。※
いやー、妙に筆がのりました。久しぶりの二日連続投稿です。
別視点。決着回。それでは、本日もよろしくお願いいたします。
知らず、できず。
ずっとあの小さな箱庭で文字どおりに“花“として育てられ、縛りつけられ、そして守られていたわたしには、あまりにもできることが少なすぎました。
こうして、戦うすべを直接見たわけでもない、ただ語られただけのあこがれの貴女たちから、真似るしかないほどに。
借ります……! ロココ……!
陽の光がさしこむブラッドスライン家の中庭。
「はあああああっ!」
一気に踏みこみ、迫りくる青い炎をまとったニーベリージュ。わたしは、ぐるぐると何十重にも糸を巻きつけ、無理やりに強化した両腕を前にのばします。
……ニーベリージュ。わたしの魔力の糸と、貴女の青の霊火との相性は、これ以上ないほどに最悪でした。
でも、貴女の“威圧”だって、わたしのこの“誘引”の前には、通じません……!
その身から放つ、相対するものをすくませるような圧力と、相対するものを誘う甘い蜜のような魔力。
互いから発する真逆のそれがぶつかり相殺しあった瞬間、振り下ろされるそれをおそれずに一歩を前に踏みだし、糸でぐるぐる巻きの両の手をしっかと握りあわせます。
そのとき、ニーベリージュのかたちの整った眉がわずかにゆがむのをわたしは見逃しませんでした。
「やああああああああっ!」
狙いは一点。握りあわせた両の腕に魔力を通わせ、一本の“槌”と化して強化したこの渾身の一撃をその握り手に――!
「くっ!?」
――空を、切りました。
それはきっと、反射だったのでしょう。常日頃より戦いに身をおきつづけていた戦士だけが持つ。
さっきまで握っていたはずの槍斧が目の端で地面に落ちていくのが映りました。
「はああっ!」
そして、わたしは糸でぐるぐる巻きにしてつなぎあわせたままの両の腕を空になったニーベリージュの手にとられると――
「あうっ!?」
――あっけなく制され、地面に引き倒されました。
その洗練され、磨き上げられた戦技の前に、とうてい“花“には抗することなどできません。
「んうぅあぁぁぁっ!?」
「っ!? すまない!? いま――」
あまつさえ、のばされたまま束ねて握られた両の手首を灼かれて苦しむわたしを案じて、身にまとう青の霊火を解かれてしまう始末です。
――この瞬間を待っていました。
「なっ……!?」
いったはずです。ニーベリージュ。わたしには、覚悟があると。
命を賭ける覚悟と、そして。
「これは!? 絡み、ついて……!?」
勝利のために、泥をかぶる覚悟も。
ぐるぐる巻きにしていた両の腕の糸をほどき、ふたたび巻きつけます。今度はつかまれたままのニーベリージュのその手、指の一本一本までも巻きこんで念入りに。
「くっ!? ネヤ! これは、いったいなんの真――」
「わかりませんか!? わたしの勝ちです! ニーベリージュ・ブラッドスライン!」
「――なに!?」
「この決闘のルールは、勝利条件は、槍斧をわたしにとどかせること! いま貴女の手の中にそれはない! そして!」
「くっ!? また……!? さらに絡みついて……!?」
「わたしは、この糸につかんだその手をけっして離しません!」
いまや、ぐるぐる巻きになったニーベリージュのその右腕は、完全にわたしの両腕と一体化していました。
見下ろす紫と赤の色ちがいの瞳と、わたしの瞳が交錯します。
「……なるほどな。だが、私が英霊の炎をまとえば」
「使えばいいでしょう! それでもわたしは離しません! 魔力のつづくかぎり、この場に貴女をつなぎとめてみせます! “真花“であるわたしは――魔力だけなら、貴女よりも上です! ニーベ!」
ノエルにいさまを超える〈レイス家〉最高の魔力。それは、わたしの持つ、ほんのわずかな、けれどたしかな力。
「はあ、はあっ」と胸をはずませ、荒く息をつくわたしを感情の見えない静かな目が見つめます。
やがて、その艶やかな赤い唇が弧を描きました。
「……ここまで、だな。おめでとう。君の勝ちだ。ネヤ。おのれのすべてを賭けたその覚悟、たしかに見せてもらったよ」
それは、曇りのない、とてもとても美しい笑顔でした。“花“であるわたしが――思わず頬を赤らめてしまうほどに。
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ということで、薄氷でしたがネヤの勝利です。
そして、同性にモテやすい麗人ニーベリージュ。※ガチじゃなくて、部活のカッコイイ先輩にあこがれる的なやつです。
あとはちなみに、もちろんこの特殊ルールじゃなければ、マウントとられてるんでボコボコです。まあその場合でも、ニーベはそこまでしないでしょうが。
あとまったく関係ないですが余談として、このタイトルである機体を思い浮かべるひともいるかもですね。
ちなみに作者は機体も作品そのものも大好きです。続編でるたびに蛇足といわれながら全部おもしろいって、本当にすごいですよね。ク○スボーン。
次回「いつか必ず来るそのときを、いまはまだ」
また筆がのって書けたので、明日投稿します。
新展開に移るその前段になる予定、でしたがちょっとちがった話になりました。
今回のように、なるべく早くおとどけできればと思っています。
それでは、今後ともよろしくお願いいたします。





