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闇属性だけど脚光を浴びてもいいですか―追放された少年暗殺者はワケあり闇美少女たちと真の勇者へ成り上がる  作者: ミオニチ
【第3部 光と闇と混沌と】1章 すべて僕のものだ。

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209話 今度こそ、幸せに。

本日もよろしくお願いいたします。

 しゅるり。


「にいさま……! わたしは、ネヤは……にいさまをずっとずっとお慕いして……!」


 腰の帯が解かれ、前合わせが外れる。黒の衣装がまるで羽のように広がり、白く幼い裸身があらわに――


「だめだよ。ネヤ」


 ――それよりも早く、一足で近づくと、僕はその前合わせをそっと戻してから、ぎゅっとネヤの華奢な体を抱きしめた。


「にいさま……! どうし、て……! 【あの夜】とは違います……! わたしは、【花】でも、【妹】でもなく、ひとりの娘として、にいさまを」


「ありがとう。ネヤ」


「に、にいさま……!」


「でも、君はまだ、なにも知らない」


「え……?」


「聞いて。ネヤ。僕には、この一年いろいろなことがあったよ」


 そう。本当にいろいろなことがあった。【家】を飛びだしてあてのない僕が【光】の勇者パーティーに拾われて【獣魔王】と戦って、追放されて。


 そうしたら、ロココやディシーやニーベリージュ、ほかにも思いがけない出逢いがいくつもあって、【輝く月(ルミナス)】を結成して、【死霊魔王】をみんなと討ち果たし、そして、聖剣に選ばれ、【闇】の勇者となった。


「もちろん、いいことばかりじゃなくて、いやなこともたくさんあったし、綺麗なものばかりじゃなくて、目を背けたくなるような汚いものだってたくさん見てきた」


 抱きしめていた体を少しだけ離して、お互いの息がかかるようなすぐ近くで、僕と同じ色の潤んだネヤの瞳をまっすぐに見つめる。


「でもね。ネヤ。それは全部、僕があの小さな箱庭(いえ)を飛びだしたからこそ、気づけたこと、見つけたものばかりなんだ。だから、ネヤにもまず見て、そして、知ってほしい。この広く大きな世界を。そのうえで、決めてほしいんだ。君自身の人生を、君自身で。だって君は、もう当主にささげられる運命の【真花】なんかじゃない。僕の大切な【妹】で、世界にただひとりのネヤ・レイスという女の子なんだから」


「…………わかり……ました……」


その僕の言葉を刻みこむようにまぶたをとじ、ゆっくりと時間をかけてから、やがてネヤはこっくりとうなずいた。


「でも、にいさま?」


 ――だから、どこか油断していたのかもしれない。


「っ……!?」


 そっと頬に触れた、そのやわらかで甘やかな――


「これだけは覚えていてください。きっと、わたしは変わりません。これから先何年経っても、なにを見出そうとも。お慕いする方も、そばにいたいと願う方も。だって、わたしの幸せは、もういまここにあるのですから」


 すっと音もなく、ネヤが僕から離れる。


「だから、もう二度とわたしを離さないで。にいさま。ふつつかな【妹】ですが、どうか末永くよろしくお願いいたします」


 扉の前まで楚々と歩を進めると、そのまとう黒の衣装を羽のように広げて、流麗な動作で頭を下げる。


「それでは、おやすみなさい。わたしの愛する世界でただひとりの大切な大切なノエルにいさま」


 ――そして、その艶やかな紅をさした唇を花(ひら)くようにほころばせて、僕の部屋をあとにする。



「……【母さま】」


 そっと、左耳につけた青い装飾具(ピアス)に触れる。


「約束するよ。今度こそネヤを幸せに……ううん、ふたりで幸せになる、って」


(ええ……。お願いね……。ノエル……)


 月明かりの下、どこからかそんな声が聞こえてきた気がした。


 ……とても愛しくて、優しくて、そして懐かしい、僕たち【兄妹】を想うそんな声が。

2部完の次に綺麗な終わりになります。

お読みいただきありがとうございました。

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