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闇属性だけど脚光を浴びてもいいですか―追放された少年暗殺者はワケあり闇美少女たちと真の勇者へ成り上がる  作者: ミオニチ
【第3部 光と闇と混沌と】1章 すべて僕のものだ。

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205話 決意と、その瞬間。※

別視点。

本日もよろしくお願いいたします。

 【レイス家】に生まれた子は、その性別によって生まれながらに人生を二つに分けられます。


 男は暗殺者。外にでて実戦に身を置きながら、ただひたすらにその技を磨き、研鑽し、鍛え上げ――最も優れたものが当主となります。


 ノエルにいさまのことですね。


 女は【花】。男と違って【家】の中にこもり、愛でられるため、ただひたすらにその美しさと――そして魔力を磨き上げます。より優れた次代の当主を産むために。


 香や灸、薬湯、流麗な所作、日々の食事、それから毎日の務め。【花】の生活のすべては、少しでも美しく、愛されるために。そして、より高い魔力をその身に宿すために。


 それは、【レイス家】に女子が産まれなくなった長き時のあいだも【原液】という外法を用いてまでも、つづけられてきました。


 そして、およそ200年ぶりに【レイス家】に生まれた、待望の女子――【真花】。


 それがわたし、ネヤ・レイス。


 当然ながら、その魔力は【レイス家】において、最も高いものとなります。


 ……ただし。



『モうおイたの時間は終ワりや……! いイ加減聞きわケテ、【家】二帰ッてもらイましョウかぁ……! ねヤサまァ……!』


 じりじりと、その【蛇】のような男は近づいてきました。にいさまに斬られた両腕から血を流し、けれどそれを意に介さないかのように、まっすぐと。


 なんの感情も見えない真っ黒な空洞の目がわたしを見下ろし、蛇のように突きだされた舌がくぐもった音を立てました。


 怖い……! にいさま……! どうか、わたしに力を……!


 足ががくがくと震えて、立っているのがやっとでした。けれど、決めたのです。もう守られてばかりではいられないと。自らの手で立ち向かうのだと。いまそれをわたしに身をもって見せてくれた、にいさまのように。

 

「いやです……! もうわたしは逃げません……! 自分の本当の望みから……! 自分の本当の気持ちから……! わたしはネヤ・レイス……! ノエルにいさまの【妹】……! わたしの居場所は、ここ……! にいさまのとなりです……! あの【家】じゃない……! ここにいたいの……! もうわたしとにいさまの未来をこれ以上、邪魔しないで……!」


 すでに準備は整えていました。


 レイス流花護術、【花摘ミ手折リ】。いまのわたしの持つ唯一の手段(ぶき)


 それは、レイス流暗殺術、奥義ノ参【虚ノ鏡(フェイタル・ミラー)】の源流となった技。ただし、【花摘ミ手折リ】は、相手の力を見極め返すのではなく――


『がアぁぁっ!?』


 ――ただその膨大な魔力を糸として絡めとり、無理やりに捻じ曲げ、手折るだけ。


 【花】の身の内におさえきれずにあふれだした甘い蜜のような魔力に誘われた、触れる資格のない不埒な有象無象から身を護るために編みだされた(すべ)、それが花護術【花摘ミ手折リ】。


 (たか)る多勢をも制する【真花】の魔力の真髄をいま……! 全力でその身に……! 受けなさい……!


『ガっ……!? アッああアああァぁっ!?』


 両腕があらぬ方向へとねじ曲がり、不快な音を立てます。けれど、それでもスライは一歩前へ足を踏みだしました。


 まだですか……! ならば、その両足も手折るまで……!


「ひかえなさい……! 貴方に(わたし)に触れる資格はありません……!」


『がッ……! があアァぁぁっ……!?』


 両のひざから下が軋みを上げて折れ曲がり、ガクンと体が沈みました。


『ああアぁァァぁァァッ……!』


 それでも、止まりません。折れたはずの足を引きずって、ずるずると近づいてきます。


「な、なぜ……? なぜなのです……!? なぜ倒れないのですかっ!?」


『アあああがアぁぁぁァァッっ……!』


 気がつけば、その手足を黒いもやが――はっきりと目に見えるほど濃密な魔力が覆っていました。いまならわかります。魔力で固定し、無理やりつぎはぎしたように折れた手と足を動かしていたのです。


 その恐ろしいほどの狂気に満ちた様は、もはや、わたしの理解を、ひとを超えていました。


「い、いや……!? 来ないで……! 倒れなさい! 倒れて! いやぁぁっ!? 来ないでぇぇぇっ!?」


 すでに折れたその手と足をさらに手折ります。半狂乱になりながら、さらにさらに何度も何度も――それでも、止まりません。


『がッ……! アっ……! ガああアああぁぁッっ……!』


「あ……あああぁ……」


 ぺたり、と。わたしは、座りこんでいました。


 いかに【レイス家】最高の魔力を持っていようとも、わたしには戦った経験もなく、ただ降りかかる有象無象からの火の粉を何度かはらってきただけにすぎません。


 これほどの狂気や憎悪の前に、わたしの力や決意など、なんの役にも立ちませんでした。


 ――もう止める方法は、ひとつしかありません。



『終わりヤ……! さァ……! ぼクといっショニ帰ってもラウで……! そシたラ、もウ二度と逃げだセンようニ、座敷牢に繋いダル……!』


 ――もう自由になるには、これしか……!


 わたしは、震えの止まらない指先で、【糸】をその首に――



『ア……!? あァ……あ……!?』


「え……?」



 ――刃が生えていました。スライのその左胸から、青黒く光る、赤く染まった、刃が。


『ガっ……!? はッ……!?』


 ごぽ、と血の泡を吹きながら、スライが後ろでに振り返ります。


 ――その口もとがかすかに歪みます。


「なん……や……。できる……や……ない……ですか……。ノエル……()()……」


 そして、赤い血に塗れた刃が引き抜かれると、そのまま前のめりに倒れかかりました。


 いま、自らを殺めた――ノエルにいさまへ。






ブクマ、評価、いいね! などの応援いただきありがとうございます。


ということで、ネヤは力およばず、そして……殺しました。


次回「なにを犠牲にしても。」


では、また明日よろしくお願いいたします。

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