202話 賭けは私の勝ちだ。※
別視点。
本日もよろしくお願いいたします。
『さぁ! 食らえぇぇっ! レイス流暗殺術っ! 奥義ぃっ! 【虚影零突破】ぅぅっ!』
な……に……!? その技は……!?
(レイス流暗殺術! 奥義! 【虚影零突破】!)
死角から高速突進してくる暗殺者バーリオをすぐ目の前に映しながら、刹那私の脳裏をよぎったのは、ノエルの姿。
あの奥義で私の窮地を救い、友であるステアの窮地を救い、魔王とも真っ向から打ちあったノエルの姿。
絶対にだめだ……! あの技を受けては……! だが、いまさら避けることも……!?
『ニィィィィベェェェェェッッッ!』
ならば、やはりこれに賭けるしかない……!
身にまとう青の霊火をいま持てる魔力のすべてをもって、全身を覆いつくす、かつてないほどの大きさに噴き上げる。
そして――
『おおおぉがあああぁぁぁっ!』
――獣じみた咆哮と爆発じみた衝突音とともに、そのすべてはあっさりと吹き散らされた。
「はあっ! はあっ! て……!」
一時的にすべてを出しつくした奥義の反動で、バーリオががっくりとひざをつく。
「手ごたえが……ねぇ……!?」
散っていく青の霊火を見上げながら、驚がくの表情を浮かべるバーリオ。
「はあっ! はあっ! ほ、本当にぎりぎりだった……! だが、賭けは私の勝ちだ……!」
私はそれを真うしろから見ていた。そして、槍斧をかまえながら、その動けない無防備な背に一歩ずつ近づいていく。吹き散らされた青の霊火を残された魔力を燃やして、ふたたび少しずつ全身から噴き上げながら。
「て、てめぇ……!? いったい、どうやって逃れやがったあぁぁっ!? オレさまの攻撃は、たしかにてめえを貫いたはずだあぁっ!」
「そうだな……! さしずめ【焔霊幻身】とでも名づけようか……!」
「ああぁっ!?」
「どうした? 聞きたいのではなかったのか? バーリオ……! 私がいかにお前の【虚影零突破】から逃れたのかを……! ひと言でいうなら、その自慢の奥義の弱点をつかせてもらったまでだ……!」
「弱点……だとぉっ……!?」
レイス流暗殺術、三大奥義が壱。【虚影零突破】。
かつて私が実際に見てとり、そしてノエルから教わった原理は、こうだ。
手と足と刃。一切の防御を無視してその三点に体中の魔力を集中し、さらに相手の死角から高速突進して襲いかかることで爆発的な威力を発揮する奥義。ゆえに、反撃に極めて弱い。
だが、その速さゆえに、狙いすました反撃をあてることもまた極めて至難。
(うふふ……! そう来ると思っていた……わ!?)
そう。かつて、人間をはるかに超える力を持つあの魔王ですら失敗したほどなのだから。
「だが、その速さこそが、私が見いだしたもうひとつの弱点だ」
「どういう……ことだぁっ!?」
「さきほどもいったとおり、その技を使う際、手と足以外の部分の魔力は一時的に常よりも著しく減る。それは、目も例外ではない。そして高速で動く際、ひとの視力と視野はだれしもが著しく落ちる」
「目……視力と視野……だとぉっ……!? て、てめぇ……!? まさか……!?」
「そうだ。バーリオ。あたかも青の霊火でつくりあげた【ひとの容】でさえ私であると誤認するほどにな……!」
そして、それを囮に間一髪逃れた私は、いまこうして貴様の前で槍斧を振りかぶっているというわけだ……!
ふたたび噴き上げた全身の青の霊火を槍斧の先端へと集めていく。
「く、くくっ……! まさか、そんな手段があるとはな……! してやられたぜ……! だが、次はそうはいかねぇ……!」
「なんだ。余裕だな? バーリオ。まさか、貴様に次があるとでも?」
噴き出す青の霊火を先端へと集めていく。
「あぁ? へっ! あるに決まってんじゃねぇか! 奥義の反動の硬直ももう少しで解ける!」
青の霊火を先端へと集めていく。
「それに、いまのオレさまはさっき飲んだ特製魔薬のおかげで、痛みも感じねえ! 生半可な攻撃じゃ倒せ、あ……!? お、おい……!? なんだ、それは……!?」
「ああ。ようやく気づいたか。決まっているだろう? これは、貴様という下衆外道に引導を渡すための絶対の鉄槌だ……!」
燃え盛る青の霊火が槍斧の先端に集まっていた。先ほど【焔霊幻身】をつくりだしたときと同等の、ひとひとりを呑みこむには十分すぎるほどの青の霊火が。
「いまの私では、ここまで大きく一点に束ねるのには時間がかかりすぎるのが欠点だがな……! さあ……! いくぞ、バーリオ……! 生半可な攻撃かどうか、その身で受けてみろ!」
「や、やめ……!? う、うがあぁぁぁっっ!?」
「【大火焔霊断撃!】」
ひざをついたままでバーリオが苦しまぎれにかまえた黒刀。それをあっさりと割り砕き、その肩口へと槍斧の刃がめりこんだ。そして。
「があぐああがあああぁぁぁっっっ!? や、灼けるうぅぅぅっっ!? オ、オレの体があぁっっ!? 魔力があぁぁぁっっっ!? ニ、ニィィィべェェェリィィィジュゥゥゥゥッッッ!?」
その断末魔にも似た絶叫と、その全身をつつむ青の霊火が止んだあと、そこに残っていたのは――
「あ……が……ば……?」
――鬼と見まごうような屈強なその姿は見る影もなく、肉体も精神もすべて灼きつくされ、もはや虚ろなうめき声をあげるだけの廃人同然の男の姿だった。
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ということで、下衆外道に勝ちました。ついに残るはあとひとりです。
次回「僕の勝ちだ」
では、また明日よろしくお願いいたします。。





