198話 仲間(かぞく)。※
別視点。
本日もよろしくお願いいたします。
「ディシーは、いっしょにお風呂に入ってくれる」
『……はい?』
間の抜けた返事を返すジェミを真剣そのものの顔で見つめ、なおもロココちゃんはつづける。
呪紋による【回復】の後遺症で、声をかすれさせながら。それでも、必死で――
「いっしょに寝てくれる。同じテーブルを囲んでくれる。抱きしめてくれる。笑いかけてくれる」
――あたしに、伝えようとしてくれていた。
「つらくて苦しいときに、手を握っててくれる」
そんな、そんなの、あたりまえだよ……! だって、あたしたちは……!
「どれも、ノエルと、みんなと出逢うまでのロココにはなかったこと。それが、こんなにも力をくれる。だから」
ロココちゃんの銀色の髪と半分赤く染まった白のケープマント【六花の白妖精】、その下に身につけた色とりどりの帯がぶわり、と魔力を含んだ風を受けてたなびいた。
「【輝く月】は、ディシーはロココの大切な、頼れる仲間。足手まといでも、ましてや役立たずなんかじゃ、ない……!」
あたしたちは、仲間だから……!
『ふーん。仲間ねえ。じゃあさぁ』
ぼろぽろと涙をこぼすあたしの視線の先。なんの感慨も見せずにジェミがゆらりと動きだす。
『その仲間が与えてくれる力とやらで、止めてみなよ! さっきから手も足もでてないボクをさぁ!』
ふたたびジェミの姿がかき消える。
来る……!
あたしは、目を閉じて集中した。いまのあたしにできることをするために。
あたしのことは、ロココちゃんが必ず守ってくれると信じて。
「いわれなくても、そうする。さっき【再構築した】ときにようやく気づけた。いまのロココに必要なのは」
『あははは! なにをしたって無駄さぁっ!』
「前に立って仲間を守れるニーベのような強い体。纏わせ、鎧え」
『な……に……!?』
金属同士が擦れあうような音を耳にして、あたしは目を開けた。
「これは、仲間がいたからこそ、その戦う姿を見てきたからこそ創れた、新たな力。ジェミ。いまのロココはさっきよりずっと強い」
無闇に展開するのをやめ、その両手両足に集中した赤い呪紋をまるでニーベさんのまとう手甲や脚甲のごとく幾重にも巻きつけ、強化したロココちゃんの姿と――
いまだ……!
――絶対の自信をもっていただろう死角からの攻撃を完全に防がれ、虚をつかれて驚がくし完全に動きを止めたジェミの姿。
「我は刻み、我は顕す! その幾千なる腕を以て、我が敵を、捉え、掴み、打て! 【幾千なる亡者の腕】改ニ! 最大出力!」
『なっ……!? しまっ……!?』
あわてて姿を消し、遠ざかっていくジェミの気配。
でも、関係ない。いまのあたしにはどうせ見たってうまくとらえられない。だから。
ヒュドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!
『な、な、なななんだよっ!? このでたらめな数!?』
つかまえるための【手】が足りないんなら、千でも万でも億でも増やして、無理やり引きずりだしてやる!
そして、もしあたしがさっき見たのが正しいのなら……!
『『う、う、うぐうあぁぁぁっ!?』』
たしかな手応えがあった。無数に、まるで荒れ狂う濁流のごとく放った無数の【手】のうちの何十本かがあたった感触――それが同時に二か所から。
……あたしの想像を裏づけるように。
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ということで、反撃開始です。
次回「狂気※」 別視点。
では、また明日よろしくお願いいたします。





