197話 足手まといの役立たず。※
別視点。
本日もよろしくお願いいたします。
「ロ、ロココちゃんっ!?」
「あうあぁあぁっ!?」
血しぶきが舞って、あたしの頬にぬるりとしたものがこびりつく。
『あー、これは深いねー。ひょっとして血がですぎちゃって死んじゃうかなー? 残念。もっとじっくりゆっくり嬲るつもりだったのにー』
「……このっ!」
『うわー。こわーい。逃ーげよ』
怒りにまかせて振るったあたしの千の【腕】は、それでもやっぱり、瞬く間に消えて離れるジェミをとらえることはできなかった。
なんで……! なんで、あたしは……!
怒りと悔しさにこぶしを握りしめ、くるりと振り返ったあたしは、石畳に倒れたままのロココちゃんへとすがりつく。
「ロココちゃん!」
「う、あううぅ……!」
ロココちゃんの深く長く裂かれた右足からは、どくどくと大量の血が流れでていた。
ロココちゃんのまとう白のケープマント【六花の白妖精】の純白の花弁を何枚も赤く染めるほどに。
どうしよう……! こんなに血が……! クエストにいくつもりなんてなかったから、あたしもロココちゃんもいま、回復薬なんて持ってないのに……! と、とにかく止血しなきゃ……!?
「ディシー……。だい……じょうぶ……」
「え……!? ロココちゃん……!?」
座りこみすがりつくあたしの手をロココちゃんがそっと握る。かすかに微笑み、青い瞳を閉じた。
「潜り、解け……。そして、繋ぎ、繕え……。尽く……」
「え……!? あ……!?」
途端に、ロココちゃんの体に刻まれた赤い呪紋がまるで生きもののように足と両腕、その傷口にもぐりこみ――
「うあああぅあああぁぁぁっっ!?」
――わずか数秒後には、なにごともなかったかのように、傷ひとつないもとの綺麗な体にもどしていた。
そのあいだ、痛みに叫びつづけているロココちゃんの震える手を、あたしはただずっとずっと握っていた。
『えー? なにそれー? そんなのありー? ボクのやったこと、ぜーんぶ無駄になっちゃったー、っていいたいところだけどさぁ?』
半分赤く染まった白のケープマント。立ち上がったロココちゃんを見て、ジェミがその口もとをいびつにつり上げる。
『おかしいよねー? そんな回復できるんなら、もっと早くやればよかったはずじゃない? すでにボクが両腕ボロボロにしてあげてたんだからさぁ!』
ロココちゃんは、なにも答えない。ただ青い月のような瞳で静かにジェミを見返している。
『ってことはー、その回復って、めちゃくちゃリスクあるんじゃない? 魔力か体力かそれ以外かは知らないけど、できれば使いたくない最後の手段ってくらいにはさぁ!』
リスク……!?
そういわれて、ハッとする。ロココちゃんの華奢な体はいまも小刻みに震えつづけていた。
あれはたぶん、あの夜、あたしに刻まれた【封魔】を解除したのと同じ、ひとの魔力組成の根幹に干渉する技だ。
全身を切り刻まれるような、想像を絶する痛みを強いられる技だ。
『あはは! かわいそうにさぁ! そんな足手まといをかばったせいで、使いたくないのに使うはめになっちゃってさぁ! ピンク髪さんなんか、さっさと見捨てればいいのに! そんななんの力にもならない役立たず!』
悔しくて、涙がにじんでくる。でも、本当だ。
あたしのせいで、ロココちゃんが……! あたしのせいで……!
「役立たずなんかじゃ、ない」
ロココちゃんがまっすぐにジェミを見つめながら、ゆっくりと首を振る。
『へーえ? じゃあ、どんな役に立ってるっていうの? その足手まといにしか見えないピンク髪さんに、なんの力があるっていうのさ?』
小馬鹿にしたように笑うジェミに向けて、ロココちゃんがはっきりと宣言する。
「ディシーは、いっしょにお風呂に入ってくれる」
『……はい?』
たっぷり10秒くらいかけて間の抜けた返事をしたジェミを見つめるロココちゃんの顔は、真剣そのものだった。
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ということで、いってやりました。さて、その真意は……?
次回「仲間」 引き続き別視点。
では、また明日よろしくお願いいたします。





