193話 相手。※
※別視点。
本日もよろしくお願いいたします。
あたしには、まったくわけがわからなかった。
「おおおうらあああっ!」
「はああああああっ!」
王城からニーベリージュさんのお屋敷に帰る道の途中。突然襲ってきた、まるで鬼みたいな大男。
その最初の一撃を槍斧で受けたかと思うと、青の霊火を全身に展開し、ニーベリージュさんと大男は斬り結ぶ。
正直速すぎて、大男が神出鬼没すぎて、まったく目がついていかない。
あたしも、目とか足とか体の一部に魔力を集中させる技、そろそろ本格的に覚えたほうがいいかな? みんなの足手まといにはなりたくないし……。
頭の片隅でそんなことを考えながら、それでも必死にことの成り行きを見守る。
「そろそろくたばれや! レイス流暗殺術! 【這影】ぇぇっ!」
「ぐ、う、う、うあああああっ!?」
「ああ! ニーベさん!?」
いったい、なにが起きたんだろう? 突っこんできた大男が青の霊火に全身まかれたと思ったら、次の瞬間、ニーベリージュさんが空中高くはねとばされた。
必死に目をこらしたあたしは、ニーベリージュさんに大きな怪我がないことを確認してホッとする。
と、そこで大男の手に持つ得物――巨大な黒刀に目がとまった。
え? あれって、ノエルの? え? ちょっと待って? そういえばさっき、あの大男、【レイス流暗殺術】っていってなかった? それに、あの服って、なんかネヤちゃんのと雰囲気が似て――
「おい! ジェミ! この女は俺がもらうぜ! 手ぇだすんじゃねぇぞ!」
『えー? バーリオさーん? なーんで襲う前にバラしちゃうのさー?』
――戦いの最中に、そんなことをごちゃごちゃと考えていたのが悪かったのかもしれない。
「ひぃやあぁぁぁっ!?」
「ロココ!? ディシー!?」
気がつけば、あたしのすぐ目の前には、鈍く光る黒い刃が迫っていた。――いや、違う。
「紡ぎ、守れ」
あたしたちだ。
たぶん見えてたんだと思う。突如として目の前に現れ襲いくる刃を、あたしたちのすぐ前にいばらのようにはりめぐらせて、ロココちゃんの赤い呪紋が守ってくれた。
やっぱり、ロココちゃんはすごい。状況にぜんぜんついていけず、ただ間の抜けた叫び声をあげるだけのあたしとは大違いだ。
『あー、もー。やっぱり気づかれちゃったじゃーん。ホントならサクっと一撃だったのにー。バーリオさんがバラすせいでー』
奇妙にくぐもった感じの間延びした『声』で悪態をつきながら、あたしたちから距離をとろうとするのは、男の子だった。
それも結構可愛い感じというか、ちょっと女の子っぽくも見えるっていうか。少しだけ緑が混じった黒髪で、右側だけ前髪を長くして目にかかるように垂らしている。
着ているのもやっぱり女の子っぽいっていうか、ちょっとネヤちゃんの【着物】っていうのに似た感じの、たぶんサイズ大き目なだぼっとした感じの上着を羽織っていた。
……ただ、なんとなく全体的にあたしは好きになれないけど。
「バラす……? 関係、ない」
そんなことを考えていたあたしの前で、守るように立ってくれたロココちゃんがこてん、と首を傾げる。
『えー? なんかいったー?』
「あなたの【隠形】。ノエルと違って、魔力の動きが荒い。動きもノエルより、遅い。ノエルの攻撃は、もっと鋭い。つまり、あなたでは」
ロココちゃんがその褐色の腕を白のケープマント【六花の白妖精】からだして、ピッとまっすぐに指さす。
「ノエルでも、ロココたちでも相手にならない」
「ロ、ロロ、ロココちゃん!?」
その言葉に、ジェミと呼ばれた男の子の顔から、すっと表情が消える。
そして――
『あはははは! いいねー! ボク、褐色さんとピンク髪さんのこと、とーっても気にいっちゃったよー! いますぐ嬲ってあげたくてたまらないくらいにさぁ! ねーえ、バーリオさーん? バーリオさんこそ、手をださないでねー? コレはジェミの獲物だから!』
――狂笑とともに、その口を裂けたようにいびつにつり上げた。
ブクマ、評価、いいね! などの応援いただきありがとうございます。
新しくブクマ、評価ありがとうございました! 反応がもらえるのはとってもうれしいです!
ということで、多面戦闘の始まりでした。
次回「蛇刀」 では、また明日。
これからもよろしくお願いいたします。





