191話 決裂と、そして。
本日もよろしくお願いいたします。
「ええかげん調子くれんなや、ガキ……!」
赤く照らす夕日が落ちかけた高台で、僕とネヤは、いまやはっきりとした憎悪と敵意を見せた、前【レイス家】当主の側近【左刀】のスライと向かいあう。
『バーリオ……! ジェミ……!』
なに……!?
次にどんな動きにでるか注視していた僕。だが、スライが選んだのは、その場にいない仲間の名前を呼ぶことだった。
だが、注意深く気配を探ってもそのふたりがこの近くにいないことはあきらかだ。
いったい、どういうつもりだ……!?
意図がつかめない僕の前で、スライが次の言葉を告げる。
僕にとって、思いもよらない言葉を。
『決裂や……! 【輝く月】はお前らの好きにやれ……! 摘んでも殺ってもかまわへん……! もうぼくも好きに殺る……!』
「なんだって……!?」
「あ? ああ。聞いてたかぁ。ノエルさ、いやノエルくん。そういやキミは初仕事もまだのガキやで知らんかったなぁ。【レイス家】の暗殺者間でのみ可能な技。生体固有魔力判別を利用した長距離でも伝わる『声』の使い方」
「長距離でも……!? じゃあ、じゃあいまのは……!?」
「まぁ、そういうことや。いまごろキミの大切な仲間は、ぼくといっしょに来た、あの怪力自慢の【右刀】のバーリオたちに襲われとる」
ニイイっとスライの口が裂けたようにつり上がる。
「まぁ、もちろん【魔王】すら倒した面々や。腕に覚えは十分以上にあるやろ。けど、こと暗殺についてはどないやろねぇ? ああ、人々の希望とやらがこんなところでなぁ。ホンマ残念やわぁ。それもこれも、全部ノエルくんのわがままのせいでなぁ!」
「そ、そんな……!? に、にいさま……! ロココが……! ニーベが……! ディシーが……!」
「大丈夫だよ。ネヤ」
「あ……」
背中にまわしていた腕を外して、激しくうろたえるネヤの頭をやさしくなでる。
それから、はっきりとした敵意と決意をもって、ふたたび【闇】の聖剣をスライにつきつけた。
「それを聞いて、僕があせるとでも? ましてや心がわりするとでも? だったら残念だったね。スライ。僕はみんなを信じてる……! 僕の仲間は、【輝く月】は、暗殺者なんかには、絶対に負けない……!」
これは、強がりなんかじゃない……! 一片の曇りもない僕の100%の本心だ……!
「あぁ~! ホンマ……! ホンマけったクソ悪い……! ちょっとはあせれや……! 驚けや……! 泣き叫べや……!」
つり上がった口もとを憎悪にゆがめながら、スライの手が腰の帯に刺していた黒刀――僕が使っていたものよりも一段と長いそれを抜き放つ。
……あれが【蛇刀】か。
「もうええ……! さっさと【真花】を下げろや、ノエルくん……! 当主のための大事な体、傷でもつけたらかなわんからなぁ……! なぁに、キミはすぐに殺したる……! この【レイス家】当主側近【左刀】――【蛇咬】のスライがなぁ……!」
「ネヤ。下がって。そして、僕を、僕の戦いを見ていて」
「はい……! にいさま……! ネヤは、ネヤは、にいさまを信じています……! どうかご武運を……!」
一度だけ、僕の左腕に体をすりよせてから、ネヤが後方へと下がっていく。
「あぁ~! さっきからなんやねん! そのくっだらへんやりとりは! おかげで鳥肌がとまらへんわぁ!」
「くだらない? ああ、獣以下で虫以下のお前たちには理解できないか。僕たち【兄妹】の絆は」
「ホンマどこまでもけったクソ悪いガキや……! まあ、とにかく――」
「ああ」
「――いくで! このクソガキ当主! ノエル・レイスぅぅっ!」
「来い! スライ!」
そして、黒と青の剣閃が交錯し、【黒の花】と【黒の一族】、ここにその運命を決める戦いの幕が切って落とされた。
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ということで、1章最終盤、【輝く月】対 元【レイス家】、総力をあげた決戦の開始です。
次回「襲撃」 別視点。
では、また明日。これからもよろしくお願いいたします。





