183話 凄惨。※
※別視点。残酷表現あり。
本日もよろしくお願いいたします。
『それでー? 前にあなたたちの腕を折ったその娘はーほかになにかいってなかったー? 【王都】と【にいさま】以外にさー?』
ノエルの【妹】ネヤとロココたちが親睦を深めていた、その同刻。王都からは数日離れた位置にある街の一角にて。
「かひゅっ……!? かはっ……!?」
まだ成人までには数年はかかるであろう、一見すると女の子と見わけがつかないような片側だけ前髪をのばしたあどけない少年が、後ろ手に縛られ地べたに座らされた、惨たらしい拷問を受けた、口から血を吐く男の目の前で、血塗れの刃をもてあそぶ。
『あー。ごめーん。さっき舌の先、うっかり切っちゃってたよねー。てへっ。はーい。ジョボジョボー。どーお? これでまた、しゃべれるよねー?』
男の頭の上から無遠慮にかけられたのは、回復薬。安物のそれでは、長い時間をかけてあたえられた男の体のほとんどの損傷は回復しなかったが、どうにかさっき切りとられたばかりの舌だけはしゃべれるくらいまでには治すことができた。
「だだ、だからっ! いい、いってるだろぉ!? もうそれ以上は、なにも知らな」
『ねーえ? よーく考えてしゃべったほうがいいよー? あなたたちから奪った回復薬、いまのでもう残ってないんだからさー』
「ひ、ひぃぃぃっ!?」
「あー、もういいぜぇ! ジェミ! そいつは本当にもうなにも知らなそうだからなぁ! さぁ! 俺と替われ!」
自らの血で塗れた刃をペチペチと頬に押しあてられ、叫び声をあげる後ろ手に縛られた男。そんな男を愉しそうに眺めていた少年の背に野太い声がかかる。
『はーい。バーリオさーん』
「あ、あうあああぁ……!?」
一瞬助かったと思ったのもつかの間、今度は腕の太さが縛られた男の胴まわりほどもある大男がどっかと座り、まるで摘むかのように、男の頭にがっしりと手をかけてきた。
「おい! お前、家族はいるかぁ? どこから来た? この近くかぁ?」
「へ、へ……? こ、この近くの西の山間の村から……。お、親父は死んで……は、母親と姉、それと、歳の離れた妹……」
「あー、そいつはいいなぁ……! へへっ! より取り見取りじゃねぇかぁ!」
「へ……? がっ!? ごぼぐべがびごっ!?」
大男が力をこめると、男の頭は腐った果実のごとく無惨に握りつぶされた。
ブン、大男が手を振ると、頭を失った男の体は糸が切れた人形のように傾き、どしゃりと地面へと倒れ伏す。
「おい! いまの聞いたか! スライ! 行きはともかく、手ぶらで帰るのもつまらねえ! 目的をはたしたら、帰り道はひさしぶりに【花摘ミ】と洒落こもうぜ!」
「はあ。聞いてる聞いてる。それより、バーリオにジェミ。ずいぶんと派手に殺ってくれたなぁ。ぼくがせっかくほかのふたりはきれーに殺ったのに、ほとんど意味あらへんやん。まったく、ふたりがかりで広域の【隠形】張っといたから、いいようなものの」
愚痴をこぼす狐のように目の細い男。その足もとには、ふたりの男の死体が転がっていた。一見すると、泥酔して寝ているだけのようにも見える、ほとんど外傷のない死体が。
「ま、ええか。どうせ今夜だけやし。ほな、いまのでまとまった金も手に入ったし、宿にいくで。全員【隠形】用意なぁ。あー、あとジェミは血ぃくっさいから、念のため替わっときや」
『はーい』
「「「きゃああああぁっ!?」」」
数十秒後、酒場や娼館といった建物の立ち並ぶ歓楽街の一角に、女たちのかん高い悲鳴が響き渡る。
絶対に見落としようがないはずの場所に突如現れた、凄惨な殺人現場と死体をいっせいに目撃して。
一方、その現場をつくり上げたものたちは、姿を隠しながらも、悠々と歩いていた。
「はあ。それにしても、次代当主候補につづいて、まさか【真花】までとはなぁ。ホンマに困ったもんやで。あの【兄妹】には」
――先頭を歩くその狐のように目の細い男。だが言葉とは裏腹にその口もとはニイイッと粘つき、裂けたようにつり上がっていた。
お読みいただきありがとうございます。
ということで、動きだしました。
次回「初勝利」では、また明日。





