182話 【少女】。※
別視点。
本日もよろしくお願いいたします。
ぱしゃ。
湯気の立つ浴場の中、いっせいに水音がはねた。
「ネヤ」
「ネヤちゃん!」
「ネヤ……!」
話し終えると同時だった。いてもたってもいられず、私たちは全員でその堰を切ったようにぽろぽろと涙をこぼす黒い髪の少女を思い思いに抱きしめる。
「ネヤ。話してくれて、ありがとう」
ロココが甘えるように、甘えさせるように、ひしとその小さな体をすりよせる。
「うん……! ロココちゃんのいうとおりだよ……! ネヤちゃん……! ごめんね……! つらい思い出も多かったのに……! でも、話してくれて、話してくれて、ありがとう……!」
ディシーはそんなふたりをぎゅっと、想いをぶつけるように抱きしめていた。
「ああ。ロココやディシーのいうとおりだ。今日初めて逢ったばかりの私たちにそこまで赤裸々に話すのは、並大抵の覚悟ではなかっただろう。心から感謝する。ネヤ。私たちに心を開いてくれてありがとう」
「っ……! みなさん……!」
そして、私はそんな三人をまとめて、そっとやさしくつつみこんだ――妹たちを慈しむ姉のように。
「どう? おちついた? ネヤちゃん」
「はい。気づかってくれて、ありがとうございます。ディシー。えっと、それで、その、ロココ?」
「んゅ?」
「そ、その、いつまで花に、その、抱きついて……?」
言葉どおり、私とディシーが離れたあとも、ロココはネヤにずっと体をすりよせたままだった。
あまりに長く擦れあいすぎて、ふたりの対照的な雪白と褐色の肌はだんだんと汗ばみ、紅潮し始めている。
少しのあいだ、なにかを考えるそぶりを見せてから、やがてロココはぽつりとつぶやいた。
「だって、ひとりは、さびしい、から」
その無垢な青い月のような瞳でまっすぐに、ネヤの黒曜石のような瞳を見つめる。
「ノエルがいなくなって、ネヤはずっとひとりだった。だから」
そのロココの言葉に、見つめ返していた黒曜石の瞳がゆらぐ。
「もう……。しかたない、ですね……」
そして、そんな素直じゃないような言葉をつぶやきながら、甘えるように初めて自分からロココに体をすりよせた。
「あー! いいなー! いいなー! すーっかり、ロココちゃんとネヤちゃん、ふたり仲よくなっちゃってー! あたしももっと仲よくなりたーい! よーし! こうなったら、パーティーだよ! みんなで寝間着パーティー!」
「寝間着?」
「パーティー?」
お互いの体を抱きあったまま、幼いふたりが同時に小首を傾げる。
「ふっふーん! 夜に女の子だけでする秘密のパーティーだよ! ね、ニーベさん! ニーベさんのお部屋なら、ベッドもすっごい大きいから、みんなでお邪魔しても大丈夫だよね! ね!」
「あ、ああ。もとは夫婦の寝室だからな」
ばしゃっ、と水音を立ててつめよるディシーに気圧され、私は思わずそう答えていた。
「よーし! そうと決まれば、みんな! おきにいりの寝間着に着がえて集合だよ! 今夜は男子禁制で、女の子たちだけで眠くなるまで盛り上がっちゃおー!」
「なんだか、たのしそう」
「そうですね……ふふ」
「ん? どうした? ネヤ」
ぐっ、と燃え上がるやる気をしめすように、ぷるぷると大きくゆれる胸の前で両こぶしを握りしめるディシー。
そんなディシーを見て、笑みをこぼすネヤの姿が私の目にとまつた。
「はい。なんだかわかった気がして。にいさまが『ここが居場所だ』、といった理由が」
きらきらと輝く黒曜石の瞳。朗らかに、楽しそうにくすくすとほころぶ赤い唇。
背のびをしない等身大の、花が咲くかのような【少女】の笑顔。
――私はそれを掛け値なしに心から、美しいと思った。
お読みいただきありがとうございます。
ということで、女子チームが仲よくなりました。また、これでノエルが語ったのとほぼ同じ話をネヤからロココたちは聞いたことになります。
次回「凄惨」別視点。では、また明日。





