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闇属性だけど脚光を浴びてもいいですか―追放された少年暗殺者はワケあり闇美少女たちと真の勇者へ成り上がる  作者: ミオニチ
【第3部 光と闇と混沌と】1章 すべて僕のものだ。

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181話 終わりと始まり。

本日もよろしくお願いいたします。

「お慕いしております……! にいさま……! ずっと、ずっと前から……! だから、どうかネヤをおそばに……!」


 夜の闇の中。浮かび上がるような白く幼い裸身がふわりと僕へとのしかかる。わずかに手首だけに引っかけた黒の衣装は、まるで広げた羽のようだった。


 濡羽のような艶めく漆黒の髪。黒曜石のように輝く、潤んだ同じ色の瞳が熱っぽく僕を見つめる。


「ネ、ネヤ……!? だ、だって僕たちは……!?」


 ――それ以上先は、口にできなかった。


「にいさま。なにも心配は、いりません」


 ――まさか、ネヤも知って……!?


「だって、にいさまは次代当主。ネヤは、おつかえする【真花】なのですから」


 ――その言葉に急速に冷えていくのがわかった。頭の中も、胸の内も。


「さあ、にいさま。いまこそ、(わたし)を摘んで――きゃっ!?」



 レイス流暗殺術、奥義ノ参【虚ノ鏡(フェイタル・ミラー)】。


 相手の力を見極め、返すそれを途中までだけ。ネヤの華奢な両腕をつかみ、そっと、羽のようにやさしく、床の上に引き倒した。


「ごめん。それは、できない」


「にいさま……! ノエル……にいさまは……! (わたし)が……お嫌い……なのですか……!?」


 瞳に涙をため、まるで世界のすべてに裏切られたような表情で見つめるネヤ。


 僕は、そんな【妹】のはだけた衣装を前でそっとあわせてから、その小さな体を起こし、ぎゅっと抱きしめた。


「好きだよ。ネヤ。世界で一番大切に思ってる」


「にいさま……!」


「でも、だからこそ、僕は、いかなきゃ」


 ――もう一度だけ強く抱きしめてから、その手を離し、立ち上がった。


「さよなら。ネヤ。どうか、幸せに。……愛してる」


 最後に、その泣き顔を目に焼きつけてから、僕も泣き笑いの顔で微笑んだ。


 そして、くるりときびすを返すと――



「にいさまぁぁぁぁ……!」



 ――もう二度と振り返ることはなかった。その手に、片側だけの青の装飾具(ピアス)を握りこんで。





「レイス流暗殺術、(アギト)!」


 夜の森の中。左右からほぼ同時に放った斬撃で、襲ってきた【灰色熊】の首を断ち落とす。


 ――もう、僕にあるのは、これだけだ。


「レイス流暗殺術、奥義ノ弐! 【十三星・(サーティーン・)昇華連鎖爆撃ライズ・チェイン・ブレイク】!」


 襲ってきた魔狼の群れをすべて蹴散らし、その魔力をこめた刃をほかの個体の何倍も大きな狼、群れの長へと突き立てる。


 この、どんな相手でも殺しきるために、気の遠くなるような長い年月、幾代もかけて磨き上げられつづけてきた暗殺術。


 僕は、これを使って生きなければ、ならない。ひとを殺す以外の方法で。



「レイス流暗殺術、奥義! 【虚影零(ゼロハイド・)突破(ストライク)】!」


 今夜の寝床にしようと決めた大木。その幹に巻きついていた邪魔な大蛇の頭をその一撃で爆発四散させる。



 それから上に登り、その太い幹と枝に身をあずけた。


「これから……どうしようかな……? どこに行こう……?」


 青い月があたたかく、やわらかく照らしていた。けれど、もうそこに映せるものはなにもない。


 ただただ純粋に月だけを目に焼きつけた。


「帝国は、やめたほうがいいか……。【レイス家】のだれかに出遭わないともかぎらないし……。じゃあ、残るのは……そのとなりのディネライア王国……?」


 ほとんど縁のない、文献に記された最低限の情報しか知らない国。それは、新天地にはふさわしいように思えた。


 いまや、なにものでもなく、ただ独りとなった、僕の。


「あとは、この【着物】って呼ばれてる独特の衣装……。いまじゃ【レイス家】くらいでしか使われていないっていうから、目立つだろうし、なんとか……したいな……。そういえば、魔物の素材ってけっこう高く……売れるんだっけ……? それで、それを生業にするひとたちのことを……たしか、こう……呼ぶんだったよ……な……」


 あまりにもいろいろと、ありすぎるくらいにあった一日。蓄積されつづけた疲労と一気に使いすぎて空になりかけた魔力とともに、心地よい睡魔が襲ってくる。


「ぼう……け……」



 この日、【僕】は終わり、そして新たに始まった。


 【闇】属性の暗殺者、ノエル・レイス――たったひとりの、冒険者として。






お読みいただきありがとうございます。


ということで、過去語り終了です。


次回「【少女】」別視点。では、また明日。

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