178話 答え。
新しくブクマや評価いただきました方々、これまで読み続けていただいている方々、深く感謝いたします。本日もよろしくお願いいたします。
――なぜ、そんなことができる?
「ありゃ。そんなに震えちゃって。まぁた駄目ですかぁ? ノエルさまぁ? しゃあないなぁ。じゃあせめて、ぼくが殺るところ、しっかり見ててくださいね、っと!」
暗い部屋。笑いながら、その狐のように目の細い男は、後ろ手に縛られ転がされた、さらってきたうめく女の胸に無造作に刃を突き立てた。
――なぜ、そんなことが平気でできる?
「なんだぁ? まぁたトドメさせねぇのかぁ? いくら戦闘ができても、そんなんじゃあ当主として本当にやっていけんのかねぇ!」
月明かりの下。たったいま僕が無力化したばかりの、うめく地面に伏した男の頭蓋を大男が大仰なため息とともに踏み砕く。
――なぜそんなことが笑いながらできる?
『キャハハハ! なぁんでできないのかなー? ノエルさまはー! こーんなに愉しくて、気持ちいいのにー!』
むせかえるような血臭が満たす部屋の中。振り返ったその僕よりも歳が下の少年は、目の前の椅子に座った男、惨たらしい拷問を受け絶命したその返り血で染まった顔を恍惚にゆがめた。
「怖い……!」
明かりもつけずに暗い部屋の中、ひとり小さくうずくまっていた。
訓練なら、どれだけ過酷でも耐えられた。【家族】のことを思えば、耐えられた。ひとつできる技が増えるたび、無邪気に喜び、誇りさえ覚えた。
けど、これは、違う……!
いまも耳に残りつづける絶叫。目に焼きついた死に顔。鼻をつきつづける血臭と死臭。その場にいあわせた際のあの体の震え。いまのいままで生きていた人間が体温を失っていくのがわかる、あの感覚……!
あれを、するのが……? あれを、つくるのが、暗殺者の――僕の……仕事……?
「でき……ない……!」
空が白み、いつのまにか部屋の中は明るくなっていた。長い、長い時間をかけて出した答えは、それだった。
だから、僕は。
『はあ? ひとを殺したくないぃ? なぁにいってんだぁ? 暗殺が生業の、死体をつくる、いってみりゃあ死体がなけりゃ生きられない一族の中で、だれよりもその才能に恵まれてるくせによぉ?』
病に臥せ、寝たきりの先々代当主の私室。
絞りだした答えを告げてうつむく僕の前で、その御簾の右前に立つ大柄な男はぶはぁ、と大きく息を吐いた。
お読みいただきありがとうございます。ブクマ、評価、いいね! などいただきました方、深く感謝申し上げます。あたたかい感想をいただけたら、うれしいです。
ということで、自分が暗殺者になれない、ということに気がついたノエルでした。
次回「僕とは、違う」それでは、また明日お会いできますように。
忙しくなった日常の合間を縫い、読者のみなさまに支えられて執筆しています。
これからもどうかよろしくお願いいたします……!





