171話 【花】・2。
新しくブクマや評価いただきました方々、これまで読み続けていただいている方々、深く感謝いたします。本日もよろしくお願いいたします。
「さて。ようやく邪魔ものも去ったところで、それでは聞かせてもらおうか? ノエル。その娘はいったいなにものだ? どうも君とはただならぬ関係に見えるが? それに、なぜ私の【威圧】を受けて平気な顔で立っていられる?」
ガシャ。
身にまとっていた青の霊気を解いたニーベリージュが片手を腰にあてながら、距離を一歩前につめた。
「そうだよ! いきなり血相変えて走っていくから、あたしたちすっごくびっくりしちゃったんだから! ねえ、ノエル……! もしかして、もしかしてだけど、その娘って、さっきププルちゃんがいってたあの【予言】に関係あるの……?」
両こぶしをぎゅっと握り、体いっぱいでその心配やあせりを表現しながら、ディシーがその不安げな内心を口にする。
「ノエル。聞かせて」
世界を赤く夕日が染める中。
騒動にひと段落がつき、今度は寄りそう僕とネヤを【輝く月】のみんながとり囲んでいた。臨戦態勢を解いた二―ベリージュもいまは【威圧】を使っていないから、3人とも僕たちのごく近くに。
……あっさりと核心をつかれてしまってるな。【威圧】が効かない特異性に、【予言】。加えて、ロココのあの青い月のような瞳で裏表もなくああもまっすぐに見つめられると――
「にいさま……」
――と、そこでもうひとり、かたわらに立っていたネヤがくるりと振り返り、うるんだ黒曜石のような瞳で僕を見つめた。
それから、なにをいうかと思えば、ぷるぷると唇を震わせながら、とんでもないことを口にしだす。
「【家】をとびだして外の世界でなにをされているのかと思えば、こんなにたくさんの【花】をはべらせて……。そうですか……。ネヤひとりでは、足りなかったのですね……」
「ぶっ!? な、なにいってるんだよ!? ネヤ!? みんなはそんなんじゃ!?」
沈痛な表情でうつむくネヤにあわてふためく僕。そんな僕たちに対するみんなの反応は三者三様だった。
「はな……?」
「花……? あ! うんうん! お花ってきれいだよね! あたしも好き~!」
きょとん、と小首を傾げるロココに、ポンと能天気に手を打つディシー。
よかった。約2名はまだ幼すぎて、言葉の意味がよくわからなかったみたいだ。無邪気にはしゃぐひとりが成人ずみな事実はひとまずおいといて。
「花……?」
と、思ったら、横でもうひとりの大きなお姉さんも首を傾げてたりする。
いや、ニーベ? あなたはそれで大丈夫なの? 年齢と将来的に! おかげで助かったけど!
「花……? はべる……? 花……。は、花……!?」
だが、ニーベリージュはそこで考えることをやめず、ああでもないこうでもないと首をひねらせつづけた。そして、たっぷり10秒ほど使ってハッとなにかに気づくと、愕然としたような表情で僕を見つめる。
「ノ、ノエル……!? き、君は、ずっとそんな目で私たちを……!? まさか、最初からそれが目的でみなを仲間に誘って……!?」
「ああもう! だから、違うって!」
これ以上ややこしいことになってはたまらないと、【花】の意味について、簡潔にかいつまんで伝える。それから、念入りにみんなについての誤解を解いた。
「あ、あたしたちについては、ニーべさんの誤解だってことはわかったけど……。えっと、その娘……」
「にいさま。ここは花から」
どうやってどこから説明したものかと考えあぐむ僕をしり目に、かたわらに立っていたネヤがしずしずと一歩前にでた。
それから、その【着物】の長い袖の端をすっと優雅につまみ、黒い羽のようにふわりと広げる。
「はじめまして。みなさま。ネヤ・レイスと申します。【レイス家】次期当主であるにいさまの【妹】として、にいさまに捧げられるために生まれ、にいさまのためのみに生きる【花】。このたび晴れて資格を得たため、にいさまのそばにはべり、にいさまに愛でられるために参りました」
「い、【妹】だと……!? だ、だがいま……!?」
「え!? は、はべっ!? め、愛でっ!? え、えええっ!?」
「ノエル……?」
「ああもう! だから、僕にその気はないってばぁっ!」
みんなへと三者三様にさらなる誤解と混乱を招く結果となった【妹】ネヤの自己紹介。
頭の痛くなるような前途多難な予感をいだきながら、僕の叫びがむなしく、暮れゆく空へと響き渡った。
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ということで、なかなかとんでもないことをいうネヤと【輝く月】の誤解と混乱を招く初接触でした。
次回「【妹】」それでは、また明日お会いできますように。
忙しくなった日常の合間を縫い、読者のみなさまに支えられて執筆しています。
これからもどうかよろしくお願いいたします……!





