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闇属性だけど脚光を浴びてもいいですか―追放された少年暗殺者はワケあり闇美少女たちと真の勇者へ成り上がる  作者: ミオニチ
【第3部 光と闇と混沌と】1章 すべて僕のものだ。

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167話 予言と覚悟。

新しくブクマや評価いただきました方々、これまで読み続けていただいている方々、深く感謝いたします。本日もよろしくお願いいたします。

 熱に浮かされたような抑揚のない、けれど常と異なる流暢な【声】で(うた)うように少女は語る。


『【闇】の勇者ノエル・レイス。いまよりオマエに【予言】を授ける。心して聞け』


 目の前でしゃがみこんだ瞬間、【予言姫】ププルフェのその半ばまで閉じられた瞳がすっと開かれた。


「っ!?」


 同時に、ぶわりと膨大な魔力が僕に吹きつける。それはまるで、別世界にいざなわれたかのような錯覚をもたらすほどの。


 さっきまでとなにひとつ変わらないのどかなはずの小庭園の中、そうするのが当然であるかのように僕は目の前の存在にひざをついた。


 灰色だったはずの瞳は、複雑な七色に変化していた。見下ろすその絶対者に向けて、僕はうやうやしく頭を垂れ、ただ次の言葉を待つ。


『【黒の花】』


「がっ……!?」


 ――その瞬間、ずぐり、と頭の中に【声】が響いた。


 (にい……さま……)


『近く、黒の花がその手の中に舞い戻る。摘むか、放すか。受け入れるか、拒むか。ようく考えて決めることだ』 


 甘い香。頬をなぜる指先。胸もとをくすぐる黒髪。すぐそばで見下ろす、僕と同じ色の潤んだ瞳。


 ――【あの夜】の光景が脳裏に鮮明によみがえる。


『これは、宿縁。ただ逃げ、先延ばしにした選択をオマエは今度こそ選ばなければならない』


「ぐっ……!? がっ……!?」


 心臓がいやおうなしに早鐘を打つ。


 ――心の奥底に押しこめていた(おり)。罪の意識が、悲しみが、怒りが、憎しみが、急速に胸の中で広がり、僕はそれを必死でとどめた。


『ゆめゆめ忘れるな。宿縁の【黒の花】も、業深き【黒の一族】も、その運命のすべては、オマエしだ――すぅ……』


 その瞬間、吹きつけ続けていた圧力も、まるで別世界にいるような錯覚もすべて消え去り、僕はふっと顔を上げた。


「おつかれさま……。ププルフェ……。お務め、よくがんばったね……」


「すぅ……。すぅ……。ん~、レーねえ……。きちゃ、だめぇ~。それは、ププルの……。すぅ……。すぅ……」


「もう。どんな未来(ゆめ)を見ているのかしら?」


 さっきまでの【予言(こと)】などなかったかのように、目を閉じ、無邪気に規則正しい寝息を立てる妹姫ププルフェを姉姫レーヤヴィヤが受けとめ、やさしくあやすように抱き上げる。


「みなさん、ごめんなさい。見てのとおり、妹が寝てしまったので、今日はこれでお開きにさせてください……! ですが、今日は本当にありがとうございました……! 私も妹も、とても楽しい時間を過ごすことができました……! それと……」


 レーヤヴィヤが全員を見まわしてから、深々と頭を下げた。それから、ショックで動けず、いまだひざまずいたままの僕をまじまじと見つめる。

  

「あ、あの……! ノエルさん……! い、妹が突然驚かせてごめんなさい……! か、顔色がすぐれないようなので、よかったら甘いものでも食べて、少しでも落ちついてもらえたら……! さ、差しでがましいようで、ご、ごめんなさい……! い、一度も口にされていないみたいなので、気になってしまって……! あ、もちろん、私の手づくりなんで、お口にあえば、ですけど……!」


 あわてふためいたように、おどおどと告げるレーヤヴィヤ。


「ノエル」


 そんな中、くいくいと後ろから僕のそでが引っぱられる。


「ロコ」


「あ~ん」


 振り返ると同時、制止する暇もなく、開いた口の中にじんわりと甘さが広がった。


 とても繊細な、つくったひとの人柄が伝わってくるような、やさしい味。


「あ、美味しい……!」


「よ、よかった……!」


 思わず口からこぼれたその言葉に、レーヤヴィヤが頬をほころばせる。


「あ~! ロココちゃん、ずる~い! あたしだって、元気になってほしいもん! ほら! ノエル! あ~~ん!」


「ディ、はぐっ」


 ――甘い。


「わ、私もさっきからずっと気になってはいたのだ……! 似あわないかもしれないが、これでノエルが立ち直るというのならば……わ、私も……! あ、あ~ん!」


「ノエルさん……! わ、私だって、と、友だちだから……! 元気になってほしいもの……! あ、あ~ん!」


 ――甘い。甘い。甘い。


 口の広がる甘さとともに、みんなのやさしさが、そこにこめられたあたたかな思いがじんわりと僕の胸を満たしていく。過去にとらわれていた頭がまわりだす。


「もう大丈夫。ありがとう。みんな。それから、レーヤ」


「は、はい……!」


 ようやく立ち上がった僕は、まっすぐにレーヤヴィヤと、その胸の前で抱きかかえた眠ったままのププルフェに視線を向けた。


「今日は本当にありがとう。手づくりのケーキ、とっても美味しかった。今度僕たちが来たときにも、ぜひ食べさせてよ」


「ノエルさん……! は、はい……! また……!」


「それから、起きたらププルにこう伝えておいてくれる?」


 僕は一度目を閉じてからすっと開くと、にっこりと心からの笑みを形づくった。

 

「ありがとう。おかげで覚悟はできた。今度は、ちゃんと選ぶよ。僕にとって、悔いのない――最善の選択を」


 そう。だって、いまの僕は独りじゃない。支えてくれる仲間や友だちがこんなにもたくさんいるのだから。


 ――どんな過去にだって、向きあってみせる。






お読みいただきありがとうございます。ブクマ、評価、いいね! などいただきました方、深く感謝申し上げます。あたたかい感想をいただけたら、うれしいです。



ということで、ノエルが過去と向きあう覚悟を決めました。


次回「いま、手の中に」また明日お会いできますように。


忙しくなった日常の合間を縫い、読者のみなさまに支えられて執筆しています。

これからもどうかよろしくお願いいたします……!

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