165話 姉妹姫との茶会(前編)。
新しくブクマや評価いただきました方々、これまで読み続けていただいている方々、深く感謝いたします。本日もよろしくお願いいたします。
「わ~! すっごく美味し~! こんなお菓子、食べたことないよ~! このケーキの上にのってる飴細工とか、くずすのがもったいないくらい、すっごくきれいだし! ホントにホントにこれ、レーヤ姫さまの手づくりなんだよね? すっごい! あたし、超尊敬しちゃう!」
「ディ、ディシーさん……! そ、そんな尊敬なんて……! わ、私……! こ、子どものころから外にでられないから、自然と上手くなったってだけで……! あ、あと……わ、私のことは……レーヤ、って呼んでもらえたら……! そ、その……お、おおお友だちとして……!」
「うん! わかった! レーヤ! えへへ! あたし、レーヤと友だちになれて、うれしい! これからい~っぱい遊びにくるからね!」
「ディ、ディシーさん……! はい……! いっぱい、いっぱい来てください……!」
王城内の王族区画。【特別】な処理の施された小庭園、そのテーブルにて。
とても、とても和やかにお茶会は進んでいた。
最初は身分差を気にしてか、それともきらびやかな雰囲気にあてられてか、ガチガチで落ちつきのなかったディシーは、いまやすっかりなじんで、姉姫レーヤヴィヤと仲よくなっているし、ロココはその手づくりのお菓子に夢中だ。おまけに。
「わぁ~。ロコ~の髪~。ふわふわぁ~。あ~、ロコ~。ププルに~それとってぇ~。あ~~ん」
「うん。ププル」
見ための年ごろが近いせいなのか、なぜかいたく気にいられたらしく、妹姫ププルフェをそのひざの上にちょこんとのせて。
どうやらロココもまんざらでもないらしい。時おりひとくちに切り分けたケーキを食べさせたり、口もとの汚れを布で拭いてあげたりと、お姉さんらしく、かいがいしく世話をしてあげている。
ニーベリージュやステアも、騎士という立場上かふたりよりはやや引いた位置で座ってはいるものの、時おりお茶やお菓子をつまみながら、そんなロココたちの様子をあたたかく見守っているようだった。
そして、僕はといえば、ひと口もつけず、ただひとり打ちひしがれていた。
たったいま姉妹姫の口からみんなに聞かされたばかりのふたりの事情と、道中に黄金騎士ゴルドーから僕だけに聞かされたさらなる裏事情。そして、【闇】の勇者と呼ばれておきながら、なにもできない自分のあまりの無力さに。
結論からいえば、僕に。いやこの世界のだれにも、姉妹姫を外に連れだすことは、できない。
ともに現国王オルドライトを父とする、母親違いの姉妹。その姉、【遠視姫】レーヤヴィヤ。
王城で秘匿されながらも、代々つづいてきた【闇】属性。【遠視】の今代の能力者。
その身に宿す膨大な魔力をその翡翠色の両目にすべて集中することで、世界の端までも見とおすことができるとされる、普段はその眼鏡型の魔力抑制器で常時おさえなければならないほどに強力な、まさに神のごとき全能の【目】の持ち主。
だが、その代わりに――
「ほ、本当に、今日はディシーさんや、みなさんに会えて、よかったです……。ププルちゃんも、あんなに楽しそうで……。も、もちろん、私も……」
――彼女はこの王城から一歩も外にでることが、できない。
それは、いまは、その頬だけをほんのりと薄く桃色に染めた、まるで透きとおるように儚く白い肌が、外の世界の【光】をまったく受けつけないからだ。
そう。それは、淡く優しく照らす、あの月の光でさえも例外ではなく。それも、僕たちではまったく【光】を感じることができない、月の見えない朔の夜でさえも。
「そ、それに、外の世界や、普段護衛していただく騎士の方からは聞けないような、みなさんの冒険のお話も、たくさん話してくださいましたし……」
彼女には、ただ視ることしかできない。
この庭園のように、王城の中に用意された【特別】な部屋。外からの一切の【光】を通さないよう魔力の障壁が施された部屋の窓から、ただ視ることしか。
そう。いうなれば。
自らは世界に干渉できないがゆえに、彼女は世界のすべてを視ることを許され、選ばれたのだ。
たとえそこでどんな喜劇や悲劇が起ころうとも。たとえその胸をどんなに焦がそうとも。
けっして触れることは許されず、硝子一枚隔てた世界の向こう側で、ただ爪を立てることしかできない、いわば全能で無力な傍観者として。
お読みいただきありがとうございます。ブクマ、評価、いいね! などいただきました方、深く感謝申し上げます。あたたかい感想をいただけたら、うれしいです。
ということで、姉の【遠視姫】レーヤについてでした。ノエルはなかなかなこといってますが、姉妹仲睦まじくそれなりに幸せに過ごしています。もしププルがいなかったらたぶん大分違いますが。
次回「姉妹姫との茶会(後編)」また明日お会いできますように。
忙しくなった日常の合間を縫い、読者のみなさまに支えられて執筆しています。
これからもどうかよろしくお願いいたします……!





