163話 秘匿姉妹。
燃料をありがとうございました。
どうかお楽しみください。
「こたびは神木を冒す【災害寄生触手群体】の討伐、誠に大義であった。我が王国が誇る【闇】の勇者パーティー【輝く月】よ」
荘厳なる王城。聞くものたちの緊張が満ちるひと払いがされた広大なる謁見の間に、老王の声が響く。
為政者としての威厳に満ち、同時にひどく疲れきった声。
僕たち闇の勇者パーティーを迎え、王国建国の真実を民衆に語ったことで、緩和されたかに見えたその重圧。
けれど、その疲れきったままの声は、いまだその身にかかえつづけているものの重さと深さを僕に想像させた。
「さて。その報酬として、まずは3千万L。そして、もうひとつ。これは、報酬であると同時に我がたっての願いでもある」
そこで一度、王はそのまぶたを重く閉ざした。それから、もう一度開くと、意を決したように朗々とした声で告げる。
「これより、其方らにふたりの人物への目通りを許そう。我が王国が秘匿せし、真実の一端。そして、それは必ずや其方ら勇者たちにとっての力となろう……!」
老王がその玉座より立ち上がり、ばさりと右腕を広げ、厳かに奥の扉を指ししめした。
王族と、王族に許されしもののみしか立ち入れない扉を。
「さあ! ふたりとも、入ってくるが」
ガチャ。
その老王の言葉が終わる前に扉は開かれた。
そして、そこからのぞいたのは、
「……へ?」
――張りつめていた緊張が緩み、口から思わず間の抜けた声がでる。
ひょこっ。
黒々としたビーズの目。ふわふわとした体の質感。
そんな擬音すら聞こえてくるかと錯覚するように場違いなその存在。それは、重厚な扉からちょこんとのぞいた、ひとかかえほどもある白いうさぎのぬいぐるみ。
そして、ついでそのぬいぐるみを差しだした小さな手の主がすき間から躍りでる。
「「「わあ……!」」」
今度は、ロココをのぞく女性陣から、感嘆の声が漏れた。
少しはねた薄い金色の、ふわふわとやわらかそうな長い髪。とろんとまぶたの下がった、ぼんやりと眠たそうな灰色の瞳。
その薄く透きとおるほどに白い肌をした幼い体にまとうのは、床にズルズルと引きずりそうな丈の長い上掛けと、その下にはピンクのパジャマドレス。
まるでかかえている本人もうさぎのぬいぐるみであるかのように可愛らしい少女がそこに立っていた。
「プ、ププルちゃん……!? だ、だめ……!? ま、まだ早いです……!?」
そして、追って、さらにもうひとり女性が扉から飛びだしてくる。
「んゅ~? レーねえ~?」
「ま、まだお父さまには、呼ばれてな……!?」
舌ったらずな間延びした声をあげ、きょとんと首を傾げる少女をあとから来た女性がうしろからひしと抱きとめる。
「って、あ、あわ……!? わ、私まで、でちゃってます……!?」
それから、まじまじと自分を見つめる複数の視線に気づくと、あわあわと思いだしたようにとり乱し始めた。
少女と同じ、薄い金色のふわふわとした短い髪。少し意匠の変わった眼鏡をかけた翡翠色の瞳。
同じく、薄く透きとおるほどに白い肌に、少女と対照的に背が高く、豊かに成熟した女性らしい体つきをそろいの上掛けと薄緑のワンピースでつつむ。
そんなふたりがそろった姿は、まさしく仲むつまじい姉妹のよう。
「レーヤさま。ププルさま。本日もご機嫌麗しゅう。さ、こちらへ。……陛下。少々段取りは狂いましたが、そろそろ始めましょう」
現れたふたりの近くへといつのまにか移動していた黄金騎士ゴルドー。うやうやしく頭を下げてから、女性と少女を玉座へとつづく階段の下、僕たちの前へとゆっくりとエスコートしていく。
「……うむ。よかろう」
エスコートされたふたりを一度目を細めて見とどけてから、老王はふたたび厳かに口を開いた。
――この王国の真実の一端を。
「では、紹介しよう。ルミナス、そして我が友である騎士団長ゴルドーが末娘ステアよ。これなるは、姉を【遠視姫】レーヤヴィヤ・ディネライア。妹を【予言姫】ププルフェ・ディネライア」
『『え……!?』』
――その言葉に、僕たちのあいだにいっせいに衝撃が走った。
だって、この【ディネライア王国】の名前を戴くということは、つまり。
そして、いまもその僕たちと同質の魔力をひしひしと肌で感じるように、この娘たちは、あきらかに。
「そう。いずれもこの我。国王オルドライト・ディネライアが娘たち。ある事情により王城にて秘匿されし、【闇】属性の姉妹姫」
――世間では、【光】の極致、象徴とされる王族。だが、その中に存在した【闇】属性。
その衝撃的な事実を告げる老王の言葉は、だがしかし、またひとつ肩の荷を下ろしたかのように、少しだけ軽くなっていた。
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ということで、王国の秘密がひとつ明らかになりました。
次回「つながる断片」それではまた明日。
忙しくなった日常の合間を縫い、読者のみなさまに支えられて執筆しています。
これからもどうかよろしくお願いいたします……!





