158話 再生と理。
燃料をありがとうございました。
どうかお楽しみください。
※一部気分を害する表現があるかもしれません。
ミシィ……! ビキキキキ……!
「あっ!? み、みんな! 見て! 神木が!」
すでに振り返っていた。軋みと亀裂の走るような音が僕の耳にとどいたときには。
だから、僕の目にははっきりと見えた。ディシーが叫び声を上げた瞬間、同時に――
「あ、わひゃああああ!?」
バキィィィィィィンッ!
――神木が跡形もなく砕け散るのが。
そして。
「よく見て。ディシー。大丈夫」
「え……!?」
ロココのいうとおり、完全に神木が死んだわけではないのだということも。
僕たちの眼前。枯れて、爆ぜ割れた神木の中から緑色に淡く光る小さな【珠】――【核】がこぼれ落ちる。
「あ……!?」
そして、【核】が吸い込まれた地面がかあっと緑色のあたたかな【光】を放つと、小さな芽がそこに生えた。
「わっ……!? わわわわっ……!?」
そして、ディシーがあわあわとふためいているほんの数秒のあいだに、ぐんぐんと背を伸ばし、次々と青々とした葉を繁らせていく。
もとの樹齢千年をも超える威容とは比べるべくもない――けれど、立派に成木といって差しつかえない姿がふたたびそこにはあった。
「……うん。なんとか10年分くらいは守れたかな?」
「そうだな。どうやら私たちは、ぎりぎりで間にあったらしい。なに。人間と同じだ。どんな姿だろうと、境遇になろうと、生きてさえいれば存外なんとでもなるものだ」
「うん。これから千年、またきっと大きくなってくれるはず」
「ニーべさん……! ロココちゃん……! そっか……! そうだよね……! じゃあ、あとは――」
そこで僕たちは、神木から離れ、あたりを見まわした。
「――このひとたちをちゃんとおうちに帰してあげるだけだね……」
そこには、ばらばらと大量の骨が散らばっていた。
……別に、決まりがあるわけではない。
街の外で死んだひとの遺品や遺体、あるいは骨を、見つけたものが持ち帰らないといけないわけでも、弔わないといけないわけでも、ない。
ただ、僕たちは――
「あ……! これ、ペンダントだ……! ついてた宝石は割れちゃってるけど、裏に名前が掘ってある……! ぐすっ……! 待っててね……! ぜったい、家族のところに帰してあげるからね……!」
「む。この者、手の中になにか握りこんだまま絶命しているな。これは……金貨袋か。そうか……。最後まで遺される家族のこれからを案じて逝ったのだな……。わかった。あなたの遺体を魔力照合してでも、必ず私がとどけよう」
――多少の余裕があり、遺体に触れるのに抵抗がなく、亜空間収納という運搬手段もある。そしてなによりも、そうしたいと思ったから、そうしていた。
「あれ? ロココ?」
しばらくそうしてみんなで拾っていると、ふとロココがじっと立ったまま、端のほうの茂みを見ているのに気がついた。
「どうし……うっ!?」
そこにあったのは、真新しい死体。そう。まだ骨になっていないという意味での、ウジやハエ、ゴミ虫、その他多様の屍肉食いたちがたかる腐乱した死体。
「あれ? どうしたの? ふたりとも……ひぅっ!?」
「……まだ新しいな。そして、【寄生触手群体】が寄生した神木からはやや離れている、か。おそらく瀕死の重傷を負わされながら、それでも這ってでも逃げようと、生きようとしたのだろう。だが……これも世の理か。生命の循環。その虫たちもまた、そういった死体がなければ、生きられないのだからな」
――そのニーべリージュが告げた言葉に、僕の心臓がドクンと、鳴る。
(はあ? ひとを殺したくないぃ? なぁにいってんだぁ? 殺しが、死体がなけりゃ生きられない一族の中で、だれよりもその才能に恵まれてるくせによぉ?)
そして、鮮烈に思いだす。
僕の実家。ひとを殺すことをなんとも思っていない、あの無機質な虫のような暗殺者どもの巣の中で起きた、いまわしいできごとを。
お読みいただきありがとうございます。ブクマ、評価、いいね! などいただきました方、深く感謝申し上げます。あたたかい感想をいただけたら、うれしいです。
※余談ですが、単語検索したときに画像表示するの、こういうときはマジやめてほしいと思いました。
次回「やっぱり、僕は」 明日の昼12時すぎに投稿します。
忙しくなった日常の合間を縫い、読者のみなさまに支えられて執筆しています。
これからもどうかよろしくお願いいたします……!





