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闇属性だけど脚光を浴びてもいいですか―追放された少年暗殺者はワケあり闇美少女たちと真の勇者へ成り上がる  作者: ミオニチ
【第2部 死霊行軍】3章 闇属性だけど脚光を浴びてもいいですか?

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149話 つかんだ手のその先。(前編)※

燃料をありがとうございました。

どうかお楽しみください。


※別視点。三人称です。

 王城の敷地内にある平民、貴族ともに在籍する騎士団の訓練場。


「かっ……! はっ……! ぜっ……!」


 刃引きした剣で幾度となく打ちすえられ、全身を土まみれにしながら仰向けに倒れる軽装の女性騎士。


 いつもの罵詈雑言を吐く余裕もなく、息も絶え絶えで手のひらで覆った指の隙間から、夕にさしかかり始めた空を見上げる。


 ……そうしていると、耳障りな周囲の声が自然とよく聞こえてきた。



「マジかよ……! あの【狂犬】カーサ・ニキールがあのデクの棒のユルスに手も足もだせずに……!」


「ああ……! ユルスのやつ、よっぽど腹にたまってやがったんだろうな……! 『デカさだけが取り柄のてめえは剣の練習用人形がお似合いだ!』 って、毎日見ててひでえくらいにボッコボコにされてたからな……!」


「それをいうならオレたちも同じだろ……! ユルスが目をつけられる前は、みんなカーサのやつにボコられてたんだからな……!」


「なあ! おい! なら、いまが恨みを晴らすチャンスなんじゃねえのか……! 監督役の上位騎士が不在で、ユルスとやってへたりきったいまなら……!」


「ごくっ……! お、おい……! それよりお前ら、あ、あれ見ろよ……!」


「あぁ……? って、うおお!? で、でけえ……!? いままでは隠してやがったのか……!? 色気のかけらもねえ男女だと思ってたら、いいもの食ってる元お貴族さまの娘らしく、へへへ……! ご立派なものをお持ちじゃねえか……!」


 聞こえてきたその言葉に、倒れこんだままで女性がバッと胸をおさえた。


 ……切れてしまっている。


 激しく動きすぎたせいで、男たちにナメられないように、こうならないように、その豊満な胸を衣服の中でキツくキツくおさえつけていた布帯が。


「「「へへへへへ……!」」」


「……クソが……!」


 あきらかに危険な【光】をやどした目つきと手つきで、複数の男がにじりよる。


 だが、精も根もつき果てたいまの女性には、その場に立ち上がることすらもままならず、ただ悪態をつき、唇を噛みしめることしかできない。



「どうやら、今日はこれまでのようですね。ふんっ!」


「ひゃあっ!?」


 だが、男たちの手がのばされるよりも前に、倒れる女性を別の大きな手がつかみ、抱き上げた。


「て、て、てめ……!? ユ、ユルス……!? な、な、なにしてやが……!?」


「なにって、もう動けないのでしょう? カーサ。このまま救護室に連れていきます」


「な、なにいって……!? て、てめえ……!? あ、あたしが憎くて、恨んでて、さっきまでボコってたんじゃ……!?」


「カーサこそ、なにをいっているのです? たしかにあなたにはいままで散々やられてきましたが、あくまで訓練の一貫でしょう? 憎しみや恨みなどあるわけないじゃないですか。ともに王国のために戦い、切磋琢磨しあう同志(なかま)なのですから」


「な、なかっ……!? うっ……!? あっ……!?」


「ん? どうしました? カーサ? 顔が赤いですよ? まさか熱でもあるのでは」


「う、うう……うっせぇ……! い、いいから……! さ、さっさと運べ……! ユルス……! このデ……う、うう……! 鈍チン……野郎……!」


 そうして、女性は訓練場から去っていった。


 その太く屈強な腕に抱かれ、安心しきったように。あるいは赤く染まったその頬を見られないように。そのたくましい胸板に顔をうずめ、指先でそのそで口をぎゅっとつかんだまま。




「なあ……」


「ああ……」


 そして、あっけにとられ、それをポカーンと見送るしかなかった、残された男たちは。


「「「例の式典も近いし、まじめに訓練しようぜ……」」」


 すっかりとさっきまでの毒気を抜かれたように、思い思いに剣を振り始める。


「「「はっ!」」」


 男たちが訓練しているのは、騎士団に入って習う、ごく初歩の技。威力の低いけん制用の、ほんの少しだけ各々の属性の魔力を飛ばす斬撃。


「……しっかし、まさかの【闇】の勇者さまに、そのお披露目の式典ねえ……? いったいこの国、これから先どこに向かって、どう変わっていくんだろうな……?」


 だれともなくつぶやいたその言葉は、振るう斬撃の音とともに虚空に溶けていった。






お読みいただきありがとうございます。ブクマ、評価、いいね! などいただきました方、深く感謝申し上げます。あたたかい感想をいただけたら、うれしいです。



というわけで、いいひとの手をつかめたおかげで、ギリギリで丸くおさまったカーサ編でした。

※名前を考えたときに、あれ? カーサって女の子っぽいな? と思ってパッとできた話です。


以下、読みたい人だけ向けに。

設定としては、もともと実家との折り合いが悪く寮生活のできる騎士団に在籍。けれど貴族からも平民からも距離をとられ、腕っぷしの強さもあってやさぐれて、ってのがいままで。

この日を境に髪を伸ばし、一人称もオレからあたし、性格も少し丸くなり、胸をおさえつけるのもやめて、別の意味で注目を浴びるように。そんな健気な変化を見せる彼女の想いにデク野郎あらため、鈍チン野郎が気づくのは、的な話が今後本編の外で進行していく感じです。


あと、本編にもチョイ役くらいで今後でることもあるかも?



次回、後編。

さて、一方のブラッドリーチ家にはどんな未来が待っていたのでしょう?


忙しくなった日常の合間を縫い、読者のみなさまに支えられて執筆しています。

これからもどうかよろしくお願いいたします……!

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