137話 至宝。
燃料をありがとうございました。
どうかお楽しみください。
この王国の、そのはじまりより伝わるとされる至宝、【光】の聖剣。
それに選ばれたものが【勇者】と呼ばれる。
では、もしその聖剣を失ったのなら……?
「では、勇者ブレンよ。【光】の聖剣、返納の儀を」
「はい……!」
王都の王城、聖剣の間。
黄金一色に満たされた部屋の中。縦一直線に走る青黒い【光】の線。
僕からはいまだ顔も姿も見えない王の命に応え、その少し前に向かって、かつて僕の所属していた勇者パーティーのリーダー、【光】の勇者ブレンが歩み出る。
そのギリギリと軋む歯と、血管の浮き出たその形相は、まるで耐えがたい怒りと屈辱を押し殺しているかのように見えた。
ブレン……。
「はああああっ!」
僕がその胸中に複雑な思いを抱く中、ブレンが残る左手に【光】の聖剣を携え、黄金の床へと突き刺す。
「うわっ!?」
「きゃっ!?」
途端にまばゆい、本当に目を開けていられないほどの強く激しい【光】が部屋中を埋めつくした。
「……え?」
そして、次に目を開けた瞬間、絶句する。
壁も床もなくなって――いや、見えなくなっていた。
この黄金一色の部屋全体を呑みこんだ、聖剣が発する絶大な【光】によって。
そしてそれは、聖剣もまた例外ではなく、僕の、いやおそらくは僕たちの目からは、もはや影も形も見えなくなっていた。
「うむ。大義であった。勇者ブレンよ。これで【光】の聖剣は、いずれ其方に返すとき、あるいは次なる資格持つものが現れるまで、何人も例外なく触れることも見ることも叶わぬ」
……そうか。そういうことか。それが、聖剣に選ばれることの意味。
なら、いまもブレンには変わらずに見えているのか。
光っていること以外なにもわからない空間の中、何者でもなくなった元勇者ブレンが一点を見つめ続けてい――え?
……? 見える?
【光】の聖剣ではない。ブレンの見つめる先、おそらくは聖剣を刺した場所の本来はその影となる部分、そしてあの縦一直線に伸びる【線】のあった場所に、それはあった。
青く黒い【光】を宿した、一振りの、剣。
今度は、完全だった。
その存在を認識した瞬間から、僕の目はその一点に一切のまばたきすらできずに吸いこまれる。
「おお……! 我が代で、ついにこの時が……!」
感嘆の声が聞こえ、ようやく少しだけ縛りが解け、横目で一瞬だけ視線を走らせる。
高く玉座に、豪奢な衣装に身を包んだ、白い髪で顔に深く皺を刻み、髭をたくわえた老人――王。
「見えるのだな……! 其方……! ノエル・レイスよ……!」
厳かな、それでいて、背負っていた肩の荷をようやく下ろしたかのような声で、王が告げる。
「それこそは、この王国のはじまりより伝わりし、もうひとつの至宝……! そう……! すなわち、【闇】の聖剣……!」
鼓動がドクン、と高鳴る。
直感した。いままさに、僕の次なる運命が動きだそうとしているのだと。
お読みいただきありがとうございます。ブクマ、評価、いいね! などいただきました方、深く感謝申し上げます。あたたかい感想をいただけたら、うれしいです。
そして、まだまだ切実にお願いいたします。どうか燃料をください……!
ということで、あの【線】の正体は【闇】の聖剣でした。
次回「王は語る」
書ききりますので、これからもどうかよろしくお願いいたします……!





