110話 欠陥品。※
※この章は基本的に別視点。三人称でお送りします。
「【聖光極点突破】!」
「ぐうがぁぁぁぁぁぁあぁぁ!?」
天高く陽が上り、時刻は昼を越えたグランディル山の頂の遺跡、その一軒の天井をなくした家跡にて。
自らが玩具として弄んだ星弓士の少女ステアとの遊びに興じていた【死霊魔王】〝玩弄〟のネクロディギスの背後から壁越しに、まばゆく輝く【光】が突き刺さった。
【屍獣魔王】を加工してつくりだした異形の腕の一本が指先から裂け、その半分が床の上へと崩れ落ちる。
「え……? あ……?」
その光景を最後の一枚に指をかけたまま呆然と見つめる半裸のステア。
「はっ……ははっ! ははは! やった……! やってやったぞ……! どうだ……! 見たか……! 相手の隙をつくなんて、あのノエル程度にもできる芸当……! 最上の【光】であるこの俺にできないわけがないんだ……!」
【死霊魔王】の背後の崩れた壁から姿を現したのは、狂気的ともいえる【光】をその瞳に宿した【光】の勇者ブレン。
最上級の回復薬でも服用したのか、その服に血の痕こそあれど、いまやほとんどの傷は回復していた。
「さあ……! 今度こそ、覚悟してもらおうか……! 【死霊魔王】〝玩弄〟のネクロディギス……!」
まばゆく輝く聖剣の切先がまっすぐに、痛みにうめく【死霊魔王】の背中を指す。
「ブレン……! おぬし……!」
【死霊魔王】が振り返るとともに、その髑髏の眼窩から憎悪に満ちた視線が向けられた。
だが、その【魔王】の圧力を勇者ブレンは一笑に伏して散らす。
「はは……! どんなに睨もうが無駄だ! 【死霊魔王】! 俺にはわかる! 制御を乱されたいま、お前ご自慢の魔力防御がガタガタになっているのが!」
それもまた、あの【獣魔王】との戦いで暗殺者ノエル・レイスが実証した事実にほかならない。
だが、この傲慢なる【光】の勇者はそれとすら気づくこともなく自らの知恵として盗みとる。
「さあ……! もう一度受けろ! 【死霊魔王】! 【聖光極点突破】!」
そして、その推測は正しい。いまの【死霊魔王】ならば、この技があたればただでははすまないだろう。
――あたれば、だが。
「死霊の手」
「が……!?」
勇者ブレンの聖剣の切先から、まばゆく輝く【光】が消え失せる。
その全身にくまなく突き刺さった、おびただしい数の真っ黒な死霊の手で与えられた痛みによって、その《《魔力制御を乱されて》》。
「のう、ブレン。先ほどは自信満々のおぬしがあまりに滑稽すぎて、わざわざ一度はこのザラオティガの手で受けてやったがな……!」
「あ……!? が……!?」
がらんどうの髑髏はそのまま生みだした無数の死霊の手を突き刺したまま、勇者ブレンの体を高々と持ち上げた。
「その技、全身の魔力を一点に集めたせいで、ほかが完全に隙だらけの欠陥品じゃぞ?」
「があぁぁぁっ!?」
無造作に放り投げられ、壁にたたきつけられる勇者ブレン。
「ひっ!? あ、あう……!? あ、ああぁ……!?」
ステアの短い悲鳴が響く中、家跡に残った最後の一枚の壁が崩れた。何度か転がったあと、全身を穴だらけにされた勇者ブレンが血だまりの中、うつ伏せに地面に這いつくばる。
「ふん。この執念だけはなかなかのものじゃな。まあ、こうして目のとどくところに置いておけば、もはやなにもできまいが」
虫けらでも見るような視線で【死霊魔王】が勇者ブレンを見下ろす。
「いやぁっ! もういやぁっ! もうかえりたいよぉ……! ぱぱ……! ままぁ……!」
遺跡が完全に崩れた瓦礫の中、あたりに半狂乱になった星弓士ステアの悲鳴が響き渡った。
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というわけで、勇者ブレンの再戦はあっさり敗退です。
次回「違う光景」。2章最後の局面に入ります。





