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闇属性だけど脚光を浴びてもいいですか―追放された少年暗殺者はワケあり闇美少女たちと真の勇者へ成り上がる  作者: ミオニチ
【第1部 輝く月】1章 青い月の瞳。

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10話 詭弁。

 ……いま、なんていった?


 ズクリ、と僕の中でなにかが激しく痛み、軋みをあげる。


 けれど、その間にも事態は眼下の森の中の広場で刻一刻と進行していた。


 最悪の方向へ向かって、刻一刻と。



「ブフォ! もちろん、ただ働きではないぞ! ええい、よこせ!」


「うわっ!?」


 あせる【猟友会(ハンターズ)】のリーダー、ブッフォンがでっぷりと太った腹を揺らしながら、メンバーが持っている袋をひったくった。そして、そのまま逆さにひっくり返す。


 ドサドサとでてきたのは、大量の食料。パンやハム、腸詰めが落ち、地面の上に食料の山をつくる。


「あ……!?」


 妖樹(トレント)たちの動きをその褐色の体に刻まれた呪紋で止めていた呪紋使い(カースメーカー)の少女の青い瞳が羨望で輝き、食料の山に釘づけになった。


「ブフォフォフォ! 見ろ、犬ッコロ! いま我輩たちがもっているありったけの食料だ! 我輩たちが無事に名誉ある撤退を完了するまで、あの化け物を足止めし、お前が見事猟犬としてのつとめを果たせたのなら、これをすべてお前にやろう! それだけじゃないぞ! 街に帰ったら、我輩のいきつけの高級食事処で好きなものをなんでも食わせてやる! いいな! わかったら、さっさと動けぇっ! 返事はどうしたぁっ!」


「はい……! ご主人……さま……! 苛み(さいな)、縛れ! (ことごと)く!」


 ぶわりと【闇】の魔力を含んだ風が巻き起こり、少女の体を隠す役目をほとんど果たせていないぼろぼろのマントがひるがえった。


 少女の褐色の肌に刻まれた赤い紋様が激しく光り、次々とその体の外へ、【大妖樹ギガントトレント】へと向かって突き進んでいく。


『ギュィィィィィィ……!?』


 ブッフォンたちの離脱を察知したのか、妖樹(トレント)たちをばら撒くだけでなく、ちょうど自らの持つ大量の枝をブッフォンたちに向かって伸ばしはじめた【大妖樹ギガントトレント】の動きをすんでのところで少女が伸ばした呪紋が(とど)めた。


「くっ、ううぅ……!」


 だが、いまや7体にまで増殖した妖樹(トレント)に加えて【大妖樹ギガントトレント】本体もの動きを止めるのは相当に消耗が激しいのか、少女の体からポタポタと脂汗が流れ落ちる。


「ブフォッフォッフォッ! やるではないか、犬ッコロ! ようし、その調子だ! そのままその化け物をしっかりとおさえていろ!」


 そろりそろりとその場から後退りはじめるブッフォン。


 だがその途中、そのブクブクと太った腕が積まれた食料の山へと伸ばされた。そのままパンとハムと腸詰を次々とひっつかみブッフォンがその腕に抱える。


「え? ブ、ブッフォンさん……? い、いいんですか? そ、その食料ってあの猟犬、【闇】属性の子どもへの報酬だったのでは……?」


「ブフォ? なにをいっておる? 人聞きの悪いことを! 我が友よ! 我輩はさっきこういったではないか!」



『我輩たちが名誉ある撤退を完了するまであの化け物を足止めし、猟犬としてのつとめを果たせたのならこれをすべてお前にやろう!』



「つまり! まだ撤退の完了していないいまは、まだこれは我輩たちパーティーの共有財産だということだ! なんの問題もない! ほれ、お前たちもいまのうちにとっておけ! 街まではまだ遠いぞ! 途中で力尽きてはかなわぬからな! ブフォッフォッフォ!」



「なるほどっす! さっすがブッフォンさん! そういうことなら、オイラも遠慮なく!」


「オ、オレも!」


「オレもだ!」


「はあ。正直詭弁だとは思いますが、背に腹は代えられませんか。ま。しょせんあの子供は【闇】ですし、義理を果たす意味も価値もないでしょう」


 次々と、次々と【猟友会(ハンターズ)】のメンバーたちの手が伸ばされ、うず高く積まれていた食料の山は最後には、土に汚れたパン一切れにまで減っていた。


「ううっ……! くうっ……! うわあぁぁぁぁっ……!」


『ギュィィィィィィ……!』


 そのとき。


 ただ独り矢面に立ち、妖樹(トレント)と【大妖樹ギガントトレント】の動きを必死におさえる少女の青い月のような瞳から、ひとすじの涙がこぼれた。

お読みいただきありがとうございます。

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