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私はメス豚に転生しました  作者: 元二
第三章 対決・亜人狩り部隊編
76/518

その74 メス豚、落とし前を付ける

 私はまだ日が高いうちにショタ坊村へとたどり着いた。


 懐かしのショタ坊村!


 ・・・いや、別に懐かしくもなんともないかな。

 ロクな思い出もないし、出て行ったのも割と最近だし。


 ちなみにここに来る前に、昨日暴れたキャンプ地の様子も確認している。

 彼らが昨夜の報復に、亜人の村を襲おうとしているかもしれない。

 そう警戒しての事だ。


 キャンプ地は死体しか転がっていなかったよ。

 どうやら生き残りは全て後方に下がってしまったらしい。

 彼らの逃げた跡を追っているうちに、いつしか私はショタ坊村までたどり着いていたのだ。




 ひとまず私は、村が見通せる場所から様子を窺う事にした。


 相変わらずひなびた村だ。


 村のあちこちで、このショボい村には不釣り合いな恰好をした男達が走り回っている。

 紋章の付いたマントを羽織っているヤツは、アマディ・ロスディオ法王国の関係者だろう。

 キャンプ地で散々似たような紋章を見た覚えがある。


 鎧の騎士は彼らの護衛――かとも思ったが、こちらの恰好はなんとなく見覚えがある。

 あれだ。少し前にこの村にやって来たイケメン王子様の護衛。彼らが丁度こんな装備を着ていた気がする。


 という事はコイツらはこの国の騎士か。

 イケメン王子がこの村に来ている理由は無いから、ひょっとして第一王子とやらが来ているのかもしれない。


 もしそうなら僥倖だ。


 ヤツにも思い知らせてやらないといけないと思っていたのだ。



 昨夜、私がキャンプ地の本部テントで盗み聞きした所、今回の亜人の村襲撃計画のトップは三人いる。


 一人は計画の立案者で全体の責任者、法王国のカルドーゾ何某(なにがし)

 一人はカルドーゾに協力して、他国の軍を自国に招き入れた、この国の第一王子アルマンド。

 最後に実行犯である法王庁所属の騎士団の隊長、――名前は何だろうね。そういや知らないわ。


 実行犯の隊長は昨日、私が細切れにして殺してやったので既にこの世にはいない。

 ヤツは自分の命で罪を償ったのだ。


 次の法王国のカルドーゾ何某(なにがし)

 コイツは現在ショタ坊村に滞在中(と思われる)。

 私の現在のターゲットだ。


 最後の第一王子アルマンドには残念ながら手が出せない、と思っていたが、まさかこの村に来ているかもしれないとは。


 まるでトレーディングカードゲームで、初手にコンボパーツが揃ったみたいなもんじゃないか。

 これって、”やれ”って事なんじゃね?


 場所は勝手知ったる、生まれ育ったショタ坊村。こっちには魔法がある上、私の背中には高度なセンサーを内蔵している水母(すいぼ)までいる。

 正に盤石の構えだ。


 とはいえ、流石に真昼間に堂々と乗り込む事は出来ない。

 実行は日が落ちて夜になってからだ。

 私はジリジリと逸る気持ちを抑えながら村の観察を続けた。


◇◇◇◇◇◇◇◇


 クロ子がガチムチと呼ぶ村長の家。

 現在は接収され、村長一家は他の家で寝泊まりしていた。

 この家を利用しているのはアマディ・ロスディオ法王国の法王庁外務部カルドーゾと、その部下達。

 それと彼にくっついてここまで来た、この国の第一王子アルマンドである。


 ちなみに王子は連日に渡って部屋に引きこもり、昼夜を問わず法王庁の聖女達と淫靡な快楽に耽っている。

 聖女達は元々はカルドーゾに付けられたものを彼が王子に押し付けたものだ。


 法王庁内では恒常的に熾烈な権力闘争が行われている。

 聖女とは実は名ばかり。彼女達はそれぞれの派閥なり、司教なりが互いの陣営に送り込んだスパイなのだ。

 そんな女の相手をして寝首を掻かれるのも馬鹿馬鹿しい。かといって拒否すると痛くも無い腹を探られる羽目になりかねない。

 司教にとって、聖女とは忌むべき毒虫のような存在なのだ。


 とはいえ、事情を知らない王子にとっては、彼女達は大国アマディ・ロスディオ法王国の聖女様である。

 神に仕える清らかな乙女(※王子主観)を汚すという倒錯的な喜びに、王子はすっかり夢中になっていた。




 ここは村長の自室。今はカルドーゾの執務室となっている。

 次々にもたらされる情報に、カルドーゾは混乱の極みにあった。


「一体どういう事だ?! 教導騎士団に何があった?!」


 最初の情報がもたらされたのは昨夜の事。

 その時は『万事順調。明日には亜人を連れて村に戻る』との報告だった。

 この数日の激務に心身ともに疲労していたカルドーゾは、その報告に肩の荷を下ろし、久しぶりに酒を飲んで眠りについた。


 追加の報告がもたらされたのは深夜になっての事である。

 その内容は信じ難いものだった。


「教導騎士団が襲撃を受けた?! 馬鹿な?! 一体どこの軍に?!」


 メサラニ山地は複数の国の国境に接している。

 その中には彼らが敵対する大モルトも含まれる。

 彼が他国の軍を疑ったのも当然といえるだろう。


 だが報告は驚くべきものだった。

 教導騎士団に襲い掛かったのは、魔法を使う生物だというのだ。


「竜が? だが、竜ごときが騎士団を脅かせる訳がない」


 確かに竜の魔法は強力だ。が、所詮相手はろくに知恵も回らない獣に過ぎない。

 大体、魔法というものは散発的で制圧力に欠ける。

 武装した騎士団にとっては、余程の事でもない限り(くみ)し易い相手なのだ。


「それこそ、物語に出て来るような竜でもなければ話にならんと思うが?」


 怪訝な表情を浮かべるカルドーゾ。

 だが凶報はこれだけで終わらなかった。



 夜が明け、朝になって報告は数を増した。

 野営地を逃げ出した兵達が村に逃げ込んで来たのだ。

 彼らは皆、混乱し、衰弱し、怯えていた。

 恐怖に震える彼らからの聞き取りが進むにつれ、昨夜、教導騎士団を襲った悲劇が浮き彫りとなった。


 敵はたった一匹の獣。

 見た目は黒い子豚のよう。

 頭には禍々しい角が生え、複数に及ぶ致死性の魔法を使う。

 動きはまるで風のように素早く、腕自慢の騎士すらまるで歯が立たない。


「馬鹿な! そんな悪魔のような生き物がこの世にいてたまるものか!」


 だが、同様の証言を複数の人間が口にしている。

 彼らが纏めて幻覚にでもかかっていたのでもなければ、考えられない話だ。


 被害の大きさが伝えられるにつれ、カルドーゾの顔から血の気が引いていった。


「・・・部隊の・・・半数がやられただと? ありえない」


 今回動員された教導騎士団の総数は約千人。

 黒い獣による被害はその半数、約五百人にも及ぶと言うのだ。


 この時点で信じ難い数字だが、実はこの被害数。まだまだ過少に計算されている。

 後日の調査で、この日の死者の数は約七百人にも及ぶ事が判明するのだ。

 これは野戦の常識では、ほぼあり得ない割合であった。


 とにかく、ここでこうして報告を受けていても一向に現場の事が分からない。

 まだ野営地に残されている負傷者の救助も必要である。


 こうして急遽、援軍が編成される事になった。

 とはいうものの、逃げ延びて来た兵を受け入れる作業もあったため、部隊の編成には予想外に時間が取られた。

 このような混乱の中、いつしかとっぷりと日が暮れていた。




 カルドーゾはアルマンド王子の寝室に向かっていた。

 これから夜を徹して現場となった野営地に向かわなければならない。そのための報告に来たのである。


「アルマンド殿下。よろしいでしょうか?」


 部屋の中は静まり返っている。王子はもう寝ているのだろうか?

 カルドーゾの眉間に皺が寄った。


 こんな状況でありながら、王子は昼間からずっと聖女との性交にうつつを抜かしていた。

 カルドーゾが苛立ちを覚えたのも無理のない事だろう。


 いっそこのまま黙って村を発つか?

 いや、流石に他国の王子を放置していくわけにもいかないだろう。

 カルドーゾはため息を押し殺してドアに手をかけた。


「失礼致します」


 ドアを開けて最初に感じたのは異臭だった。


 血生臭い臓物の匂い。そして鼻を突く糞尿の匂い。


 部屋の中は明かりも無く暗かった。

 夜なのに窓は開いたままだ。

 月明かりに照らされた部屋の中。ベッドの上には裸の三人の男女が折り重なるように倒れていた。

 まだ若い男女だ。男が一人に女が二人。

 男はこの国の王子アルマンド。二人の女はカルドーゾが王子にあてがった聖女だ。

 どうやら王子はアブノーマルなプレイでお楽しみの最中だったらしい。


 三人とも胸が大きくえぐられている。

 確認するまでも無く、死んでいるのは確かだ。


 まだ温かさの残る死体の上で、彼らを見下ろしているのは、黒い小さな塊。

 その角が生えた顔がカルドーゾを捉えた。


「なんだ? 子豚?」


 混乱しているカルドーゾは知る由も無かった。この時、黒い塊の背中でピンクの塊が小さく震えると、『確認(そいつ)、カルドーゾ』と言った。


 部屋に乾いた破裂音が響いた。

 こうしてカルドーゾは訳も分からずに死んだ。


◇◇◇◇◇◇◇◇


 この夜、グジ村の村長の家で、アマディ・ロスディオ法王国の上位聖職者(ソマラス)カルドーゾと、サンキーニ王国の第一王子アルマンドが何者かによって殺害された。

 彼らの胸は弾けたようにえぐられていた。

 クロ子得意の最も危険な銃弾(エクスプローダー)による外傷である。


 この悲報はすぐに王城へと届けられた。

次回「王子の死」

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― 新着の感想 ―
[一言] 月明かりに照らされた部屋の中。ベッドの上には裸の三人の男女が折り重なるように倒れていた。  まだ若い男女だ。男が一人に女が二人。  男はこの国の王子アルマンド。二人の女はカルドーゾが王子…
[良い点]  数行の描写ですが、死ぬ前夜「仕事が一段落ついたようなので久しぶりに酒を飲んで寝た」というあたりはカルドーゾの人となりを想像できます。  カルドーゾの人間くささを感じられて、悪役もまた人間…
[気になる点] いつかショタ坊たちと正式に手を組む時が来るんじゃないかな…と思ってたけどクロ子の存在(見た目や強さ)が生き残りの情報をもとに広く知られるようになるなら ショタ坊側からそのうち接触がある…
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