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私はメス豚に転生しました  作者: 元二
第三章 対決・亜人狩り部隊編
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その67 メス豚、混乱を煽る

 騎士団のキャンプ地の輜重(しちょう)用テント。

 その最後の火が今、消し止められてしまった。


 シット! こん畜生!

 こんなショボイ出火じゃ陽動にもなりゃしないぞ!


 私は上手くいかない現実に歯噛みした。


「一体なんでこんな所から火が?」

「この雨の中、自然に発火するなんてあり得ない。見張りは何をしていた?」


 突然のボヤ騒ぎに首を傾げる男達。

 見張りか。見張りは私の魔法で永眠という名の眠りについておりますが何か?


 ! それだ!


 火事を消し止めた事で彼らは目的を失い、一時的な停滞状態にある。

 ヤツらが散らばって次の行動に移る前。チャンスは今しかない。


 私は魔力を練り上げた。

 目標は男達の集団。そのど真ん中。

 くそっ。間に合え。よしっ!


 くらえ! 極み(エクストリーム) 魔法! EX酸素飽和度(オキシメーター)


 この瞬間。極み(エクストリーム) 魔法化された酸素飽和度(オキシメーター)の魔法で、男達の周囲の酸素濃度が一気に低下した。

 酸素濃度の低い空気はすぐに拡散したが、この僅かな時間でも彼らの呼吸を止めるには十分だった。


 ドサドサッ! バシャッ!


「なっ! どうしたんだ?!」

「おい! しっかりしろ!」


 突然崩れ落ちる者。顔面から倒れて水しぶきをあげる者。

 バタバタと倒れる仲間に周囲は大騒ぎになった。


 良し! グッド! その混乱する姿が見たかった!


 私は再び魔力を練ると、今度は倒れた仲間を介抱している男達に狙いを定めた。


 もういっちょ持ってけ! 極み(エクストリーム) 魔法! EX酸素飽和度(オキシメーター)


 バシャバシャッ。


 頭から地面に突っ込む男達。


「どうした! 何があった!」

「よせ、近寄るな! コイツはただ事じゃない!」

「何をしている! 誰か医者を呼びに行け!」


 仲間に駆け寄ろうとした男を別の男が止める。

 未だに誰も、目の前の現象が、自分達を狙った魔法攻撃とは気が付いていないようだ。

 EX化された酸素飽和度(オキシメーター)の魔法、マジで凶悪過ぎるんだけど。


 出来れば更なる混乱を煽りたい所だが・・・


 遠巻きにした男達はやや距離を開けているため、ちと効率が悪い。

 少しの間様子見か?


 そうこうしているうちに、ややとう(・・)の立った騎士が走って来た。

 前線で切った張ったするような年齢にも見えないし、彼がこの部隊の軍医なんだろう。


「先生、仲間が急に倒れたんだ!」

「これほどの人数が一斉に?! 流行り病にしても聞いた事が無い。弓で撃たれたんじゃないのか?」


 医者はおっかなびっくり、腰の引けた様子で倒れた男達に近付いた。

 残念ながら弓で撃たれたんじゃないんだよ。なんなら自分で体験してみる?

 ほい、酸素飽和度(オキシメーター)


 バシャン


 医者は顔面から突っ込むように地面にぶっ倒れた。


「「「「「「うわああああっ!!」」」」」」


 驚きと恐怖の叫び声を上げる男達。

 何だ何だと集まる仲間に、馬鹿よせ近付くな、としがみついて止めている。


 いいぞいいぞ、いい感じだ。もっともっとここに集まるんだ。私に混乱する姿を見せてみろ。


「アオ~~ン!」


 ムッ! 今のはコマの遠吠え。

 打ち合わせでは、村人達の救出成功はマサさんの遠吠え。問題発生はコマの遠吠えと決めていた。


 パイセンに何かあったのか?!


 私は焼け跡前を振り返った。次々と人が集まっているが、誰もどうして良いか分からないみたいだ。

 騒ぎを起こす、という目的は達成したと見てもいいだろう。


 よし、ここはもう十分だ。


 私は自分に風の鎧(ヴォーテックス)の魔法をかけると、音も無く殺害現場から離れるのだった。

 これにて完全犯罪コンプリート。




 キャンプは蜂の巣をつついたような大騒ぎになっていた。

 私はテントの影を縫うように素早く移動した。


『黒豚の姐さん! 黒豚の姐さん! どこにいますか?!』


 移動を始めた直後、こっちを目指して走って来たブチ犬のマサさんと鉢合わせした。


『マサさん、ここ、ここ』

『姐さん! ご無事で!』


 私はマサさんを連れて近くのテントに飛び込んだ。

 ちなみにテントの持ち主が留守な事は、事前に水母(すいぼ)に確認してもらっている。

 アンタ今回、随分と大活躍なんじゃない?


『さっきコマの遠吠えを聞いたんだけど。そっちで何かトラブルがあったの?』

『亜人の脱出は成功しました。ただ――』


 マサさんの説明によると、私の陽動が上手くいったのか、村人は無事に全員で脱出に成功したんだそうだ。

 今はキャンプ地の外を山に向かって移動中らしい。

 つまりは作戦大成功という訳だ。


『ただ問題がありまして』


 パイセンが村人を助けに行く直前。パイセンの恋人モーナがここの隊長に連れ出されていたんだそうだ。


『それってどこに向かったか分からないの?』

『コマが案内して向かいました』


 私はイヤな予感が胸をよぎった。


『分かった。私が向かうわ。場所は分かる?』

『・・・いえ、すぐには』

水母(すいぼ)!』


 私の呼びかけに水母(すいぼ)はフルフルと体を震わせた。

 それだけで探索を終えたのだろう、彼は真っ直ぐに触手を伸ばした。


探索完了(さがしもの、みつけた)

『でかした! マサさん、先に行ってるわよ!』

『分かりました』


 私はテントを飛び出すと一陣の疾風(かぜ)のようにキャンプを突っ切った。

 こんなに目立つ動きをすれば、当然騎士団員に見られるだろう。

 けど、今はそんな事を気にしている場合じゃない。

 なんだろう。こんな気分は初めてだ。

 私はイヤな予感に突き動かされるように、水母(すいぼ)の指し示す先を目指した。




 最初に私が忍び込んだ本部テント。そのすぐ近くに小さな人だかりが出来ていた。

 すぐそばには本部テントで見かけた例の目力隊長が、部下に守られるように立っている。

 パイセンの恋人、モーナもいた。

 彼女は騎士団の男に拘束されている。

 何の抵抗もすることなく、ただ呆然と目の前の光景を見つめている。


 そんな彼らの輪の中心に倒れているのは――


『そんな・・・』


 真っ赤な血だまりの中、まだ若い亜人の青年がぐったりと横たわっていた。

 亜人の転生者、パイセンだ。


 パイセンはこんなピンチな状況にもかかわらず、ピクリとも動かない。

 彼の頭から、体から、腕から、流れ出す血が雨に流されて、グロテスクな切断面を覗かせている。

 単純に気を失っているのか、それとも意識不明の重体なのか、あるいは既に彼は・・・


 最悪の予感に私は凍り付いた。


 その時、騎士団の一人が手にした(げき)を振り上げると、パイセンの体に振り下ろそうとした。

 私の頭は怒りと焦りに真っ白になった。


『やめろおおおおおおおお!!』


 私は魔法を使うのも忘れて、(げき)を持った男に体当たりした。

次回「惨劇の現場」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 酸素濃度いじれるのは対人魔法としてもかなりやばいやつだね… [一言] アニメみましたwメス豚ちゃん思ったよりかわいい
[一言] 仕方ないとは言え一度は見捨てたって罪の意識で 無謀な賭けに出た結果はこんなもんだよなぁ 回復魔法がない現状じゃ助かっても大変そうだ
[一言] パイセンが…
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