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私はメス豚に転生しました  作者: 元二
第十四章 楽園村の戦い編
459/518

その456 メス豚と兄弟の帰宅

「ロイン! ハリス! お前達、よくぞ無事で!」


 不意に大きな声と共に、人混みの中からオジサンが飛び出した。

 見るからに人の良さそうなこのオジサン。例えて言うならサ〇エさんのマ〇オさんのような感じだろうか。

 マ〇オさんは、こちらに駆け寄って来ると、亜人兄弟のロインとハリスを強く抱きしめた。


「お父さん!」

「ゴメンよ父さん。帰るのが遅くなって。たまたま俺とハリスが逃げ込んだ人間の船が出航してしまって、船員に見付からないようにするには隠れているしかなかったんだ」

「いいんだ、いいんだ。お前達二人が無事に戻ってくれれば」


 感極まって相好を崩す〇スオさん。てか二人のパパだったのか。

 行方知れずだった息子達が、突然ヒョッコリ戻って来たのだ。

 これを喜ばない親などいるはずがないだろう。

 周囲も、そしてクロコパトラ歩兵中隊(カンパニー)の隊員達も、この光景には胸をうたれた様子で、親子の再会を微笑ましく見守っていた。


 ここは楽園村の大通り。

 我々クロコパトラ歩兵中隊(カンパニー)一同は、被害確認に来ていた男達の案内で、村にお邪魔していた。

 人間の部隊に襲撃を受けた村人達は、戦々恐々としながら彼らの報告を待っていたようである。

 ところが男達が連れて来たのは、武装した見知らぬ亜人の男達。

 一体何事? と騒いでいた中に、マ〇オさんこと亜人兄弟のパパもいたのである。


「よかった。本当によかった。僕も母さんも心配していたんだよ」


 喜びに涙ぐむ〇スオパパ。

 きっと最悪の事態も覚悟していた事だろう。夫婦共々、心配で眠れない夜も過ごしたかもしれない。

 しかし今日、子供達は五体満足、元気な姿で帰って来たのである。


 って、いかんいかん。こんな風に私まで雰囲気に呑まれてる場合じゃなかったわい。

 私はブヒっと鼻面で雰囲気イケメンこと兄のロインの足をつついた。


『ロイン。親子の再会に水を差すようで悪いけど、その人がアンタ達のパパって事は、この村の村長でいいのよね?』


 突然、息子の足元から聞こえて来た女の声に、マ〇オパパは驚きの表情で私を見下ろした。


「えっ?! まさか今の声って、この子豚が喋ったのかい?!」

「そうなんですよお父さん。この子はクロ子って言って、お喋りする子豚なんです。ここにいるメラサニ村の人達の一員なんですよ」


 弱気ショタ坊こと弟のハリスがパパに私を紹介した。

 お喋り子豚って・・・そんな商品名のおもちゃがありそう。

 マ〇オパパはハッと我に返った様子で、クロコパトラ歩兵中隊(カンパニー)の隊員達に向き直った。


「そうだった。皆さん、お礼が遅れて申し訳ありませんでした。あなた方が息子達を保護して村まで連れ帰ってくれたんですね。本当にありがとうございました」

「ああ、俺達の事はいいんだ。それより先にクロ子の話を聞いてやってくれ」


 クロカンの副隊長、ウンタが困り顔でマ〇オパパの言葉を遮った。

 マ〇オパパは怪訝な表情を浮かべたものの、息子の恩人達の言葉を無視する訳にはいかなかったようだ。

 私の前でしゃがみ込むと妙な猫なで声で話しかけて来た。


「え~と、クロ子ちゃんだっけ? 君は僕に何かお話があるのかな?」

『いやいや、あんたってひょっとして動物に赤ちゃん言葉で話しかけるタイプ? 普通でいいから。それはそうと、子供達が戻って来て嬉しいのは分かるけど、あんたこの村の村長なんでしょ? 今、ここはカロワニー・ペドゥーリの軍に――人間の兵士達に囲まれてるわよ。さっき村に侵入したヤツらは私が追い払ったけど、のんびりしている時間なんてないから』

「! そ、そうだね! 確かにそうだった!」


 マ〇オパパは私の指摘を受け、緩み切っていた表情をサッと強張らせた。

 まあ、それでも緩い感じはどこか抜けきらないんだけどね。基本(ベース)がマ〇オさんだし。仕方がないね。

 それはそうと、誰も彼の事を紹介してくれないもんから、ここまでずっと心の中で『マ〇オさん』呼びしているけど、まさか本当に『マ〇オ』って名前だったりしないよね?

 名は体を表すっていうし、亜人にお決まりの三文字名だし、ひょっとしてワンチャンあり得るかも?


『ねえ、ロイン。まさかあんたのパパの名前ってマ〇オだったりする?』

「? いや、父さんの名前はユッタだが?」


 全然違ったわ。

 そりゃそうだ。




 マ〇オパパ改めユッタパパは、私達を案内してくれた男達を呼ぶと、一緒にどこかへ行ってしまった。

 なんでも村の奥に大きな集会場? あるいは公民館のような建物があるらしく、今は村の主要なメンバーがそこに集まって、対応策を話し合っているんだそうだ。

 つまりは人間の軍隊に対しての作戦本部、といった所だな。

 だったら我々も――と、身を乗り出した所、やんわりと同行を断られてしまった。


「ん? どうしたい、クロ子。俺に何か言いたい事でもあんのか?」

『別に、なんにも』


 これって絶対、我々の中に人間が――槍聖サステナと女戦士マティルダが――いるからだよね?

 私の物言いたげな視線に、サステナは胡乱な目を向けた。


 ちなみに村のこの辺りまで略奪しに来た人間の兵士は一人もいなかったらしい。

 なにせ楽園村は五千人からの亜人達が生活している村である。一口に村と言ってもその広さはかなりのものとなる。

 今回の被害に遭ったのは村外れの十軒程。犠牲者も兵士達を止めようとして戦った若者十名ほどだったようだ。


「お母さん! ただいま!」

「ロイン! ハリス!」

「母さん、ただいま。ちょっとした手違いで俺もハリスも隣の国に行ってたんだよ。そのせいでなかなか帰って来られなくて」


 手持ち無沙汰の我々は、ロインとハリスの亜人兄弟に付き合って彼の実家に。

 二人が無事、母親と再会するのを見届けていた。


「ろ、ロイン! ロイン、あなたなの?!」


 おっと、何事?

 背後から聞こえて来た女性の声に我々は振り返った。

 そこにいたのは二十歳前後の亜人の女性。長い髪をいい感じにオシャレに纏めた、美人だがちょっと気の強そうな女子だった。


「サロメ。ああ、ついさっき、このメラサニ村の人達と一緒に村に戻って来たんだ」

「ロイン! ああ、ロイン! 良かった! 無事って信じてたわ!」


 オシャレ女子サロメはロインに駆け寄ると彼の胸に飛び込んだ。

 この雰囲気はアレか? ロインの彼女さんか?

 その瞬間、私の頭の中で「ロインって結構カッコいいよね」「そうよね」などと嬉しそうに噂していたメラサニ村の女子達の姿が思い浮かんだ。

 君達、お気の毒様。ロインは彼女持ちだったよ。

 そりゃまあロインは背も高いし、シュッとした顔立ちの雰囲気イケメンだし、既に誰かに唾を付けられててもおかしくはないわな。ブヒヒのヒ。


「どうしたクロ子。何だか妙な笑みを浮かべて」

『いんや、何も』


 クロカンの副隊長ウンタが私の暗い微笑みを見とがめた。


『ただ、こういうのを、他人の不幸で今日も飯がうまい、って言うのかなって』

「何を言ってるのか分からないが、あまり悪趣味な事を考えるのは止めておけよ?」


 それはモテない女のひがみだって? うっさいわ、誰が喪女じゃい。

 てか、今生の私は豚だし。オス豚なんぞにモテた所で全然嬉しくないし。むしろそんなもの願い下げだし。


「お父さん! ロインが、ロインが帰って来たのよ!」

「ロインだって?! それにハリスも! 二人共無事だったのか?!」

「グルドおじさん。ああ。ついさっき戻って来た所なんだ」


 おっと、そんな事を考えている間に、また知らない人が参加しているんだが。

 察する所、ロインの彼女さん――サロメだったっけ? のパパのようだ。

 てか、こんな感じで次々に増えられると私の手に余るんだがのう。


「おい、クロ子」


 ここでクロカンの大男カルネが私に声を掛けた。

 ちなみに我々の周囲には誰一人寄り付いていない。山奥の村人だから排他的、というよりも、単純に武装した四十人からの男達が怖いんだろう。

 こっちには槍聖サステナもいるしな。


「クロ子。聞いてんのか? おい」

『聞いてる聞いてる。だから何よ?』

「こんな事をしてていいのか? 村の周囲はまだカロワニーの兵隊共に取り囲まれているんだぞ」


 カルネの言葉にクロカンの隊員達も小さく頷く。

 私はブヒっと背後を振り返った。


『一応、マサさん達、黒い猟犬(ブラック・ガンドッグ)隊に周囲の見張りは頼んでいるけど?』

「それだよ。余所者の俺達が考え付くような事すら、ここのヤツらは思いつかないんだぜ。こんなヤツらが人間の軍隊と戦う事なんて出来るのかよ」


 最初からカロワニーの軍と戦うのが前提かよ。とはいえ、まあ、戦う事にはなるだろうな。

 実際、私はもう戦ってるし。

 私はカルネ達に向き直った。

 当事者でありながらどこか危機感の薄い村人達とは違い、彼らの表情には微塵も油断は感じられない。

 それどころか、村人達の対応の遅さに苛立ちすら感じているようだ。

 とはいえ、それも仕方がないだろう。

 この一年、戦いの場に何度も赴き、その数だけ死線をかいくぐって来たクロカンの隊員達に対し、楽園村の村人達は今日の今日まで荒事に一切縁がなかったのである。

 楽園村の者達は、事ここに至ってさえも、未だに自分達の村が戦場になりつつあるという実感がないのだろう。

 あるいは平和ボケしていると言い変えてもいい。

 まるで前世の私の母国みたいだな。


「クロ子?」

『なんでもない。そうね。この村の人間のペースに合わせていたら、私らまで死にかねないかもね』

「いや、お前だけは殺しても死にそうにないが」

「そうだな。ここで俺達クロカンが全滅しても、お前だけはしぶとく生き残りそうだ」

「そうそう。その上で鼻歌交じりでメラサニ村まで帰りそう」

「うわっ。今、その光景が目に浮かんだんだが」


 そう言って白い歯を見せ合う隊員達。

 うをい! お前ら人の事を何だと思ってるんだ!?

 私だって死ぬ時は死ぬっつーの。

 んなチート転生キャラみたいな事が出来るなら、最初からこんな苦労はしてないっつーの。


『ハイハイ。無駄話はそこまで。確かに巻き込まれて死にたくないなら、こっちで勝手に動いておいた方が良さそうね。カルネ、あんたはあっちで立ちションしてる槍聖様を連れて来て。そしてそこでサボってる黒い猟犬(ブラック・ガンドッグ)隊の犬! あんたはひとっ走りしてマサさんを呼んで来る事! みんなはこっちに集合して頂戴』

「おうよ! おおい、サステナ! クロ子が話があるってよ!」

「ワン! ワンワンワン!」


 さて、先ずはどこから手を付けたものか。

次回「メス豚と戦いを忘れた人々」

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立ちションてw サステナ何やってんのさ!w
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