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私はメス豚に転生しました  作者: 元二
第二章 修行編
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その43 進撃のメス豚

 ゴリラに止めを刺した私は次の部屋へと進んだ。


 新たに覚えた様々な魔法を駆使して、当たるを幸いになぎ倒す!

 ――とはいかないのが実戦の辛い所。

 魔法は覚えても使いこなせるかどうかはまた別の話なのだ。

 結局は使い慣れた最も危険な銃弾(エクスプローダー)を多用することになってしまうのは致し方無し。

 最も危険な銃弾(エクスプローダー)は初めて編み出したオリジナル魔法で、思い入れも深いしね。




最大打撃(パイルハンマ)!』


 ズシーン!


 巨大な岩の塊が浮き上がると落下。大亀を押し潰した。


 ふう・・・ 危ないところだった。


 私の魔法を全く寄せ付けない強固な甲羅も、この大質量の前にはひとたまりもない。

 反撃する間もなくあえなく潰されてしまった。


 最大打撃(パイルハンマ)の魔法はいわば質量兵器だ。

 大質量を浮かして落とす。ただそれだけの効果に特化した魔法である。


 固体にしか効果が無いから、土や水を持ち上げる事は出来ない。

 特化している分だけ持ち上げられる最大重量は大きいが、逆に言えばその他には全く応用が利かない。

 破壊力こそ大きいが、持ち上げた岩の移動速度は遅いし、相手に狙いはバレバレだ。

 今回は相手が動かなかったから命中したが、普通の敵なら難なく躱していただろう。

 大コウモリから覚えた魔法だが、ぶっちゃけ使い勝手は微妙なんじゃないかな?


 ちなみに大コウモリは釣り天井のように、事前に天井に岩を用意していた。

 コマが天井の異常に気が付かなかったら私も危ないところだった。

 必中を期すなら、そういった不意打ちの形で使うのが正しい使用方法なのかもしれない。


「キューン」


 コマが岩の周りを回りながら悲しそうに鳴いている。

 どうやら大亀の死骸を狙っていたようだ。

 しかし大亀の死骸は大きな岩の下。

 コマは地面を引っ掻くが、その程度では大岩はビクともしない。


 てか、ホントに食い意地が張ったヤツだな。


『もう諦めなさい。仕方ないでしょ。手ごわい相手だったんだから』


 情けない顔で振り返るコマ。

 実際この亀の攻撃はかなりヤバかった。

 決して手加減して勝てるような相手ではなかったのだ。


 この亀の魔法は、円盤状に回転する水の弾丸を撃ち出すものだった。


 それだけなら打ち出し(ファイアリング)の魔法の亜流でしかないのだが、コイツのタチが悪い所はその弾丸が毒だという点だ。

 麻痺性の毒を含むその円盤はかすっただけで、傷口から体内に毒が流れ込んで体が麻痺してしまうのだ。


 実際に最初の攻撃が腰の辺りを掠めたコマは、下半身が痺れて身動きが取れなくなっていた。

 私も事前に風の鎧(ヴォーテックス)の魔法で身体強化をしていなければ危ないところだった。


 亀は硬い甲羅の中に手足を引っ込めて、自分の身を守りながら攻撃を続けた。


 これがどれだけ厄介な相手か分かるだろうか?

 相手はトーチカに身を潜めて、一方的に銃撃してくるようなものなのだ。

 こっちの攻撃は甲羅に邪魔されて通らないのに、向こうの攻撃はかすっただけでアウトって、どう考えてもヤバすぎでしょ。


 魔法による攻撃と亀の長所を生かした防御が噛み合った凶悪コンボだ。

 もし大コウモリから最大打撃(パイルハンマ)の魔法を覚えていなかったら、一か八かのバンザイ突撃をかけるしかなかったかもしれない。

 余裕のように見えてギリギリの勝利だったのだ。


『ホラ、行くよコマ!』


 私はいつまでも未練がましく岩の周りを嗅ぎまわっているコマに声をかけた。

 もちろんもう一度最大打撃(パイルハンマ)の魔法を使えば岩をどかす事は簡単だが、コマはちょっと食べ過ぎだと思う。

 デブ犬にならないように、ここらで食事を控えさせておいた方がいいだろう。


「ワンワン!」


 コマは元気よく尻尾を振って駆け出した。

 こうして私達は次の部屋へと向かったのだった。




 次の相手はイタチのような生き物だった。

 もちろん頭には角が生えている。


 角イタチは私達を見付けると部屋の隅に逃げ出した。


 コイツは戦わないのか?


 謎の存在”X”の思惑はともかく、私からすれば向かって来ない相手に対してわざわざ戦いを挑む理由はない。

 私達の敵にならないのなら無視してもいいだろう。


『あ。でも戦わないと次の部屋への穴は開かないのか。かといって逃げる相手を襲うのもなあ・・・』


 イタチは部屋の隅で立ち上がった。

 キラキラと光る黒い目はジッと私を見つめている。


 ううっ。なんだろう凄い罪悪感が。


 そもそも私達は突然角イタチの部屋に入って来た侵入者だ。

 それだけでも何だか申し訳ないのに、さらに襲い掛かるなんて酷すぎないか?

 かといって”X”の気が変わるまで、いつまでもココで待つのもどうかと思うし。

 一体どうすればいいんだろうか・・・


「ウワン! ワンワン!」

『あっ! ちょっとコマ!』


 私の横をコマが駆け抜けた。

 どうやら待ちくたびれてしまったようだ。


 イタチは驚いて逃げ惑う。

 そんなイタチをコマは追いかけ回す。


『コラッ! コマ、やめなさい! 私はアンタをそんな弱い者イジメをする子に育てた覚えはないからね!』


 いや、いくら慌てていたからといって私は何を言っているんだろうな。

 コマは振り返って「ワン!」と吠えた。

 「俺も育てられた覚えはないよ!」とでも言ったのだろうか? ごもっとも。


「キキイッ!」


 ! 魔法攻撃が来る!


『コマ下がって!』


 私は前に飛び出した。

 その瞬間――


 パーン!


「キャイン!」


 激しい閃光と炸裂音が部屋の中央で炸裂した。




「キャイン! キャイン!」


 遠くで小さくコマの情けない悲鳴が聞こえる。

 また腰を抜かしているのかもしれない。


 だが、今の魔法をまともにくらった私はそれどころじゃなかった。

 強烈な眩暈と耳鳴りに私は平衡感覚が保てずに冷たい地面に転がっていた。


 やられた! スタングレネードの魔法なんてものまであったのか! クソッ! 最悪だ!


 スタングレネードは炸裂と共に大きな爆発音と強烈な閃光を放つ、非殺傷性の兵器の事を言う。

 怪我をさせずに犯人を麻痺させるために開発された兵器で、人質の救出や暴徒鎮圧、対テロなどの牽制制圧に用いられている。

 非殺傷、となってはいるがその威力は凄まじく、近距離で直視すると失明すると言われているほどだ。


 イタチの魔法は正にスタングレネードそのままに、空間に激しい閃光と爆発音を発生させるものだった。

 そして今日くらった魔法の中でも最大級に厄介な魔法だ。

 こちらを狙って飛んでくる魔法なら躱す事も出来るが、空間全体に影響を及ぼす魔法はこちらの目と耳が健常である限り防ぎようがない。


 ヤバい! ヤバい! 身動きが取れない!


 こうしている間にもイタチは私に襲い掛かって来るだろう。

 それが分かっていながらも私にはなすすべもない。


 幸い失明したわけでも鼓膜が破れたわけでもないようだ。

 イタチの魔法にそこまでの威力は無かったのだろう。

 とはいえ完全に感覚を狂わされている事には変わりはない。

 なにせ今の私にはどっちが床かすら分からないのだ。


 絶体絶命のピンチに、私は心臓を直接鷲掴みにされたような恐怖を覚えた。

 気持ちばかりが焦る中、私は力無く床でもがき続ける事しか出来なかった。



 それからどれくらい経っただろう。

 私は痛む頭に顔をしかめながら立ち上がった。


 私の目の前には半死半生で倒れたイタチがいた。


 ・・・


 どうやら自分の放った魔法で麻痺してしまったようだ。


 そりゃそうか。


 密閉された部屋の中でスタングレネードを爆発させたら逃げ場なんてないわな。

 イタチも私達同様、耳と目を潰されて立ち上がれなくなったらしい。

 つまりは自爆というヤツだ。

 なんという残念なオチ。


『けどまあ、便利そうな魔法を見せてもらったから良しとするか。最も危険な銃弾(エクスプローダー)

「キュン!」


 私の魔法に頭を打ち抜かれて、このお騒がせイタチは絶命するのだった。

次回「メス豚、ダンジョン最奥に到達する」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 二週目読んでみてそういえばなんですが、この話で出てくる亀の魔法(麻痺水円盤)、クロ子使わないですね。 習得しなかったのか使いどころが難しいのか(水がないと使えない?)、エクスプローダー…
[気になる点] 貪欲に変異体を食べるコマも強化されちゃいそうだ
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