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私はメス豚に転生しました  作者: 元二
第十一章 冬休み編
365/518

その362 ~お前は一体何をやっているんだ?~

◇◇◇◇◇◇◇◇


 王城の一室。来客用の控室にショタ坊ことルベリオ達一行は案内されていた。

 ルベリオ達一行。そう、この部屋にいるのはルベリオ一人だけではなかったのである。

 連れの一人、ルベリオと同年代の少女が、部屋に入ると同時にはしゃいだ声を上げた。


「わあ。ここがお城の部屋なのね。ねえねえルベリオ、テラスに出てみても構わないかしら?」


 少女の名前はナタリア。

 大モルトとアマディ・ロスディオ法王国の国境近くの町、サイラムに住む少女で、彼女の父親は町の守備隊長であった。

 もう一人のルベリオの連れ。顔に大きな傷のある背の高い青年が、落ち着きなくキョロキョロと辺りを見回した。


「お、おいルベリオ、じゃなかった、ええと男爵様。なあ、本当にこんな場所に俺なんかが来て良かったのかよ、ですか?」


 このワイルドな雰囲気の青年はハディック。

 法王国からサイラムの町に流れて来た流民で、同じような境遇の者達が集まった半グレ集団のリーダーをやっている青年である。

 ルベリオは困った顔でハディックに謝った。


「ええと、ごめんなさい。けど、殿下の性格を考えると、僕から話を聞くだけではなく、絶対に直接二人に会いたいとおっしゃると思うので」


 イサロ王子は、どちらかと言えば自分の目で直接確認したがる傾向がある。

 これは他人を信用していない、という話ではなく、彼がつい最近まで継承権争いから外れていたのが原因だと思われる。

 つまり王子は部下に任せる事にまだあまり慣れていないのだ。


「王子様かぁ。ルベリオから何度もお話を聞かされているから、お会いするのがとっても楽しみだわ。ちょっと意地悪だけど優しい方なのよね?」

「ちょ、ナタリア! 意地悪とかそんな事、僕は一言も言ってないよね?! ここじゃ誰が聞いているか分からないんだから、そんな事絶対に言っちゃダメだよ!」

「あら? そうだったかしら? ごめんなさい」


 少女はペロリと舌を出した。

 ナタリアはお城に来て少し浮かれているのかもしれない。

 ルベリオは彼女がイサロ王子の前で失礼な事を言い出さないか、今更ながら心配になって来た。

 そんな彼の腕をハディックが掴んだ。


「おいおいルベリオ――男爵様。なあ、やっぱ俺は城の外に出てた方がいいんじゃねえか? 絶対ヤバイだろコレ」


 ハディックは真っ青になって今にも倒れそうである。

 日頃の不敵な彼の姿を知っているルベリオは、今の怯える姿とのギャップについ吹き出してしまった。


「こ、この、テメエ!」

「ん? 今の声は誰だ?」


 ハディックが拳を振り上げたその時、部屋の外から男の声が届いた。

 ルベリオは「まさか自分からわざわざ会いに?! いや、あの人ならあり得るかも?!」と呟くと、慌てて二人に入り口から下がるように言った。

 その直後。果たして、姿を現したのはルベリオの想像していた通りの人物だった。

 そう。ルベリオの(あるじ)、イサロ王子その人であった。

 王子は少年の姿を見つけると、人前ではあまり見せない屈託のない笑みを浮かべた。


「ルベリオ。急に戻って来てどうしたんだ? 確かお前があちらに向かったのが昨年の年末だったから、大体一月ぶりといったところか」

「はい。殿下もお変わりないご様子で」


 二人は嬉しそうに互いの無事を確認し合った。

 そして王子はルベリオの後ろに控えている見慣れない二人に視線を向けた。


「それで? そっちの二人は何者だ?」

「あ、はい! この二人は――」


 ルベリオは慌ててナタリアとハディックの紹介を始めたのだった。




 それからテーブルに場所を移し、ルベリオはサイラムの町で自分達が行った事を説明した。


「なんだと?! ハマスの当主が討ち取られたという話は聞いていたが、あれはお前達がやった事だったのか!」


 サイラムの町へと人脈作りに向かったルベリオは、ハマス軍の指揮官、カルミノ・”ハマス”オルエンドロが少数の騎馬隊に守られて領地に向かっているとの情報を掴んだ。

 彼はたまたま町で知り合ったナタリアと、彼女の伝手で出会ったハディックに協力して貰い、この国と大モルトとの国境近くの町、サグサダで見事カルミノを討ち取ったのであった。(第十章 竜殺し編 より)

 イサロ王子は思わず興奮して身を乗り出した。


「やるなルベリオ! 大手柄ではないか!」

「そんな――ええと、はい。そうなります」


 ルベリオは一瞬、いつものように謙遜しそうになったが、かつて百勝ステラーノの孫マルツォから「手柄の安売りだけはするな。お前の下にはお前に従って命を張った部下達がいるんだぞ」と忠告を受けていた事を思い出し、慌てて肯定した。


「その件が大モルト軍にも認められたらしく、急遽、王都に戻るよう命じられたのです」

「ん? ハマスを討ち取ったのは昨年の年末だったのだろう? なぜ今になって――いや、そうか。ハマスの死が正式に確認されたのだな」


 ”ハマス”オルエンドロ死亡の報告を受け、”新家”アレサンドロ家当主ジェルマンは直ちに進軍を開始――しようとしたのだが、そうはいかなかった。

 ジェルマン配下の将軍達が、ラリエール男爵(※ルベリオの家名)というどこの馬の骨とも分からない人物からの報告を信用せず、出兵に反対したからである。

 父親が死んだ事で若くして当主の座に就いたジェルマンは、以前から重臣に対して強く出られない所があった。

 結局、ジェルマン軍が動いたのは、ルベリオからの報告が届いてから数日後。ハマス軍が占拠していた辺境伯領を放棄、自領に向けて撤退中との知らせを受けた後の事であった。

 指揮官を任されたキンサナ将軍は急遽、辺境伯領に向かったが、残念ながらタッチの差でハマス軍を取り逃がしてしまう。

 将軍にはこのままハマス軍を追撃。敵の背後から攻撃を仕掛けるという選択肢もあったが、彼はムリをして与えられた兵を損ねてしまうのを恐れた。

 結果として将軍はハマス軍が放棄した城塞都市アボリーニに入ると、そのまま辺境伯領を押さえるという安全策を取ったのだった。

 将軍の消極的な行動にジェルマンは激しく激怒。譜代の家臣に対して失望したのは知っての通りである。(第十章 竜殺し編 その357~不信感~ より)


 その後の現地の調査で、ハマス・オルエンドロの死はどうやら間違いなかったと確認されたようだ。

 つまりはルベリオの報告が正しかった事が、ここでようやく証明された訳である。

 論功行賞は速やかに行われるべきである。

 ジェルマンはルベリオのお目付け役のホルヘに命じ、少年を王都に呼び戻したのだった。


「なる程。お前の事情は良く分かった――それはそれとして、だ。お前は一体何をやっているんだ?」


 イサロ王子は機嫌の良さそうな顔から一転すると、冷ややかな目でルベリオを見つめた。

 いや、正確に言えば王子の視線の先にあるのはルベリオではなかった。

 ルベリオと彼の隣に座って、彼の腕に自分の腕を回している少女。

 まるでカップルのようなルベリオとナタリアの二人だった。


「ええと、殿下。一体何をやっているんだとは?」

「・・・ちょっと来い」


 イサロ王子はルベリオの腕を掴んで立たせると、そのまま部屋から引っ張り出した。

 王子はひと気のない廊下の壁にルベリオを押し付けた。


「――おいルベリオ。あの女は何だ?」

「ナタリアの事ですか? 彼女はサイラムで守備隊長をしているコルストさんの娘で――」

「そんな事を聞いているんじゃない!」


 イサロ王子はイライラと髪をかき上げると、ルベリオの目を覗き込むように柱に手をついた。

 現代風に言う、いわゆる壁ドンというヤツである。


「おい、ルベリオ。お前、俺の妹のミルティーナに付きまとわれているのに困って、相談に来たんだったよな?」

「いえそんな。付きまとわれてというか、ミルティーナ様の距離感が少し近くなって来ていたので、少し間を置きたいと思いまして」

「そうだ。だから俺はお前に今回の仕事を紹介した。なのに、だ。なのに何でその先で新しい女を作って来る? なあ? お前は何がしたいんだ?」


 イサロ王子の不満も分かる。

 女絡みの相談を受けたので、一度距離を開けるよう手配してやったというのに、その先で別の女を引っ掛けて来たのでは何が何やら分からない。

 もし、この場にクロ子がいれば「アニメやラノベで、主人公が行く先々でヒロインを作るのは見た事あるけど、現実にそういうコトやられると引くわー」などと呆れたかもしれない。

 とはいえ、文句を言われてもルベリオとしても困ってしまう。

 彼は別に自分からナタリアに声を掛けた訳ではないのだ。

 町を歩いていると彼女の方から一方的に声を掛けられ、「あなたは私の運命の人だわ」などと言われてしまったのだ。

 何でもひと目見ただけでビビッと来たんだそうだ。良く意味が分からない。一目惚れみたいなものかもしれない。

 クロ子が聞けば「えっ? 歩いているだけで好感度MAXの女の子が釣れるとか、お前どこの主人公様だよ」とドン引きしたかもしれない。


「ええと、ナタリアについては僕もどうすればいいのか。彼女とハディックは今回の件の功労者ですし、あちらに置いて来る訳にもいかなかったので。それにハディックには成功すれば家臣にするという約束もしていましたから」

「男の方はどうでもいい。問題は女の話だ」


 イサロ王子はハディックの事をバッサリ切り捨てるとルベリオを睨み付けた。


「お前、あの女の事をミルティーナにどう説明するつもりだ。あいつはお前が国境の町に行ってから、毎日のように俺に恨み言を言うためだけに登城していたんだぞ。それなのに、お前が出先の町で女を作っていたなんて知ってみろ。お前本気であいつに刺されるぞ」

「ええっ?! そ、そんな! 僕とナタリアはそんな関係じゃ――」


 ルベリオは慌てて否定しようとしたが、イサロ王子が真剣に自分を心配しているのを察して黙り込んだ。


「・・・どうすればいいでしょうか?」

「俺に言われてもな。・・・ベルナルド辺りにでも相談してみるか。おい、誰か! ベルナルド・クワッタハッホを呼んで来い! さっき俺と会っていた所だから、まだその辺にいるはずだ!」


 イサロ王子は、あまり男女の仲に詳しくない自分より、優男のベルナルドの方がこの手の話では頼りになるのではないかと考えたようだ。

 王子の命令を受けて、二人の様子を遠巻きに見ていた使用人が慌てて走り去った。


「全く・・・なぜ俺がお前の尻拭いをしてやらねばならんのだ」

「す、済みません」


 憮然とするイサロ王子に、ルベリオは申し訳なさそうに頭を下げたのだった。

次回「一国一城の主」

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― 新着の感想 ―
[良い点] >ナタリア ついてきちゃったかぁ… >ハディック ついてこさせられちゃったかぁ… >お前本気であいつに刺されるぞ 返す刀で「ルベリオを国の外に出したお兄様のせいよ!」とイサロも斬り付け…
[気になる点] ルベリオ女の扱いに慣れてないとはいえこれはマズイなー。 出世していったらもっと沢山の娘に言い寄られるだろうし、ベルナルドにしっかりご教授いただかないとマジでミルティーナに刺されるよね。…
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