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私はメス豚に転生しました  作者: 元二
第五章 大モルト侵攻編
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その159 ~カルネと人間の騎士~

すみません。予告とタイトルが変わってしまいました。

「バルトロ隊は右に! エルーニョ隊は正面! 手前の竪堀(たてほり)を確保しろ!」

「うおおおおおおおっ!」


 指揮官の元優男君の指示に、味方の何とか隊と何とか隊が突撃を開始した。

 防衛戦とはいえ、陣地に立てこもって守っていればいい、というものではないらしい。

 言われてみればそれもそうか。こちらが出てこないと分かれば、敵も余裕を持って攻略を開始する。

 敵のやりたい放題という訳だ。

 攻撃は最大の防御、という言葉もある。敵に自由行動をさせないためには、こちらが主導権を握る必要がある。

 敵に戦力を集結させてはならない。倒すためではない、守るために攻めるのである。


 などと口で言うのは簡単だが、本来こちらの強みは陣地を利用した地の利にある。

 それを捨てて攻めるのだから、言ってみれば相手の土俵で戦ってやるようなものである。

 どこまで攻め、どこで引くか。全ては指揮官の元優男君の判断にかかっている。


 ここで元優男君はこちらに振り返った。


「亜人部隊、出られますか? 正面のエルーニョ隊がやや押されています。彼らの援護をお願いします」

「カルネ」

「おうよ! 待ちかねたぜ! 行くぞテメエら!」

「「「「「おう!」」」」」


 クロコパトラ小隊隊長のカルネが、先陣を切って陣地を飛び出して行く。

 今の所、こちらの方が優勢だ。敵は各自バラバラに戦っているだけで、部隊として機能していない。

 しかし、元優男君は難しい顔をしている。


「クワッタハッホ卿。何か気になる事でも?」


 ショタ坊が元優男君に尋ねた。


「敵がもろ過ぎます。敵は今朝から何度か攻めて来ていますが、今日の敵の手強さはあんなものじゃなかった。それに”二つ矢”の動きが無いのが気になります」


 ”二つ矢”アッカム。クロスボウの射程距離外(アウト・オブ・レンジ)から、必中の矢を飛ばして来る凄腕のスナイパーだ。

 ヤツの相手は私がする事になっている。

 これは指揮官の元優男君にも了承済みだ。

 さっき相談した所、「女王がそうして下さるなら是非」と、むしろ食い気味に頼まれてしまった。

 君はもう少し私を疑ってもいいんじゃないか? まあ、説得の手間が無くて助かったけど。


「・・・こちらの動きが読まれているんでしょうか?」

「だとしても、ここは攻めるべきでしょうね」


 カードゲームでも、敵の伏せカードを警戒して攻撃しない、ターンエンド。なんて事は普通にあり得ない。

 いやまあ、アニメだとあるにはあるけど。現実のゲームでは見られない。

 攻めなきゃ相手に主導権が移ってしまう。兵は拙速を(たっと)ぶのである。


 そんな話をしている間にも、味方が手前の竪堀(たてほり)から敵を追い落としたようである。

 彼らは後退する敵に引っ張られるように、更に前に進んでいる。


「ちっ。簡単に勝ち過ぎるのも善し悪しだな。オスカル。二十人程連れて竪堀(たてほり)の援護に向かえ。エルーニョ隊が出過ぎている。連れ戻せ」

「はっ!」


 慌てて出ていく兵士達。

 防衛戦は今の所こちらが優勢で進んでいた。


◇◇◇◇◇◇◇◇


 前線では亜人の兵士カルネと、この部隊を任された騎士、エルーニョが、競い合うように敵兵を蹴散らしていた。


「エルーニョ様! 前に出過ぎです! 引いて下さい!」

「黙れ! 俺に亜人ごときに後れを取れと言うのか?!」

「ははっ! 言うじゃねえか! だが俺の方が敵を倒しているぜ!」

「なにぃ!」


 カルネとエルーニョはほぼ同年代。体格はカルネの方が勝り、装備と技量はエルーニョの方が勝っている。

 しかし戦場では、そういった肉体的な要素よりも精神的な要素――度胸があって思い切りの良い者――の方が戦果を挙げるものである。

 そういう意味では二人は互角。むしろ似た者同士と言っても良かった。


「むっ! しまった!」


 カルネは剣技に関しては素人同然である。

 敵の剣を思わず剣の腹で受けてしまった。

 脱走兵狩りの際に手に入れた数打ちの剣は、それだけであっさりと半ばから折れてしまった。


「くそっ! 見掛け倒しの剣め!」


 武器を失い、焦るカルネ。

 しかし、カルネに襲い掛かった敵兵は、エルーニョの剣によって背後から貫かれていた。


「馬鹿が、油断し過ぎだ! 俺の剣を使え。父から頂いた業物だ。それならお前の乱暴な扱いにも耐えられるだろう」

「お、おう。すまねえ」


 エルーニョは血の付いた剣を乱暴にカルネに押し付けた。


「けど、お前はいいのか?」

「俺は――おい、お前の剣を俺によこせ! 部下の剣がある。これで十分だ」


 そう言ってエルーニョは軽く剣を振ってバランスを確かめた。

 ポカンとした顔でエルーニョの様子を見ていたカルネだったが、すぐにニヤリと笑みを浮かべた。


「だったら借りにしとくぜ。礼として俺が倒した分から半分お前の手柄にくれてやるよ!」

「んなっ! そんなものいるか! 代わりに手強い敵は俺が引き受けてやる! お前は剣を折らないように、そこらのザコでも相手にしていろ!」


 二人は益々、意気軒昂。

 次なる獲物を探して、敵の中へと突っ込んで行った。

 こうして気付けば二人は味方の陣地を離れ、すっかり深入りしていたのである。




 先に事態に気付いたのは、流石にエルーニョの方だった。

 彼は周囲に味方の姿が無いのに気付き、大きく舌打ちをした。


「おい、亜人の大男。マズい事になったぞ。コラ、話を聞け!」


 慣れない戦場にすっかり頭に血が上ったカルネは、敵を追って走り出そうとした所を、エルーニョに腕を掴まれていた。


「何しやがる! 敵が逃げちまうだろうが!」

「それより周りを見ろ。味方はどこにいる?」


 カルネはハッと目を見開くと、キョロキョロと周囲を見回した。


「・・・ここはどこだ?」

「分からん。大分奥まで入り込んでしまったようだ。おい。一度陣地に戻るぞ」

「お、おう」


 エルーニョは周囲を警戒しながら斜面を登り始めた。

 カルネはふと喉の渇きを覚えて、腰にぶら下げた水筒を口に咥えた。


「んぐっんぐっぬぐっ・・・ぷはっ」


 どうやら知らない間に喉がカラカラに乾いていたようだ。カルネは水筒ごと丸のみしそうな勢いで一気に水を流し込むと、空になってしまった水筒を名残惜しそうに見つめた。

 そんなカルネの姿に呆れるエルーニョ。


「今はそれで我慢するんだな。陣地に戻った後にいくらでも飲めばいい」


 ここでエルーニョは、何の気なしにふと呟いた。


「お前、酒は飲む方か?」

「あたぼうよ。俺より酒癖が悪いヤツは仲間にはいないぜ!」

「それは自慢するような事か? まあいい。俺のテントに少々酒を残してある。今夜俺の所に来い。少しだけならお前にも呑ませてやる」

「いいのか? そいつはありがてえ」

「ふん。本来なら亜人が口にするには勿体ない酒だがな」


 その後、二人はたわいない会話を交わしながら歩き続けた。

 片や亜人、片や人間の騎士。普通ならこうして話をするなどあり得ない。

 しかし、戦いの中で互いの腕前を認め合っていた事もあって、二人の間には何のわだかまりも無かった。


 幸い、周囲に敵兵はいなかった。

 しかしそれも味方陣地に近付くまでだった。


「! 伏せろ! 敵だ!」

「ちっ・・・なんて数だ」


 そこにいたのは五十人程の敵集団だった。

 たまたま後方から近付く形になったため、まだ気付かれてはいないようだ。

 しかし、ここにいては見つかるのも時間の問題だった。


「何だ? あの敵。普通の部隊じゃないぞ」

「そうなのか? まあ確かに、俺達がブッ倒したヤツらとは見た目が違うが」


 敵集団は、全員赤を基調とした甲冑で身を固めていた。

 二人は知らない事だが、彼らは”赤備えの騎士”ポルカの率いる”赤馬隊”。

 本来なら騎馬隊の所を、今回は馬を降り、腰曲輪に向けて侵攻しようと行軍しているところであった。


「とにかく、何か分からんが、ヤツらはタダ者ではなさそうだ。急いで味方に知らせるぞ。おい亜人、走る――ぐっ!」


 腰を浮かせたエルーニョの背に、どこからともなく飛来した矢が突き立った。


「おい、大丈夫か?!」

「来るな! 俺に構うな、行け! 味方の陣地はヤツらのすぐ先だ。急いで知らせるんだ!」


 なおもためらうカルネだったが、「ヒュン」と空気を切り裂く音と共に、二本目の矢がエルーニョの足に突き立った。

 痛みにうめき声を上げるエルーニョ。

 一矢も外さないこの腕前。間違いなく”二つ矢”アッカムによるものである。


 この時、”二つ矢”アッカムは丘の下の木立に隠れて、赤備えの騎士ポルカの部隊を掩護していた。

 彼はポルカの部隊に背後から近付く怪しい二人組を見付け、攻撃を仕掛けたのだ。

 たまたま、カルネの伏せた場所は、彼の潜んだ位置からは死角になっていた。

 ”二つ矢”はカルネを射線が通る場所におびき出そうとして、エルーニョに矢を放ったのである。


 この時。二つの事が起った。


 一つは”赤備えの騎士”ポルカが、部隊後方のカルネ達の声を聞き付け、カルネを発見した事。

 もう一つは、ずっと周囲を警戒していたクロ子が、とうとう”二つ矢”アッカムの位置を特定した事である。

もしもこの小説が気に入って貰えたなら、私の書いた他の小説もいかがでしょうか?

『戦闘機に生まれ変わった僕はお嬢様を乗せ異世界の空を飛ぶ』

https://book1.adouzi.eu.org/n6946fj/

昔のレシプロ戦闘機(四式戦闘機)に転生してしまった青年が、異世界の貴族の少女にドラゴンと勘違いされてしまう物語です。

タイトルにこそ戦闘機と付いていますが、ミリタリー色は全然控え目で、軽く読めるお話になっていると思います。

結構長く続いているので、ボリュームのある小説を探している方は是非。


次回「メス豚vsスナイパー」

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― 新着の感想 ―
[一言] この気っ風のいい兄ちゃん(おっさん?)もパイセンのところへいってしまうのかなあ。
[良い点] なんかこの戦いをきっかけに亜人と人の仲が多少なりとも前進しそうてはある。共通の敵を相手にして血を流すってことは団結心を強めることになるんだよなぁ… クロ子の短期的な目的は彼ら亜人の安全と権…
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