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私はメス豚に転生しました  作者: 元二
第一章 異世界転生編
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そのX 女子中学生と従兄弟の大学生

 これは私が異世界で子豚に生まれ変わるよりずっと前。元の世界で中学生に上がった頃の話である。


◇◇◇◇◇◇◇◇


 当時私は他県にあるママの実家から近所の中学校に通っていた。

 それはパパとママが別居中だったから――という訳では無く、ママが自動車事故に巻き込まれて入院する事になったためだ。

 何でもママの実家から近い大学病院に有名な外科医の先生がいたらしい。

 ママのお父さんの伝手でその先生を紹介してもらえたのだ。


 ちなみにパパは家でなんちゃって独身生活である。

 まあ、会社の仕事があるから仕方ないよね。


 ママの実家にはお爺ちゃんとお婆ちゃん、それとママのお兄さんに当たる伯父さん夫婦とその息子の五人が生活していた。

 伯父さんの子供――私の従兄弟は県内の大学に通う大学生で、ひょろっと背の高いどこか掴みどころのない飄々とした男性だった。


 名前は典明(のりあき)


 典明(のりあき)は家にいる時はいつも自分の部屋に引きこもっているようなヤツだったが、かといって引きこもり体質というわけでもなかったようだ。

 大学の友達からご近所のおじさんおばさんに至るまで、その交友関係は私がちょっと引くほど多彩で幅広かった。

 何でも典明(のりあき)は高校生の時には夏休みを利用して自転車で日本一周をした事もあるらしい。

 おばさんが困った顔をしながらその時の写真を見せてくれた。

 予定より時間がかかってしまって、危うく出席日数が足りなくなる所だったんだそうだ。何とも困った息子ですな。


 いつしか私は典明(のりあき)の部屋に入り浸るようになっていた。

 いや、君らが想像しているような色っぽい話ではないぞ。当時の私は中学一年生。去年まではランドセルを背負っていたようなガキんちょだったからな。

 それに対して典明(のりあき)は大学生。

 彼も私の事を全く異性として見ていなかったんじゃないだろうか。


 それに典明(のりあき)には近所に幼馴染の彼女がいた。

 汐乃(しの)さんという可愛い女性で、彼女は毎日のように家に遊びに来ていた。

 二人は私から見てもお似合いのカップルで、双方の両親公認でほぼ家族ぐるみの付き合いだったようだ。

 まるで漫画の主人公のようなヤツだな典明(のりあき)は。




「9の国は俺の兵と六花(りっか)ちゃんの兵が同数だから、9の城チップは刀の数の多い俺のものね」

「ああっ! しまった!」


 9の国を取られるという事は、隣接している11と12の国にも援軍が送られるという事だ。

 やられたっ。まさか典明(のりあき)め、最初からこれを狙っていたのか・・・


 援軍を受けて11と12の城チップは典明(のりあき)の物となった。これによって彼の得点は私の合計点を上回る事になる。

 典明(のりあき)の逆転勝利である。


 汐乃(しの)さんは驚いて目を丸くしている。

 ホンマに可愛い娘だな汐乃(しの)さんは。

 女子中学生が女子大生相手に可愛いとか言うのもなんだけど。


「凄いね典明(のりあき)君! 大逆転だよ!」

「いやあ、一時はどうなるかと思ったよ」


 三味線を弾いてるんじゃねえよ典明(のりあき)。テメエ絶対に最初から勝利を確信してただろうが。

 ぐぬぬっ・・・ どうしてあの時私は5の国を取りに行かなかったんだろうか。

 汐乃(しの)さんに取られてさえいなければ、9の国に援軍が送れたのに。

 なまじ勝ちの目が見えていただけに、あの時の判断ミスが悔やまれる。


「私はまたビリだよ~」

六花(りっか)ちゃん強いからね。でも汐乃(しの)も惜しかったよ」


 涙目の汐乃(しの)さんを慰める典明(のりあき)

 テメエここで悔しい思いをしている従姉妹も慰めんかい。

 本当に慰められたらキレる自信があるけどな!

 

 典明(のりあき)の部屋にいるのは、私と典明(のりあき)典明(のりあき)の幼馴染の汐乃(しの)さん。

 私達が集まると大抵こうしてボードゲームをする事が多い。

 今日のゲームは「天〇鳴動」。

 典明(のりあき)はこういったアナログ対人ゲームが好きで、ちょくちょく新作を買ってきては部屋に積んでいるのだ。


 戦績はほとんど典明(のりあき)の一人勝ち。

 まあ典明(のりあき)のゲームなんだから別におかしな話じゃないんだが、世の中には下手の横好きという言葉もある。

 持ち主=強い、という法則は無いはずなんだがなあ・・・


 汐乃(しの)さんはどうだって? 彼女はメチャクチャ弱いよ。

 でも汐乃(しの)さんは典明(のりあき)と一緒にゲームをしているだけで楽しそうだから。

 多分最初から勝つ気はないのだ。

 彼女はそういう可愛い生き物なのだよ。


「私はこういう戦争のゲームより、この間の鳥を育てるやつの方が好きかな。鳥の絵も可愛いかったし」

「じゃあ次はそっちをやろうか。六花(りっか)ちゃんもそれで良いかな?」


 鳥のゲーム? 「ウ〇ングスパン」か。

 まああれはプレイヤー同士が戦っている感じの弱いゲームだし、汐乃(しの)さんが好きそうではあるな。


六花(りっか)ちゃんが来てくれて良かったよ。典明(のりあき)君と二人よりずっと盛り上がるもん」

六花(りっか)ちゃんは筋も良いからね。鍛えれば俺を超える逸材だと睨んでるよ。弟子は師匠を超えてこそ真の恩返しとも言える。期待しているよ、六花(りっか)ちゃん」


 誰が師匠だ、誰が。

 私は勝手な事をぬかす典明(のりあき)に蹴りを入れた。


 典明(のりあき)が私の師匠というのはともかく、多感な中学生の頃に、私が彼から大きな影響を受けた事実は否めない。

 そこは素直に認めよう。なんか癪に障るが。


 彼の趣味は対人系のアナログゲーム全般。私と違ってコンピューターゲームにはあまり食指が動かないようだ。「どぶ森」面白いのに。

 ゲーム以外だと歴史や戦記物の本を好んで読んでいた。

 典明(のりあき)は自分の得たそれらの知識から、逸話や言葉を引用する事が多々あって、当時中学生だった私は彼の持つ知識量に自然と憧れを抱くようになっていた。

 そういう意味でも、悔しいけど確かに彼は私の師匠ではあったのだろう。



 ある日、私は彼の本棚を見ながら典明(のりあき)に尋ねた。


「こんなに戦争の本ばかり読んで面白い?」


 典明(のりあき)は女子中学生の素朴な疑問に、ちょっとバツが悪そうな表情を浮かべた。


「いや、俺は歴史が好きなだけで、別に戦争の本を集めてるわけじゃないんだけど。・・・まあ人類の歴史と戦争の歴史とはどうしても結びついているから否定はし辛いけどさ」


 彼は少し考えながら続けた。


「というより、歴史にもそれほど興味は無いのかも。俺は人間に興味があるだけだから。

 人間が何を考えてどういう行動を取るのか。そういった人間の本質に根差した”業”のようなものを知りたいんだろうね。

 コンピューターを相手にするゲームに興味を持てないのもそれでかな。人間という存在の”公理”を知りたい、と思っているのかもしれない。

 そういったものは特定の個人を観察していても多分見えてこない。どうしても本人の持つ個性に左右されてしまうからね。だから集団としての人間、国やその歴史に興味が湧くんじゃないかな。

 俺は事実から照らし出される人間の行動原理を感じるのが好きなんだ」


 その時の私は、話に付いて行けずに訝し気な表情を浮かべていたんじゃないだろうか?

 典明(のりあき)はそんな私を気にする事も無く、第二次世界大戦について書かれた本を手に取った。

 コイツは基本的には社交的だが、たまにこうして自分の考えに夢中になってしまう事がある。

 この時の彼は、私に説明をしながら何かのスイッチが入ってしまったのだろう。

 好きな話をし出すと止まらない。要はオタクなのだ。


「中でも戦争は特に特殊な状況だ。生物の根源的なエゴは、死にたくない、生きたい、といった欲望だ。俺達人間は日頃は理性で抑え込んで、集団社会を営んでいる。

 しかし、戦争によって死が――極限状態が身近に感じられるようになると、そんな理性の殻がどんどん削れて薄くなってしまう。誰かを押しのけてでも生き残りたい。他人の食べ物を奪ってでも空腹を満たしたい。そういったアナーキーな考え方が頭をのぞかせる。

 だけどそんな中でも人間は、国のため家族のために、武器を手に命の危険がある戦場に向かう事が出来る。これって凄い事だとは思わない?」


 当時の私に典明(のりあき)の話がどれほど理解出来たのかは分からない。

 いや、今でも理解出来ているのかと言えば疑問だ。

 所詮は他人の趣味嗜好、私は典明(のりあき)に影響を受けたかもしれないが、別に彼の思想に共感していたわけではないのだから。


 私は彼の持つ本に目を落とした。


「戦争が人間の本性をむき出しにするって事?」


 典明(のりあき)は本を本棚に戻しながら答えた。


「戦争、というよりも自分の命の危険が迫った時だね。戦場は危険な状況という意味では申し分ないし。そういう意味でなら、戦いに負けて敗走している時の方がそういう心理になりやすいだろうね」

「ふうん」


 まあ今の話は分からないでもない。

 同じ戦場に立っていたとしても、勝っている方はそれほど命の危険は感じないだろうしな。


◇◇◇◇◇◇◇◇


 ここでこの話は終わる。

 ちょっとアレな会話だった気もするが、当時、私達の間ではちょくちょく交わされていた極普通の会話だった。

 この時もすぐに別の話題になったはずだが、そっちの方は忘れてしまった。

 どうでもいい話だったんだろう。


 さて、なぜ私が長々とこんな話をして来たかと言うとだな――


「後退だ! 後方の陣地まで後退しろ! 走れ! 敵の騎兵はもうそこまで来ているぞ!」


 そう。王子軍は敵に押し込まれて現在絶賛敗走中であった。


 ショタ坊は青ざめた表情で慌てて私を抱き上げて走り出した。

 周りにいた輜重部隊の兵士達も雪崩を打って壊走している。

 正に全軍崩壊だ。

 どうしてこうなったし。

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