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友人共通認識 ロノスは刺されそう

百話達成


総合740突破

 ……何故だろう? アンリは凄く強いのに胸騒ぎがする。


 急に慌てて騒ぎ出したタマに掴まれてアンリの所に向かう最中、僕は尋常でない不安に襲われていた。

 まるでトラウマが蘇ったみたいな、取り返しの付かない後悔の理由がこの先で待っているかの様な奇妙な感覚。直ぐ隣では追い付いたポチが僕を離せとしきりに叫んで居るけれど、今はその可愛ささえ頭に入って来ない。


「何が待っているんだ?」


 口からそんな‥呟きが漏れ出た時、アンリを待たせた場所が見えて来た。周囲にはクリーム色の何かの残骸が散らばり、池の底にも沈んでいるのは頭部らしい形をしているからモンスターの死骸なのかも知れないけれど、それにしては血が出ていないしゴーレムの類なのかも。


 でも、今はそんな事はどうでも良いんだ。気にしている場合じゃない。

 だって……。




「アンリ、大丈夫!?」


 大切な友達が血を流しながら木にもたれ掛かっているんだから!


 肩の辺りで血が滲み、腕を伝って地面を濡らす。見れば頬や足にも幾つもの傷が残っていて、周囲にはクリーム色の何かの残骸の他に折れたナイフや爆発でも起きたらしい痕跡が見られる。

 あれはアンリの武器の爆弾ナイフ? 結構高価だから滅多に使わないのに……。



「ロノスか。ああ、何とか無事だ。手酷くやられたが襲って来たのは全部倒した。……所で君に頼みが有るんだが」


「何だい? 僕に出来る事なら何でも言って!」


 良かった! 意識だって有る。

 僕に気が付いたアンリは時折痛みに顔をしかめながらも笑みを浮かべていて、心配そうに近くで鳴くタマの体に指先で触れていた。

 あれ? 腕が上がっていない?


「腕、大丈夫かい? もしかして骨が……」


 こんな状況でお願いがあるって口にするだなんて物語だったら遺言とかで不吉だけれど、アンリの様子を見る限りじゃ大丈夫そうだ。

 手が思うように動かないみたいだし、何か代わりにやって欲しい事が有るんだろうね。


「恐らくだが右腕の骨が折れているらしくてな。左肩も貫かれた時に麻痺毒が入ったのか上手く動かせない。やれやれ、毒の耐性を付ける訓練は受けていたのだが、未知の相手の毒には効果が薄かったらしい」


「あっ、矢っ張り? いやー、もしかしたら遺言とか口にするんじゃって少し心配だったんだよ」


「勝手に殺さないでくれ。僕は未だ死ぬ気はないさ。女らしい服を着て街で友達と甘い物を食べ歩きだってしていないんだからな」


「……驚いた。アンリが女の子っぽい事を言ってる」


「いや、僕が女の子だって君は知っているだろう。何なら確かめるか? ほら、今直ぐ脱がして確かめれば良いだろう


 ……はい? えっと、アンリが今何って言った? 服を脱がして?


「……冗談だ」


「だよね。ごめんごめん。冗談が行き過ぎたよ。それでお願いって?」


 思ったより無事みたいで安心したから調子に乗り過ぎたね。僕の冗談に少し怒った様子のアンリだけれど、まさかの提案にビックリしたよ。ホッと胸をなで下ろし本題に入る。




「……その、だな。非常に言いにくい事なんだが……」


 アンリは急に僕から顔を背け、言葉を濁らせる。この状況で何を恥ずかしがっているんだろう?



「僕の服を脱がして欲しい。上だけで良いんだが……」


「……はい?」


 いや、その冗談は既に終わって……この様子じゃ冗談じゃないよね。でも、何で?

 まさか媚薬の効果が残ってるとか? それで僕を誘惑……は流石にあり得ないか。だってアンリだし。


 さっきアリアさんに誘惑されて僕の思考がそっち方向に向かっているけれど、目の前にいるのは友人だ。男の振りをしていても中身は普通に女の子らしい事に憧れるけれど、だからって友人の僕を誘惑するタイプじゃないし、だったら服を脱がせなんて何で……ああ、成る程ね。



「包帯と薬は鞄の中かな?」


「ああ、添え木は折り畳み式のを入れてある。開いた後でストッパーを掛けてくれれば機能するから頼んだ」


 まあ、普通に考えて腕が使えないけれど、服の下に結構怪我が有るから脱がして治療してくれって事だ。今の僕は治癒魔法は使えないし、アンリも普通の水属性じゃなく、特殊な氷の使い手だからね。


 ……僕の”時”やリアスやアリアさんの光や闇以外は基本的に水土風火の四属性の内のどれか一つだけれど、チェルシーみたいに二つ使える”複合属性”やアンリみたいに氷を使う”変異属性”の使い手も偶に存在するんだよな。


 複合の場合は一つ一つの到達点が単一の属性に比べて低かったりして、特殊の場合も普通の魔法が使えても少し苦手だったり別の属性みたいに一部の魔法が使えなかったり。


 ……この前出会った帝国の彼女もアンリと同じだっけ。


 だからと言って複合や変異が通常のに劣ってるって事は無いのはチェルシーが授業初日の実技で見せた魔法の評価が物語っている。まっ、水属性が得意とする治癒とか土属性による何かの製造が目的じゃないなら気にしなくて良い範囲だ。寧ろ単純な威力なら上だし、結局は術者の能力次第だからね。


 


「それじゃあ脱がすけれど良いね?」


「君が相手なら構わないさ。勿論見られたい相手って意味ではなく、怪我の手当の為に肌を晒す事に抵抗がないという意味でな」


「そりゃそうだ。君がそんな理由で服を脱がせたがるだなんて正気を疑うね」


 随分と軽口が続く僕だけれど実際はそれなりに緊張していた。でもさ、友達の手当をする為に服を脱がすのに変に意識をするだなんて知られたく無いじゃないか。

 必死に緊張を表面に出すまいとしながら胸元のボタンに指を掛け、ちょっと気が付いた。


 あれ? 別に直接脱がす必要なんて無いんじゃ? だって僕の魔法は時間を操るんだから、ちょっと高速でアンリの服の時間を進めればこの通り。

 アンリの服は見る見る内にボロ布になって崩れて行き、その下の鎖帷子と隙間から見えるサラシだけの上半身が今のアンリの格好だ。女の子の体をジロジロ見るのは悪いから一瞬しか見ていないけれど、多分修行の時に負ったんだろう傷跡が結構見える。……痛かっただろうな。


「酷い体だろう? これでは女の格好を許されても露出の多い物は着れん。やれやれ、どっちにしろ好きな服装は出来ないんだな、僕は」


「君が頑張って来た結果だろうし、僕はどんな傷跡があっても酷い体だなんて言わないよ? 前に言ったと思うけれど、僕は君を可愛い女の子って認識しているよ。じゃあ、手当をしよう。先ずは腕の固定からだね」


「……君はその内刺されるんじゃないのか? 僕としてはそれが心配だ」


「フリートも前に言ってたよ、その忠告。そりゃ暗殺者とか送られる立場だけれど、大公家の次期当主とか武門の名門の君達も同じじゃないか」


 呆れ顔で肩を竦めるアンリに僕も呆れ顔を向けながら持ち物を漁る。ハイカロリーな小型携帯食とか携帯研ぎ石とか……あっ、鎮痛剤とか消毒薬に包帯も入ってる。折り畳み式の添え木ってこれか。


 僕も手当ての心得はあるし手早く応急処置を進め、最後に鎮痛剤を飲ませた所でずっと見守っていたタマが心配そうにしながらアンリに擦り寄って来た。


「ピー……」


「大丈夫だよ、タマ。そんなに傷は深くないし、手当てして暫く安静にしておけば後遺症だって残らないさ」


「……さて、僕は少し眠らせて貰う。少し休んだら体の痺れはマシになっては来たが辛い。まあ、経験から言って半日もしない内に治るさ。恐らくは魔力による毒だったらしい……」


 アンリはタマの顎を数度撫でた所で眼を閉じて静かに寝息を立て始める。



「やれやれ、これで一安心。……それにしても奇妙なモンスターだな。あれ? 此奴は……」


 比較的原型が残っているモンスターの頭部に視線を向けた時、僕の頭の中で存在する筈がない記憶が蘇る



「此奴は……”テュラの眼”?」


 初めて見るモンスターの名前が僕の口から出た時、視線を外していたアンリの手の中に氷の短剣が出現していた……。

 

 

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