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野次馬の行軍
少年フィリップは走る。
なるべく大通りを通りながら。
大通りを通るのは、何かあった際の助勢を期待してのものだ。
しかし、今起きていることを喧伝はしない。
フィリップは、無言で走る。
何故ならば、今起きていること、蕀と混沌の戦いを騎士である兄に通報し、手柄としてもらう為だ。
だから誰にも漏らさず、とにかく騎士団の詰所に向かっているのだ。
「……何だ?人が多いな」
大通りとはいえ、往来に出ている人の数が多い。
そして口々に、噂している。
「蕀のセオドールが、誰かを逃がしたんだろ?」
「墓地らしいぜ?見に行ってみるか?」
皆、状況を知っている。
……何故だ?
疑問を持ちながら、尚も走るフィリップ。
騎士団の詰所が見えてきた。
フル装備の騎士たちが歩いてくる。
フィリップは兄を探して見回す。
───いた。
「兄貴!」
「フィリップ!どうした……っ!?」
兄はフィリップに駆け寄り、返答しかけたが、ビクンと肩を一跳ねさせ、無表情になって、騎士の隊列に戻った。
そして、何ごともなかったかの様に歩いて行く。
向かうは墓地の方向だ。
騎士団の行軍を、野次馬の人混みが囲む。
追随して共に墓地に向かうのだ。
フィリップは、兄に直接伝えることが出来ないまま、野次馬の行軍に紛れて共に歩き出す。




