勝つという強い意思の発露
セオドールは内心ほくそ笑んだ。
焦りと自尊心がないまぜになった虚勢の感情を、ジャービルからかんじたからだ。
亜実から預かった以上、アダムは守ると決めている。自分たちの生命が今あるのは、亜実のお陰だ。だから、託されたアダムは、生命にかえても守る。ネネクレアも、キーネから預かったと解釈している。実際は誘拐してキーネのところに連れて行った末の結果ではあるのだが、何だかんだで、キーネがセオドールたちを信頼してくれているのはわかっているし、意気にかんじている。だからネネクレアも守る。その為には、ゲドとジャービルを早く倒し、シャサとエタースも追って倒す。
「しょーがねーから、やってやる」
振り下ろされたジャービルの手から、炎斬が放たれたが、セオドールは難なく避けた。神経が研ぎ澄まされてきた。
他者からの信頼が力になっていると、セオドールは自覚する。
亜実の、そしてキーネの信頼はダーハムにも届いているだろう、と考えるセオドールは、一瞬ダーハムを見る。
ダーハムも一瞬セオドールを見た。
目が合う二人が同時に小さく頷く。
セオドールが、突如、ゲドに向かって突進した。
「ちっ!」
ゲドは反射的に大きく飛び退いた。
やはり、と思ったセオドールはまた内心ほくそ笑む。
最初の緊縛絶叫をかわされた時、セオドールはゲドの性格もある程度把握出来た、と思ったが、それが確信になったのだ。
セオドールはそのままダーハムに駆け寄り、アダムをひったくる様に受け取った。
そしてジャービルに向かって言い放つ。
「炎斬なんか、ハンデやったって当たらねーんだよ」
その言葉に、ダーハムが続く。
「いいなー、楽そーな相手でー」
虚勢を張らずにはいられない今のジャービルならば、眠るアダムを抱えながらでも対応出来る。
そうセオドールは判断した。
そしてダーハムも。
それは。
「ゲドだっけー?俺がお前をさっさと倒すよー」
この場での競り合いにおいて、自分たちが勝つという強い意思の発露、その一端である。




