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墓場に立つ男
闇夜に、血生臭い霧がかかる。
墓地には、筋骨逞しい男が数名、たむろしていた。
冒険者崩れのチンピラたちである。
地面にあぐらをかき、酒盛りをしているのだ。
「この墓地は、いつでもこうだな」
呆れた様な、しかし少し笑い混じりの声。
チンピラの神経を最も逆撫でする、挑発的な喋り方だ。
「誰だコラァ!?」
チンピラのうちの一人が、声の方を向き、叫んだ。
すると闇の中から、肩に女を抱えた男が現れた。
片側だけ長髪で、緩くパーマがかった髪をかきあげると、男の長い手足が、一層長く見えた。
月明かりが、赤く派手な色彩の服と金色の刺繍を煌めかせ、同時に、男の白い瞳孔を照らす。
男は、ドレス姿の女を放り捨て、顎を上げると目を細め、黒塗りの歯を剥き出しにして、チンピラたちに向けて、嗤った。
「ここは今から俺が使う。さっさと消えろ、ゴミども」
「ひぃっ、魔族ッッ!?」
チンピラたちは、その瞳孔の異容に圧倒され、脱兎の如く駆け出した。
「ゴミが」
男が目を見開くと、白い瞳の奥が、引き絞られる様に収縮した。
チンピラたちは次々に倒れ、その場に立っている者は、この異様な風貌の男唯一人だけとなった。
この男はシャサ。悪名高い冒険者パーティー・混沌のメンバー、シャサである。
放り投げられた女は、かつて冒険者として名を馳せた、水刃のジアナである。




