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存在の刷新

アリスだ。

腕を交差させ、ガインの大剣を右手で、ロイドの小太刀を左手で受け止めた。片手での白羽取りを成功させたのだ。

アリスの全身から、脂汗が吹き出た。

考えなしの仲裁行動でもし自分が斬られていたらと思うと、どうしようもなく滝の様に汗が吹き出たのだ。


(アホか俺は!やらせときゃいいわ!死んでも生き返らせりゃいいんだしよぉ)


しかし、見知った二人の間に開かれそうになっていた戦端を、放ってはおけなかった。

ガインは友であるし、ロイドは、アリスが別れたあずみと親しげな人間だ。

どちらも助けたい、と思った。

しかし一瞬、ほの暗い感情がアリスの胸のうちによぎる。

ロイドは、自分よりも、あずみを深く知っているかもしれない。

「よく成功したわね」

後方からゆっくり歩いて来る、細身の女。

瑠璃だ。

一見すると人間そのもので、足音も、人間と変わらない様に聞こえる。

その言葉と接近音は、すぐさまアリスの意識を引き戻した。

今、自分の最愛の女は、瑠璃だ。あずみではない。

そう自分に思い起こさせたアリスは、背後すぐそこにまで歩いてきた瑠璃の気配をかんじると、キスで重ねた唇、絡めた舌の感触を鮮明に思い出した。

その記憶によって、心中のあずみの存在はかき消され、瑠璃の存在にとってかわられた。愛と肉欲を混同しているアリスは、瑠璃の唇や舌の感触が擬態によって作り出されたものだと頭ではわかってはいても、肉体的接触によって、心と体が惹かれ、また、瑠璃が自分に愛欲の感情を持っていること、お互いを想っているというよろこびと安心感で、胸が軽くなり、解き放たれた様な爽快感に満たされていた。

心という容れ物に、瑠璃という水が注がれ溢れた感覚を一時(ひととき)堪能し、去来したあずみの影を洗い流したアリスは、瑠璃への気持ちを噛みしめる。

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