引き合う痕
「む、聖痕つきがこの森に来ている。そう遠くない」
ガインは、不意に首筋を冷やされた様な、寒気と違和感がないまぜになった感覚をおぼえた。
聖痕、それは、穴倉につけた十字傷である。
ガインは、様々な相手に聖痕をつけている。
そのうちのどれかが近くにいるのだろう。
「奴だといいのだが」
いつも人間の様な顔を見せるガインが、闘気を漲らせた時だけ見せる、魔物然とした鋭い眼光。
ロイドはその眼光に見覚えがある。
幼い日に見たガインの激しさを、その眼に見た。
穴倉も、鋭い眼光を称えた目で、どこともない斜め上に視線を置いた。
枝葉の向こうに、漆黒の空と瞬く星が見えた気がした。
「あいつが近くにいる。今、傷を触られた感触があった」
ガインにつけられた十字傷が疼く。
どろり、と赤い血が一筋流れた。
顔を伝って口にまで降りて来た血に、穴倉は舌を這わせる。
「自分の血でも、こんなにも美味い。奴の血なら、どれだけ……!」
声が震える。
不意に心を折られた相手。
それに向かう自分。
恐怖と、はやる気持ちとが交互に押し寄せて来る。
短い足を動かしながら、足早に森の奥へと向かうと、傷の疼きが大きくなってゆく。
『そう、そっちダ』
「わかってる」
竜の導きもあり、気持ちが急く穴倉の目は爛々と輝いて、来る戦闘に思い馳せ、次第に息が荒くなる。
気持ちが抑えきれない穴倉だが、しかし、ガインとの初遭遇時の、ガインから受けた突然の斬撃を思い出した。
「今度はこっちからやってやる」
慎重な足取りとなり、深呼吸をする。
意識を集中し、熱線砲のチャージを始める穴倉。
そして曲がり角を曲がると、そこには広けた空間があり、あの銀の鎧のゴブリンことガインと、金髪の忍がいた。




