急場凌ぎの居合い剣
伸び続けていた黒い瘴気が、タツキとゴウのところまで届いた。
ゴウはさらに距離を取るが、タツキは静止したままで、黒い気はタツキを包みそうな距離に来ている。
瘴気に迫られながらも、タツキは摺り足で距離を詰め、じりじりと泥島に近付く。
そして自分と泥島との戦力分析に頭を回転させる。
かつての自分でも、果たして勝てるだろうか。
それ程までに、この異形のゴーレムは強い。
そう思うタツキの目が血走る。
強い者との対峙が、タツキの生き甲斐だ。
単純な強さならば、超人勇者ユウの足下にも及ばないだろう。
シャサよりも下だとも思うが、そこは定かではない。
だが、怨念じみた殺意を持ち、瘴気を伸ばしてくるゴーレムは、誰よりも油断がない様に思える。
こんな時に自分は、居合いに不向きの剣などを左腰に携えている。
それが悔しい。
居合いという技は、細い曲刀、日本刀だからこその技だ。
太く真っ直ぐの直剣では、日本刀の様な流れる様な抜刀は出来ない。
タツキの剣の剣身の長さの割に、タツキの体はそう大きくなく、直剣を抜く手の長さがまず足りない。
剣身が鞘に引っかかってしまうのだ。
タツキは、折れた剣にこだわりがあるわけではない。
だが、折れたままの剣を使い、その短さを利用して抜剣がしやすくなっていることには、タツキなりには気付いていた。
折れた剣の柄に、右手をゆるくかけながら、左手で剣の鞘をコントロールし、柄をやや外側に向ける。
タツキは出来るだけ予備動作を作らぬ様、そして出来るだけ素早く走れる様に、体勢を整えた。
そして、抜剣の動きに合わせて剣の柄を内に向けた。
これを素早くこなし、曲刀の抜刀を擬似的に作る。
急場凌ぎの居合いを可能としている、タツキの戦闘センスに、泥島は少し憤慨している。




