渦の中から這い出た闇
思考を切り替えた泥島は、どうしたものか、と思案する。
すると、影から得意げな声が聞こえた。
「我らを影から出さぬ限り、お前に勝機はない」
そうか、と、泥島は目を丸くした。
「ヒント、もらったよ」
泥島は地に降りて行く。
警戒した影ぼうしたちが、攻撃を止めた。
静寂が、夜の闇に訪れる。
泥島が大きく息を吐くと、その体から、黒く禍々しい瘴気が、じわりじわりと漏れ出した。
黒い気は、その濃さを増しながら、禍々しくうねる。
それは先程のうねる影ぼうしの様でもある。
力の行使を待ち切れない、自分の暴虐な意思が、禍々しいうねりとなっている様にかんじ、先程の影ぼうしも、きっと同じ様なはやる心持ちだったのだろう、と泥島は思った。
「食らえよ、闇悪夢」
泥島の声と同時に、黒い気が収束され、一旦泥島の体に吸い込まれた。
そして一瞬の沈黙の後、黒い瘴気の束が、天に向かって一斉に放出された。
それは太い闇の樹木の幹となり、その根本から、全方位に向かって、うねる棘が伸びる。
棘たちは何かに導かれる様に、地の影に突き刺さる。
「やっぱりな。魂を刺す技なんだ、これは」
泥島の周りから、一斉に断末魔の叫び声があがる。
影ぼうしたちの、苦痛の声だ。
「前使った時、全員胸を刺されてたんだよな。だから今回も……そうなんだろ?」
土弾で絶命した二匹の影ぼうしの遺体の胸にも、棘は刺さっている。
刺さった棘が脈動し、影ぼうしたちから、力を吸い上げてゆく。
棘は、巻き尺が戻る様に激しくうねると、ぴん、と張り詰め、次第に幹の上方へとのぼってゆく。
すると棘は、引き絞られた釣竿の様にしなる。
胸を刺された影ぼうしたちは、手で影にしがみつくが、影の中から引きずりあげられて、その手が離れてしまう。
すると勢いよく釣り上げられて、闇の樹の枝の先端に、だらりとうなだれての串刺しとなった。
地には黒い気の渦が発生し、影を飲み込みながらゆっくりと広がって、その闇の中から、無数の闇の手が伸びる。
黒い渦の中からひとかけら、小さな光の粒が飛び立ったが、それは、泥島にも、ミモザにも、影ぼうしたちにも、気付かれることはなかった。




