ミモザの闇
キーネは、何も悪いことをしているわけではない、と、ミモザは思った。
ネネクレアは、六芒星の子だ。
その魔力を魔人が得れば、魔王へと進化すると言われてはいるが、定かではないし、それで子供を殺すなんて、バカげている。
だが、殺す様に勅命が下ったのだ。
命令に背けば、自分は殺されるだろう。
事実、何匹もの影ぼうしが、すぐそこまで来ていたし、今も張りついている可能性は高い。
だから、ミモザが今したいのは、ネネクレア殺害の命令を遂行すると見せかけながら、何とかして影ぼうしたちを秘密裏に倒し、ネネクレア殺害指令を放棄することだ。
その為には、変則的な戦い方のセオドールとダーハム、そして老練なキーネは味方にしたい。
だが、監視されている今、それをキーネに伝えられないのだ。
「ロイド王子がいれば……!」
デイヴも監視対象ではあったが、担当はロイドだ。
その為ミモザは、デイヴの企みなどは知らない。
ロイドがどこまで調査をしているかも知らない。
だが、戦闘となると、あれほど頼りになる仲間もいない。
混沌のシャサ、蕀の二人。
そして、六芒星の子ネネクレア。
ミモザは、ある覚悟を決めていた。
そして、キーネも。
混沌は、人間でありながら魔の信奉者だけで構成されたパーティーという噂だ。
ネネクレアが六芒星の子だと知れば、魔王のうちの誰かを出現させようとする可能性は高い。
で、あるからして、ネネクレアをシャサに渡すことは出来ない。
その為には、ジアナを見殺しにするのもやむなし。
それがキーネの考えだ。
しかし、ミモザは逆だ。
ネネクレアを殺したくはない。
人間を手にかけるのは、自分と、エルフの立場を悪くする。
だから、誰かに殺されるのが理想なのだ。自分が手を下さなければ、割り切れる。しかしジアナを見殺しにすることは出来ない。
ミモザにとってジアナは、異種間の壁を取り払って接してくれた、かけがえのない友だ。
人間と相容れず、森で長らく独りで暮らしていたミモザにとって、ジアナの態度は嬉しく、胸を打つものだった。
そして今日、ジアナは、異種間デートをすると言っていた。
ミモザは、それがまた嬉しかった。
相手のゴーレム、泥島は、あからさまに魔物だ。
だがジアナは、まるで相手が人間であるかの様に、めかしこんでいた。
エルフであるミモザの様に、人に近い容姿ならばまだわかる。
だが、泥島は、どんなに擬態しても土くれでしかない。
そんなゴーレム、泥島を、ジアナが人の様に扱うのであれば、より人に近い自分は、ジアナにとってもはや人同然なのではないだろうか。
そう思うミモザは、泥島と共にジアナ救出に向かいたいと思っていた。
ジアナが自分にとって大切な様に、ジアナにとって自分も大切な存在だと明確にかんじたい。
もっと、親密な関係になりたかった。
「邪魔をしないで。風刃」
キーネの顔、そして全身が切り刻まれる。
ミモザの風刃は、そう強いものではなく、一つ一つの傷は浅い。
しかし、それが全身ともなると、キーネの消耗は激しい。
ミモザは、キーネの胸ぐらを掴んだ手を振るった。




