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ヒマな穴倉
暗闇の中。
穴倉はぼんやりと立っていた。
死後ずっと、穴倉はぼんやりとしたままだ。
いつもいつも、延々と。
「ヒマだな。何もやることがない」
始まりの場所に延々立って、地面から生える草を眺める以外、穴倉は何もすることがない。
かといって、腹も減らず、喉も渇かずで、欲求が何もないので、何かをする意欲もない。
「見た目は、天国なんだけど」
見渡す限りの草原には花が咲き乱れ、穏やかな日差しと柔らかい風が、雀の涙ほどもない穴倉の行動意欲を、さらに削いでゆく。
「ふう」
穴倉は後ろに倒れ込み、草原に仰向けに寝転がる。
何かの花の匂いがする。
気配はないのに、鳥の囀りが聞こえる。
「気味が悪い世界だな」
ぱっくりと、穴倉の頭部が割れる。
中からうねる触手が無数に這い出した。
触手の先端部分は平べったく伸びながら尖り、両刃のブレードになる。
穴倉はそれを薙いで、草花を刈った。




