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エオエルの中の何か
神官ミラーの目の光が消える。
ミラーがこうなるのをエオエルは待っていた。
こうなった時のミラーは、頭脳明晰な、頼れる存在になるからだ。
普段、何かにつけて悩みがちなエオエルの心が、急速に落ち着いてゆく。
『ビクトーたちを呼び戻しましょう』
普段のミラーにはない抑揚のない声が、エオエルの頭の中に響く。
念話だ。
『いや、ビクトーは切り捨てるよ。吸血鬼たちと離れたのを見たからね』
エオエルが、念話を返す。
いや、厳密にはエオエルではない何かが念話を返す、だ。
エオエルは、自分から発せられる、自分ではない声に、何も思うところがない。
それは、自分の中にいる別の存在を受け入れているのではなく、自分ではない別の存在を、自分ではないと認識出来ないでいるのだ。




