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義理を欠いてはならんというに
その思いは、エオエルの方にもあった。
メリディアから遠く離れたアーマンダイン。
エオエルとミラーは、ここにいた。
場所は、神殿。
大きな水差しには、氷入りの水がなみなみと入っていて、傍らには、細長い円筒状のグラス。
だが、グラスは使われず空のまま。
水差しには水滴がびっしりとついていて、中身がかなり冷えていることがわかる。
だが、水は飲まれず、減っていない。
「い、いくらか涼しくなってきましたね」
日中は暑かったが、夜になるとそうでもないのだ。
アーマンダインは、比較的過ごしやすい土地といえるだろう。
ミラーが座る向かいには、苛立ち顔のエオエルが座っている。
「……」
背もたれに体を預けているエオエルに、様子見で声をかけたミラーではあるが、腕組みをしているエオエルは返事をしない。
無視をしているのではない。
聞こえていないのだ。
それは、ミラーの声が小さいというのも一因ではあるが、もう一つ理由があった。
「義理を欠いてはならんというに」
エオエルは今、考え事をしているのだ。
どんな相手でも敬意を持って接し、義理を大事にする。
これが、エオエルの信念だ。
駆け出しの頃から大事にしてきた信念だ。
だからこそ、義理を欠くブレブロのタシリモが気に入らない。




