メの生い立ち
ジャン・ジャックの意識が向けられる中、メは静止していた。
時間だけが過ぎてゆく。
長く生きたメは、見えざるものへの警戒しながらの静止など、数え切れない程経験している。
だが、その見えざるものが、明らかに自分より強い存在ばかりだという状況は初めてだった。
全身から吹き出す脂汗にまみれながら、神経をすり減らしているメは、ゆっくりと生唾を飲み込んだ。
ゴブリン、ゴグ族に生まれたメは、一族の中で賢者とされてきた。
幼少の頃から読み書きや低位の魔法などを修め、神童ともてはやされて生きて来た。
故に、森の暮らしは貧しくはあったが、不満を抱くことはなかった。
ゴグ族の神童メの生誕は、村に革新的な変化をもたらし、誰もが、メを尊重したからだ。
メは、生来水の魔法を行使できた。
よって、水不足は、メの魔法によってなくなった。
これは、ゴグ族の生活を一変させた。
水汲み、水源の確保の必要がなくなったのだ。
ガインの様な生産魔法こそなかったが、この変化は、ゴグ族の暮らしを楽にした。
人里に降りたゴブリンが、なけなしの金をはたいて勉学の為の書物を買って来ては、メへの土産とした。
メはそれを享受し、知識を蓄えて、さらなる賢者として、一層の信頼を得ていった。
そういうかたちが、ゴグ族には出来上がっていた。
そしてゴブリン族にメと比肩する者なしと言われ、歳を重ね、長老となった頃、ゲブ族から英雄が出た。
それがゲブ・ガインだった。




