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凡庸な魔物
道向こうにいたのは魔物だった。
魔物は、突然、森がダンジョン化したことに驚いた。
だが、だからといって、そう大きな問題だとは思っていない。
むしろこれは、降って湧いた好機だ、とすら思っている。
何が好機かというと、ほしいものを手に入れられるかもしれない好機だ。
それは、自分が強くなる為に必要だ。
魔物は、凡庸な種族に生まれた。
そして凡庸なりに強くはなった。
だが、様々な他者の存在が、自分を否定する材料となった。
自分を特別な存在だなどと、今は口が裂けても言えない。
自信を打ち砕かれたのだ。
自分を肯定もした。
だが、そこに意味は生まれなかった。
それほどまでに、自信を打ち砕かれた。
魔物は、強くならねばならない、と思っていた。
凡庸な種族に生まれたからには、強さの限界は近い。
だが、それでも、強くなりたい。
その強さの限界の頂きに、自分を到達させたかった。
それは、自分はここまでやったんだ、という自分への言い訳じみた納得を求めてのことだったろう。
その為に、手に入れたいものがあった。
いや、手に入れていた。
だが、手放す結果となった。
今となっては、どこにあるのか。
森に、夕陽がさしてきた。




