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道の違い
フォンテスは満足げに頷く。
シャノンはイゴールの背中を見、続いて、並び歩くフォンテスとジャン・ジャックの顔を順に見る。
そして溜め息混じりに微笑んだ。
自分の王フォンテスは、粗暴だったり、尊大だったりしても、それは言葉遣いだけで、下の者に当たり散らしたりということはない。
それは性格もあるだろうが、やはりどこか吸血鬼というものに馴染めていないのではないか、気を遣っているのではないか、と、シャノンは思う。
「フォンテス様は、人間の頃の方がよかったのでしょうか?」
つい口をついて出てしまった言葉。
イゴールが振り返る。
「イゴール、構わん」
フォンテスが、鷹揚に許す。
そしてシャノンに答え、ジャン・ジャックに語りかける。
「人の世に未練はない。俺にとって、お前らが仲間だ。ジャン・ジャック、俺はお前の様に、自分の力で這い上がったわけじゃないんだ。俺はヴァンパイアであることを見出されただけだ。そして今の俺は魔人だ」
「そうか」
ジャン・ジャックの目に、寂寥の色はない。
ただフォンテスの言葉を、真っ直ぐ受け止めているだけだ。




