ROUND 1、2DOWN
SARUの右のロングフックが、アリスの側頭部を捉えていたのだ。
「あれ?」
意識を刈り取られ、一瞬前後不覚になっていたアリスは、自分の腰が落ち、そのまま座り込んだ状態になっていることを知覚出来なかった。
「やべやべやべ、目の前ぐらんぐらんしとるわ。回復」
歪み、溶けた視界が徐々に元に戻り、目の焦点が合うと、SARUの姿が見える。
アリスは、まだ体の自由がきかず、四肢に力を入れられず、天を仰いだ。
「まじかよぉ。俺座ってんじゃねぇかよ。これでツーダウンとかひくわー。回復。よっしゃ、足回復」
アリスのダメージが、二度目の回復でようやく完全回復する。
瞬時に身体機能が正常な状態に戻るが、アリスは座ったまま動かない。
SARUは構えを解き、アリスを見下ろしている。
感慨深げなその顔は、勝利を噛み締めている様にアリスには見えた。
「てめぇ、単純にステータスの差と能力で一発当てやがったな。ボクシングの上手さ関係ねぇじゃねぇか」
「そりゃ、そういう戦いになるのは当たり前だろ。ステータス向上の魔法だって、オマエにバレない様に重ねがけしたしな」
「ないわー。…真っ向勝負から逃げるとか、それでも男か、てめぇ」
「勝てばいいのさ」
「ふん、そうかよ。その言葉、後悔させてやるわ」
SARUを非難しながらも、アリスの意識はそこにはなく、声のトーンは落ち着いている。
『女神様よぉ、頼みがあんだけど』
アリスは、イオに念話を飛ばす。
SARUがアプリコットを見た。




