ビクトーの賭け
瞬間、暴風が吹く。
吹き飛ばされるあずみとカプリス。
「焔拳が入ったのをどう見るべきなんだ?SARUはどういうつもりなのか」
カプリスの言葉をビクトーは聞き逃さず、笑んだ。
相手は迷っている。
さらに揺さぶるチャンスだ。
自分を軽視した報いをカプリス、ルレットに受けさせてやる、との思いから、ビクトーは、SARUと目を合わせる。
SARUは澄んだ目をしていて、ビクトーへの敵意や卑屈な色は見られない。
だが、それが逆に、ビクトーを苛立たせたし、それ故にビクトーには、SARUを術中に嵌める意欲が湧いた。
『金銭で立ち位置を変えるのは、戦いの常ですよ。ただ、裏切られた場合、私はあなたと仲間ではいられませんがね』
この揺さぶりは効くと、ビクトーは確信する。
信念なく力を振るい、旗色が悪くなると裏切る、下賤な輩。
それがSARUに対するビクトーの評価だ。
断じて仲間だなどと思ったことはない。
『ルレット側につくとしても、私以外の者はあなたを咎めませんよ。何をしてもあなたは英雄ですから。しかし私は違う。私にとってあなたは、幾度もぶつかった敵であり、最後の仲間。あなたが私まで裏切るのならば、私はあなたと共にはいられない。あなたはまた、肩書きに寄って来る有象無象の者を集めて、英雄と崇められて悦に入る数十年を過ごすのですか?』
SARUの場合、信念なく力を振るうのも、金に転ぶのも、自信のなさ、心の弱さが原因だ。
そして、ビクトーの言葉に耳を傾けるのも、弱さだ。
それをビクトーは知っている。




