胸中にある戦慄、そして
「殺ったァ!」
SARUが歓喜の声をあげた。
その態度は安堵と解放感に満ちていた。
短時間で強くなるあずみに、SARUは内心戦慄していたのだ。
不老不死のSARUが、長い時をかけて得た強さに、いとも簡単に追いつきそうな、ロイド王子を師と仰ぐ、メイド服の魔物。
その戦闘の才はロイドより遥かに上だとSARUは思った。
ロイドは、ロウ・リ・ネイティス王家出身者の中でも、随一の武人と噂され、SARUの見立てでは、魔王を倒した頃のSARUよりも強い。
しかし、今のSARUから見れば凡庸だ。
手甲に魔弾を仕込むなど、攻撃魔法が使えないと言っている様なもので、どこか気持ちが冷めるSARUである。
本気を出せば殺せる相手だろう。
しかしあずみはどうか。
あずみの種族は妖精シルキー。
後方支援と回復役に徹する他ない種族のはずだ。
だが、あずみは攻めてくる。
こんなアグレッシブなシルキーは見たことがない。
未知数ではあるが、SARUが見る限り、そう簡単には殺せないだろう。
そして同時に、ここで殺さなければ、必ず今以上に強くなって、SARUの目の前に現れるであろう確信がある。
野放しにしていい魔物だとは思えなかった。
だからこそ、魔拳で一刺しなのだ。
だからこそ、あずみは終わったのだ。
「なんて考えてそうでござるな」
「!?」
胸を貫かれたはずのあずみは、目を細めてせせら笑った。




