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触られたくないでござる
もう一人のあずみが、その一撃を阻止せんとSARUの腕を斬りつける。
だが、うねる腕は柔らかそうに見えて、その実、見た目と違って斬撃を通さない硬さを持つ。
あずみの斬撃を弾きながら、その拳撃の勢いは些かも衰えない。
「ぬんっ!」
あずみはSARUの拳が当たる瞬間に首を回して魔拳を受け流した。
頬が切り裂かれ、鮮血が滲む。
ダメージはないながら、頬に触られたことに気持ちが泡立つあずみ。
この世界に来るまで、親以外では、有栖川にしか体に触られたことがなかった。
逆もまた然りで、触ったこともなかった。
故に、戦闘で他者と接触する、されるということに、あずみは強い不快感を覚えた。
「忍の力を見せる時でござるな。触られたくないでござる。疾風走破壱式」
あずみは、トップスピードを引き上げる魔法を唱えた。
ロイドに弟子入りし習得したばかりの魔法で、熟練度はないに等しい。
しかし、今のあずみにとっては、切り札足り得る魔法であった。




