夢 服部あずみ
絶叫したSARUは、その場にどっかと腰を下ろした。
胡座をかき、腕を広げ、目を瞑って、俯き加減で静止する。
「あ奴、気持ちのいいクズでござるな。仏像みたいになって知らんぷりしてるでござる。SARUの仏像ウッキッキ。プークスクス」
「あいつ、そういう奴なのよ。久し振りね、あずみちゃん。私はルレット・ジョルカル・ランダルム」
カプリスは、とぼけてルレットを名乗る。
ちょっとしたおふざけのつもりであったのだが、しかし、あずみは硬直する。
カプリスの登場に驚いて硬直したのだとカプリスは思い、笑む。
銀髪に碧眼の女神カプリスが、何故こんなところにいるのか、そして何をなそうというのか。
そう思い至っての硬直だと、カプリスは思った。
だが違う。
相手は、あずみなのだ。
あずみは思う。
銀髪に碧眼。
誰なのか思い出せないが、何か見たことある気がする。
しかし、思い出せない。
ならば方法は一つ。
「あーはいはい、あの時の!拙者のファンの方でござるな?握手してあげようでござる。それじゃサインも。この剣にしてあげるでござる」
「あ、ありがとう」
あずみの適当な記憶に、カプリスは複雑な気持ちを抱きながら、ズー・アル・フィカールにデカデカと書き込まれてゆく〝夢 服部あずみ〟の毛筆文字をぼんやりと眺める。
「夢なのね。忍じゃないのね、そこは」
「拙者も、働きたくないでござる。夢でござる。ッッ!?」
SARUの後方に、馬車が見えた。
そして馬車から、見覚えのある男たちと共に幼い少女が降りて来たのを、あずみは見た。




